【我輩は猫魔導師である ~キジトラ・ルークの快適チート猫生活~】  猫神信仰研究会/ ハム サーガフォレスト

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チート能力を与えられて猫の姿で異世界に転生した根来海人。彼はお腹を空かせていたところを貴族の令嬢クラリスに拾われ、ルークという名でペットとして飼われることになる。猫らしく怠惰に暮らしたいルークだが、過去に食べたことがあるものを再現できる『コピーキャット』の能力で野菜やスイーツを作り出したり、神様と交信したりして、周囲を驚かせながら、スローライフを目指していく!

猫神信仰研究会ってすげえ名前の作者さんなのだが、これ渡瀬草一郎さんの別ペンネームなんですよ。
これ気づかん人は気づかんて。
渡瀬草一郎先生と言えば、電撃文庫から幾つもの大長編シリーズを出している古参も古参のベテラン作家さん。出す作品出す作品、片っ端からメインヒロインが幼馴染だった事から往時には大幼馴染作家として名を馳せた人物でもある。
……なにげに本作にも幼馴染カップルは登場するのだけれど、まだ片割れは名前しか出てないんですよね。
ソードアート・オンラインのスピンオフ小説も書いてて、これがまた素晴らしくもう素晴らしい作品だったんですが、それっきり長らく音沙汰なかったのでどうしたのかな、と思ってたらこれですよ、これ書いてらっしゃったんですよw

主人公のルークは猫である。異世界に転生する際に超越者によって人間から猫にされたのだ。
ただしこの世界、上位の高次元で偉いのは人間よりも猫の方。猫は畜生にあらず、むしろ人間の方が次元の低い虫みたいな存在扱いなのである。
人間>動物全般>猫、という構図ですな。なので、彼を猫に転生させた超越者たちもみんな猫!
猫を助けて死んだ青年に対して、人間にしてはなかなか大したやっちゃ。よし、つぎの世界では猫にしてあげよう、てなもんである。当人の意見は聞いてない、何しろ猫だから。
というわけで猫となり、いきなり山の中に放り出されて風の精霊さんなんかに助けてもらいつつ、人里に半死半生お腹ペコペコの状態でたどり着き、そこで運命の出会いに恵まれたのでした。
トマトとクラリスさま。
子爵令嬢クラリスにはルークという名前とペットという身分をいただき、トマト様には餓死寸前の身の上を助けてもらった恩もあり、トマト様の下僕としてこの世界に広くトマト様を普及させるべく全身全霊を捧げる使命を胸に刻んだ猫でした。
ってかルークさん猫なんだけどさあ……あなた、猫というよりその性質、犬っぽくないですか?
猫らしい自由気ままさとか気分屋な所とか自分が一番偉いと思ってそうな所とか自堕落だったり獲物を前に狩猟本能を押さえられなくなる猫科な本性とか全然ないんですけど。皆無なんですけど。猫がどれほど野生を捨てても、なかなかこうはならんぞ、というような。
むしろクラリス嬢への忠誠心の高さとかやたらと生真面目で義理堅く忠誠心高いところか、家より人に付きそうなところとか、小心者で責任を無視できなくてついつい背負っちゃう所とか、最後のはともかくとしてわりと犬っぽいんですよね、ルーク。
見た目も猫というより、招き猫である。ってか四つ足で歩くより二本足で歩くほうが馴染んでる猫って……。長靴をはいた猫風のスラリとスマートな体型の猫なら格好いい猫なんだが、ルークさんわりとぽっちゃり系ですよねw
まあそれはそれとして可愛いのは事実。中身があれだが、見た目可愛いのは事実。でも、その可愛さって猫のあの可愛さとは別系統じゃね、これ?
しかし、義理堅く恩を忘れない猫さんなルークである。というよりもそんな義務的に義理を果たすって感じじゃなくて、全力で感情移入しちゃうタイプなんですよね。だから、最初に拾ってくれたクラリス嬢とその家族であるライゼー子爵家に対しては色んな意味で全力投入してしまうのでした。
ところがまあ、猫な神様からルークが与えられた能力というのは、明らかになってしまえばそれチートにも程があるだろう、というはちゃめちゃ無茶苦茶なもので。
これもうルークが猫じゃなかったら許されなかったでしょう。猫だからOK。なにせ猫だし。
薪からブッシュドノエルに物質変換はずるいどころじゃないですよ!?
まあルークさん、小心者の小市民気質なのでどれほどチートな能力を与えられても、無分別に遣いまくるような真似はどうしても出来ず、さりとて小市民気質だからこそわりとアカシックレコード的な能力でもわりと大仰に捉えきれずに身近な感じでポンポンと使ってしまうところもあるんですよね。
しかし、そんな便利すぎるルークを、しかし彼と関わった人間たちは欲に駆られて利用しようとしたりしないんですよね。最初に出会った人たち、クラリス嬢をはじめとしてその父であるライゼー子爵や従姉妹のリルフィ嬢など、みんな傑物なんだよなあ。それ以上にこの上なくいい人たちだったのです。
ほんとにほんとにいい人たちなので、そんないい人たちのためならばルークさんついつい頑張っちゃうのである。そりゃあね、善良で気持ちの良い人たちにはそれに相応しい幸福があって然るべきじゃないですか。そういう意味ではルークさん、まさに幸運の招き猫なのである。
今後彼と関わることになる人の多くは、これまた心根の良い人達が多くてねえ。ほんと気持ちの良い人たちなんですよ。ところがまあ、幾ら心根が善良であっても、境遇も良い場合ばかりじゃない。善き人たちだからこそ、自ら不遇をかこつような事になってしまっている人もいるし、自分の幸せを諦めてしまっている人たちもいる。でも、いい人たちなんですよ。だったら、報われてほしいじゃないですか。
なので、ルークさんはまさにそういった人たちの鏡として、幸運を齎してくれる猫、になっていくわけですな。まさに神様仏様猫神様。本人はあくまで一介の野良猫、ひいてはクラリス様のペットのただの猫、と主張するのでありますが。喋って立って二本足で歩きまわっている時点でどこをどう見ても普通の猫と主張するのは無理があるのですが。
それでもそんな謙虚……謙虚?な猫のルークによって、報われるべき人たちが報われていく、それが肝となる素敵で優しい物語が本作でありました。なんかこう気持ちが癒されるんですよねえ。ルークさん、楽しい猫さんですし。
とはいえ、まだ一巻ではルークさんのやらかしは全然マシな方。ライゼー子爵の頭を抱えての嬉しい悲鳴がひっきりなしに轟くようになるまで、もうあと僅かw
いやしかし、ほんとにこのライゼー子爵が傑物なんだよなあ。クラリス嬢とこの人に出会えたことが、ルークに与えられた神様からの最大のプレゼントだったんじゃないだろうか。
……何気に本来は獣たちを率いて人間たちを絶滅させるルートが本命だったそうだけどw