【コードギアス 霧京のアーサー case file:beginning】 あざの 耕平／さくしゃ2 角川スニーカー文庫
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革命暦九八年、皇暦一八八七年、夏。
ロンドンの片隅で、とある二人の青年が出会った。
一人は、数年ぶりに田舎から出てきた、医者を夢見る大学生、コナン・ワトソン。
そして、もう一人は発明家を自称し、自らの好奇心を原動力に動く風変わりな青年、アーサー・ホームズ。
運命の悪戯か、ふとした事をきっかけに共同生活を送ることになった二人だったが、
ある一件を境にロンドンで繰り広げられる、数々の怪事件に巻き込まれ――
アーサーの天才的な観察眼から導き出される推理を、コナンは目の当たりにすることに。
『東京レイヴンズ』あざの耕平、執筆！
「コードギアス 霧京のアーサー」前日譚、登場！
うわぁぁぁ、何年ぶりのあざの耕平成分の摂取だぁ！？
東京レイブンズ１６巻が出たのが２０１８年の１０月だから、４年と５ヶ月ぶりくらいになるのか。
合間に出た中公文庫からの単発ものは結局読んでなかったしなあ。
というわけで、レイブンズ続きずっと待ってますよ？
本作はノベライズ。いやコードギアスってなによ！？ と思ったら、これスマホゲーのシナリオの一つ、なんですね。まだ公開されてないみたいですけれど。てかこのゲームもうサービス終了しますって出てるんですけど！？ どうなってるの？
ともあれ、そのゲームの中で描かれる一つの世界。そのシナリオを担当していたのがあざのさんらしく、本作はそのシナリオのプロローグとなるお話らしいです。
皇歴１８８７年って、コードギアスのこの暦は西暦と一緒らしいので、本作の舞台となる時代って現代から遡ること１００と数十年前ってことになるのか。
まさにシャーロックホームズの時代のロンドンである。
ところがこのコードギアスの歴史は正史と違ってイングランドの王家がフランス革命のあおりでアメリカに渡った挙げ句になんやかんやでブリタニア帝国を立ち上げて、イギリスの方は共和国になっているという歴史世界なんですな。おまけに、なんでか内燃機関が発展せず、蒸気機関も恵まれず、電気科学文明が発展していく世界なのです。電気バッテリーが主流なのですね。コードギアスの主力兵器となるナイトメアも動力源がそれですし。
そんでもって、その電気式バッテリーが発展する起爆剤となったのが、日本で採掘される桜石、サクラダイトと呼ばれる鉱石であり、巡り巡ってコードギアス本編で日本がブリタニア帝国に侵略される要因の一つとなったわけです。
本作の時代はまさにその産業革命が花開く真っ最中。霧の都ロンドンですけれど、モクモクと工場から吐き出される煙がない以上、史実のような煤まみれの都市にはなっていないと思うのですけれど、具体的にはどうなってるんでしょう。
ただ、この物語の主役の一人となるアーサー・ホームズ青年は私立探偵ではなく、電気工学をおさめた発明家、という体で登場するのであります。発明家である以上、開発しているものが可燃性だろうが電池だろうが、爆発するのはテンプレートでありますけどね。
まあその爆発炎上住居崩壊が、なんの因果かハドソン夫人が大家となっているかの有名なベーカー街221Bへとホームズ氏が引っ越す原因となるのでありますが。
……ハドソン夫人じゃねえや。ハドソン三姉妹ニナッテルゾ！？ ハドソンさんが三人おるぞ！？
ただヒロイン候補かというと……次女のマリーが同年代ですしそれにあたりそうなんですけれど、全然ヒロインって性格でもキャラクターでもないしなあ。タブロイド紙のガツガツ突っ込んでくる記者という意味では下宿の大家よりも現場で一緒に行動する可能性も高くなってヒロインぽくはあるんですけれど、何しろ性格ががが。
そういう意味では一番上のお姉ちゃんのターナ・ハドソンが一番女性らしくはあるのだけど、レストレードがご執心だし、ちょっとホントのお姉ちゃんという感じで若者なアーサーとコナンでは役者が足りてなさそう。
というわけで、なんやかんやで偶然同じアパートメントに住まう事になったと思ったら住居がえらいことになり、緊急避難的にベーカー街のハドソンさんの下宿の同じ部屋で共同生活を営むことになってしまったアーサーとコナン。いや、その共同生活を営む前にその部屋の前の住人がからむ事件にクビを突っ込むことになるわけですが、この若者二人のドタバタとした腐れ縁になっていく過程がまた面白いんですよね。
むしろ、ワトソンよりもホームズの方が相方にご執心。ご執心という所まではいかないんだけれど、アーサーの奇人っぷりにドン引きして出来れば離れてしまいたいと当初は思っていたコナンの裾を掴むように逃さないように捕まえて引っ張り回していたのはアーサーの方なんですよね。
どうもこのアーサー・ホームズ。決して人好きする性格ではなく、むしろ他人とは距離を起き、他人を一顧だにせず、歯牙にも掛けず、といった孤高のボッチという感じの人間だったようなのだけれど、何故か当初からコナン・ワトソンの事は気に入ったのか向こうから絡んでくるんですよね。
傍若無人に振り回し、好き勝手に振り回し、人の話を聞かずに暴走して振り回し、とひたすら振り回されるコナンくん。
実直生真面目でどこか融通のきかない堅物めいた性格のコナン・ワトソンであるが故に、傲慢で人の話を聞かないアーサーを当初は迷惑極まりない不快な人物と思ってはいたものの、その頭の回転の速さに瞠目し、やりたい放題の中にもどこか人を惹きつけてやまないカリスマに目を引き寄せられ、どこか放っておけない危うさについつい世話を焼き、本人が傷つき押し隠そうとしている闇や傷跡を垣間見て、段々とこの危険な発明家に惹かれていくのである。
一方のアーサーの方も、怪しさ満点の自分に対して勘ぐらず荒探りせず、尊重するようにそっとしておいてくれて、一方で暴走するとちゃんと叱りつけながら止めてくれて、訳知り顔で踏み込んでこず、しかし常に気にかけて踏み込んできてくれるワトソンに、余人には絶対に向けないであろう信頼を預けていくのである。
このアーサーくん、傍若無人に見えるし実際その通りで他人の目なんか一切気にしないような人物に見えるんだけれど、なんでかコナンに対してだけはすごい気にしいな素振りを見せてるんですよね。自分の言動に対してコナンがどんな反応をするか、どこかビクビクしながら伺っている姿を時折見せるのである。恐る恐る、コナンの様子を伺っている。その姿は傍若無人どころか繊細で臆病な青年に見えてくる。コナン・ワトソンは絶対に気づかないけれど。
この二人の奇妙な友人関係が成り立っていく過程は、なんとも興味深く面白かった。一連の事件はその添え物……というには奇っ怪で謎めいていて恐ろしく人の情念が詰め込まれた事件ではあったのだけれど。
その結末はスッキリしたものにはならなかったですしね。事件解決のために奔走し、ロンドン中を駆け回ることになったアーサーとコナン。それこそ留置場にぶち込まれたり（事件関係なく自業自得だが）、テムズ川をボートで追跡劇を繰り広げたりと大立ち回りを繰り広げるわけだけれど、大団円とはいかなかったですからね。
犯人に狙われている最後の一人が現れたときには、そのどこか余裕ある素振りに奇妙さは感じていたけれど、これは名前からくる印象も相まって全然気が付かなかったなあ。
ともあれ、これはまだまだ前日譚。アーサー・ホームズとコナン・ワトソンの二人はこうして出会い、コンビとして成り立ち、どこかほのかな友情によって結ばれた二人の物語は本編にて本格的に花開いていくのである……のはずなんだけど、ゲーム終わったらこれどうなるんでしょうね？
しかし、ホームズがアーサーで、ワトソンがコナンですか。アーサー・コナン・ドイルをホームズとワトソンで分割したんですね、なるほど。
ホームズの兄のマイクロフトが双子の姉になっていたのは、これはこれで面白かったのですけれど、なんか思いの外話聞いているだけだと弟思いのいいお姉ちゃんたちじゃないですかこれ？
思考が非常に機械的ではあるんですけれど、それでいて合理的アンサーとはまた別に弟の反抗期やら情緒みたいなものも理解できないなりにちゃんと考慮してくれているみたいですし。
あと、時代がちょうど重なっているせいか、この時期に留学生している夏目漱石的な人物がこの手のホームズ的なお話に登場するのってわりと見かけますよね。同じ下宿住まいというのはさすがに初めてみましたが。
さて、あざの耕平作品らしいケレン味は、まだはじまったばかりという所なので大人しかったと言わざるをえないのですけれど、元々スロースターター的な所もあったしなあ。と、思いつつ、でもこの作品ってシリーズ化はしませんよねえ。これ一冊ですよねえ。そういう意味ではもう少し続き読みたくはあるんだけれど、難しいのかなあ。いやそれより前にレイブンズの続きを所望してしまうのですが。
東京レイブンズ１６巻が出たのが２０１８年の１０月だから、４年と５ヶ月ぶりくらいになるのか。
合間に出た中公文庫からの単発ものは結局読んでなかったしなあ。
というわけで、レイブンズ続きずっと待ってますよ？
本作はノベライズ。いやコードギアスってなによ！？ と思ったら、これスマホゲーのシナリオの一つ、なんですね。まだ公開されてないみたいですけれど。てかこのゲームもうサービス終了しますって出てるんですけど！？ どうなってるの？
ともあれ、そのゲームの中で描かれる一つの世界。そのシナリオを担当していたのがあざのさんらしく、本作はそのシナリオのプロローグとなるお話らしいです。
皇歴１８８７年って、コードギアスのこの暦は西暦と一緒らしいので、本作の舞台となる時代って現代から遡ること１００と数十年前ってことになるのか。
まさにシャーロックホームズの時代のロンドンである。
ところがこのコードギアスの歴史は正史と違ってイングランドの王家がフランス革命のあおりでアメリカに渡った挙げ句になんやかんやでブリタニア帝国を立ち上げて、イギリスの方は共和国になっているという歴史世界なんですな。おまけに、なんでか内燃機関が発展せず、蒸気機関も恵まれず、電気科学文明が発展していく世界なのです。電気バッテリーが主流なのですね。コードギアスの主力兵器となるナイトメアも動力源がそれですし。
そんでもって、その電気式バッテリーが発展する起爆剤となったのが、日本で採掘される桜石、サクラダイトと呼ばれる鉱石であり、巡り巡ってコードギアス本編で日本がブリタニア帝国に侵略される要因の一つとなったわけです。
本作の時代はまさにその産業革命が花開く真っ最中。霧の都ロンドンですけれど、モクモクと工場から吐き出される煙がない以上、史実のような煤まみれの都市にはなっていないと思うのですけれど、具体的にはどうなってるんでしょう。
ただ、この物語の主役の一人となるアーサー・ホームズ青年は私立探偵ではなく、電気工学をおさめた発明家、という体で登場するのであります。発明家である以上、開発しているものが可燃性だろうが電池だろうが、爆発するのはテンプレートでありますけどね。
まあその爆発炎上住居崩壊が、なんの因果かハドソン夫人が大家となっているかの有名なベーカー街221Bへとホームズ氏が引っ越す原因となるのでありますが。
……ハドソン夫人じゃねえや。ハドソン三姉妹ニナッテルゾ！？ ハドソンさんが三人おるぞ！？
ただヒロイン候補かというと……次女のマリーが同年代ですしそれにあたりそうなんですけれど、全然ヒロインって性格でもキャラクターでもないしなあ。タブロイド紙のガツガツ突っ込んでくる記者という意味では下宿の大家よりも現場で一緒に行動する可能性も高くなってヒロインぽくはあるんですけれど、何しろ性格ががが。
そういう意味では一番上のお姉ちゃんのターナ・ハドソンが一番女性らしくはあるのだけど、レストレードがご執心だし、ちょっとホントのお姉ちゃんという感じで若者なアーサーとコナンでは役者が足りてなさそう。
というわけで、なんやかんやで偶然同じアパートメントに住まう事になったと思ったら住居がえらいことになり、緊急避難的にベーカー街のハドソンさんの下宿の同じ部屋で共同生活を営むことになってしまったアーサーとコナン。いや、その共同生活を営む前にその部屋の前の住人がからむ事件にクビを突っ込むことになるわけですが、この若者二人のドタバタとした腐れ縁になっていく過程がまた面白いんですよね。
むしろ、ワトソンよりもホームズの方が相方にご執心。ご執心という所まではいかないんだけれど、アーサーの奇人っぷりにドン引きして出来れば離れてしまいたいと当初は思っていたコナンの裾を掴むように逃さないように捕まえて引っ張り回していたのはアーサーの方なんですよね。
どうもこのアーサー・ホームズ。決して人好きする性格ではなく、むしろ他人とは距離を起き、他人を一顧だにせず、歯牙にも掛けず、といった孤高のボッチという感じの人間だったようなのだけれど、何故か当初からコナン・ワトソンの事は気に入ったのか向こうから絡んでくるんですよね。
傍若無人に振り回し、好き勝手に振り回し、人の話を聞かずに暴走して振り回し、とひたすら振り回されるコナンくん。
実直生真面目でどこか融通のきかない堅物めいた性格のコナン・ワトソンであるが故に、傲慢で人の話を聞かないアーサーを当初は迷惑極まりない不快な人物と思ってはいたものの、その頭の回転の速さに瞠目し、やりたい放題の中にもどこか人を惹きつけてやまないカリスマに目を引き寄せられ、どこか放っておけない危うさについつい世話を焼き、本人が傷つき押し隠そうとしている闇や傷跡を垣間見て、段々とこの危険な発明家に惹かれていくのである。
一方のアーサーの方も、怪しさ満点の自分に対して勘ぐらず荒探りせず、尊重するようにそっとしておいてくれて、一方で暴走するとちゃんと叱りつけながら止めてくれて、訳知り顔で踏み込んでこず、しかし常に気にかけて踏み込んできてくれるワトソンに、余人には絶対に向けないであろう信頼を預けていくのである。
このアーサーくん、傍若無人に見えるし実際その通りで他人の目なんか一切気にしないような人物に見えるんだけれど、なんでかコナンに対してだけはすごい気にしいな素振りを見せてるんですよね。自分の言動に対してコナンがどんな反応をするか、どこかビクビクしながら伺っている姿を時折見せるのである。恐る恐る、コナンの様子を伺っている。その姿は傍若無人どころか繊細で臆病な青年に見えてくる。コナン・ワトソンは絶対に気づかないけれど。
この二人の奇妙な友人関係が成り立っていく過程は、なんとも興味深く面白かった。一連の事件はその添え物……というには奇っ怪で謎めいていて恐ろしく人の情念が詰め込まれた事件ではあったのだけれど。
その結末はスッキリしたものにはならなかったですしね。事件解決のために奔走し、ロンドン中を駆け回ることになったアーサーとコナン。それこそ留置場にぶち込まれたり（事件関係なく自業自得だが）、テムズ川をボートで追跡劇を繰り広げたりと大立ち回りを繰り広げるわけだけれど、大団円とはいかなかったですからね。
犯人に狙われている最後の一人が現れたときには、そのどこか余裕ある素振りに奇妙さは感じていたけれど、これは名前からくる印象も相まって全然気が付かなかったなあ。
ともあれ、これはまだまだ前日譚。アーサー・ホームズとコナン・ワトソンの二人はこうして出会い、コンビとして成り立ち、どこかほのかな友情によって結ばれた二人の物語は本編にて本格的に花開いていくのである……のはずなんだけど、ゲーム終わったらこれどうなるんでしょうね？
しかし、ホームズがアーサーで、ワトソンがコナンですか。アーサー・コナン・ドイルをホームズとワトソンで分割したんですね、なるほど。
ホームズの兄のマイクロフトが双子の姉になっていたのは、これはこれで面白かったのですけれど、なんか思いの外話聞いているだけだと弟思いのいいお姉ちゃんたちじゃないですかこれ？
思考が非常に機械的ではあるんですけれど、それでいて合理的アンサーとはまた別に弟の反抗期やら情緒みたいなものも理解できないなりにちゃんと考慮してくれているみたいですし。
あと、時代がちょうど重なっているせいか、この時期に留学生している夏目漱石的な人物がこの手のホームズ的なお話に登場するのってわりと見かけますよね。同じ下宿住まいというのはさすがに初めてみましたが。
さて、あざの耕平作品らしいケレン味は、まだはじまったばかりという所なので大人しかったと言わざるをえないのですけれど、元々スロースターター的な所もあったしなあ。と、思いつつ、でもこの作品ってシリーズ化はしませんよねえ。これ一冊ですよねえ。そういう意味ではもう少し続き読みたくはあるんだけれど、難しいのかなあ。いやそれより前にレイブンズの続きを所望してしまうのですが。
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
