【乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル 5】 春の日びより/ひたきゆう TOブックスノベル

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迷宮での死闘を潜り抜けたのも束の間、アリアのもとに新たな依頼が舞い込む。それは、王立魔術学園での第一王女エレーナの護衛であった。今や何者にも屈しない“力”を身につけた彼女は、決意する。あの日の盟友【とも】との誓いを果たす、そして今度こそ運命【シナリオ】をぶち壊すと――!王家の力を削がんとする貴族派による誘拐事件、王国を混乱させるべく蠢動する魔族の襲撃。さらにはその裏にちらつく因縁の相手、グレイブの影。様々な思惑が交錯する“乙女ゲーム”の舞台で、最強主人公【ヒロイン】の熾烈な戦いの幕が今、上がる!「あなたは、私が護る!」 壮絶&爽快な異世界バトルファンタジー第5巻!


原作ゲームのはじまりとなる学園編が、ついに5巻にしてスタート。
……スタート?
ちょ、ちょっと待って? 乙女ゲームの学園モノってこう、キャッキャウフフとは言わないですけれど、攻略対象の男性たちと主人公の女の子が学園生活の中で交流を深めていき、という展開が普通ですよね。学園って勉強したり社交界で人脈を作ったりとか、いずれにしてもこうもっと穏やかで平和な世界ですよね。

……血みどろなんですけど。
が、学園が舞台になってもアリアの殺戮劇、なにも変わってねえ! いや、同じ学生を殺しまくる、今から殺し合ってもらいまーす、なバトルロイヤル展開じゃないだけマシなのか。アリアも同じ学生は手にかけていないし。
とはいえ、裏でしかけてくる工作員や暗殺者や悪事を働いている盗賊ギルドや魔族のたぐいは闇に紛れてバッサバッサといつも通りに殺処分してまわっているアリアさん。
学園生活は? こう、他の学生たちの交流は? 見事なくらいにさっぱりとオミットである。そりゃあね、今のエレーナに関わろうとしてくる学生の大半はガチでやべえ思惑に踊らされた連中くらいなもので、ミーハーな気分で声がけできるような状況でもないもんなあ。
暗闘は各王族に暗殺者が差し向けられ、騎士団の騎士までもが裏切って護衛対象を殺害しようとしてくるくらいの情勢ですし。これ暗部忙しすぎでしょう。てか、表の人間である騎士団ですら、誘拐や暗殺に関わってくるって殺伐にも程があるんですけれど。
いろんな陣営が暗躍している中で、誰も彼もが暗殺という手段に頼りすぎじゃね!? 安易に殺そうとしすぎてね? 情勢が温まりすぎて、一部の過激派の押さえが聞かずに派閥の思惑を無視して近視眼的に邪魔な有力者を殺そうと実力行使に出たり、と色んな意味で制御不能になっている気すらしてきます。
おまけに、魔族の一部が突出してきて、直接エレーナを狙ってくる始末ですからね。煽りを食って警備の騎士どころか一部の学生も死傷者出てますし。
ちょっとびっくりするくらい血が流れてますよ。学園編ですよね? 教室での講義の風景とか殆ど見ることなかったんですが。
まさに鮮血の学園編だ。いや、まだアリアだけだったらこの娘対処療法で侵入してきた敵を討伐しているだけなのだから、もうちょっと穏当に済んだかもしれないけれど、破滅志向のカルラが無理心中気分で国ごと破滅しかねない陰謀をめぐらして敵を引き込んで、気分でそれを自分で八つ裂きにして遊んでたり、クララはクララで、王太子との婚姻を果たすため、愛の力でガチの悪役令嬢として私兵まで自力で抱え込んで謀略を張り巡らしだしちゃいましたし。
正直、クララはあなどれない人物になってきたんじゃないだろうかこれ。怯えているだけだったら無為のままだっただろうけれど、怯えたまま王太子を本当に愛してしまって、その臆病さ故に徹底して敵となる相手を排除する方向に変わっちゃいましたからね。それもヒステリック、にではなく臆病故に慎重に、冷徹に、容赦なく自身の寿命を削ってでも手段を選ばず、という方向へと向いてしまいましたし。変に自信満々で慢心している悪役令嬢よりも、こっちのクララの方が相当に怖い存在になってきている。
それなのに、弱さゆえに同じ弱さを持つクララに惹かれた王太子の心が、その弱さゆえに甘やかしてくれる偽アーリシアへと傾いていくのは皮肉というべきか。この偽アーリシア、実家からも疑惑の目で見られていますしアーリシアを名乗るにはいかにも中途半端なその姿に、どうせすぐ馬脚をあらわすと軽視していたのですけれど、この娘思いの外厄介かもしれん。ある意味取り憑かれているようなものですし、見ていると完全に男をダメにする女モードになってるもんなあ。
クララは権力志向ではありませんし、王太子と添い遂げられれば、という恋に生きる方向に向かっているので、そういう意味では偽アーリシアとは一切妥協できないけれど、エレーナとアリアとはどこかで線を引ける余地はあるはずなんですが、なんとかならないものかと思ってしまいます。

そして、ここでついに因縁の怨敵グレイブとの決着とも相成りました。出会ったときからお互いにその命を最優先で狙い続けたまさに仇同士、天敵同士といった二人でしたから、その二人の決着となるともっとこう、一大の決闘となるだろうと思っていたんですけれど。
アリア本人も相当の覚悟と気合を漲らせて、そう思っていたみたいですけれど。
いやー、これはなあ。グレイブが所詮はこの程度の人物だった、という事なんでしょう。元々、身勝手な思い込みだけで、自分の判断が正しく王国のためになる、と妄想している狂人でしたからね。暗殺者の視点から、どうやって大局を見ているつもりだったんだろう。
確かにあれからグレイブはステータス的には成長を続けて強くなっていたかもしれないけれど、独り善がりな正義は結局彼を一歩たりとも前に進ませていなかった。対してアリアは常に前に進んでいた。単純な力、能力の強さだけじゃない。見ている視界も、そこから生まれる思考も、ずっと高く広くなっていた。そんなアリアにとっては、今のグレイブなどもう路傍の石でしかなかったのだ。
そう思えば、この決着も大いに頷けるものだったと言えるだろう。むしろ、グレイブが利用しているつもりだった吸血鬼たちの方が、自分たちの存在価値と未来を掛けて自分たちの命も何もかもを費やす覚悟を決めていたところなど、アリアにとってもより強大な、真っ向から戦うべき敵だったんじゃないだろうか。アリア自身も認めていたところありましたし。
そして、彼らの執念がエレーナとアリアを窮地に追い込むまでになりましたし。

とまあ、ひたすら殺伐としていた学園編ですけれど、僅かな間ですけれどエレーナとアリアが同じ時間と空間を過ごし、同じ学生として、一番親しい主従として傍に居続け、寄り添い続けた、という意味では本当に貴重な時間ではあったんですけれど。エレーナ的にはアリアに構える機会がけっこう沢山あったみたいでご満悦になってたときも多かったですし。良かったですね、エレーナ様。
何気にこれから先はさらにこれ以上無いくらい二人きりの時間が続くわけで、エレーナ的には大ピンチではあるものの、それなりにご褒美でもあるのかもしれないw

さて、今回アリアが落ち着いて一ところに居座って、しかも学生として同世代の子らと一緒に、ということになり、既に幼い頃に色んな意味でアリアに陥落させられている子らとの久々の再会も多かったみたいで。
ロディくんのそれはなんか可愛かったなあ。ちゃんと覚えていてくれたのね、アリア。いやー、まったく脈なさそうだけど、友達はワンチャンありそう。結構心許してくれているみたいだし。
心許しているといえば、セトくんはあれ、完全に弟扱いなんだけどあのアリアがあそこまで気安く弟扱いしてるって、それはそれで破格の対応ですよ、セトくん。
まあセトくんも、言ってしまえばアリアも、魔力の強さゆえに体大きくなっちゃっているだけで、まだ12歳とか本来はそんな小学生程度の年齢なんですよね。そう考えると王太子の幼さはまだ年相応なのかもしれないけれど。エレーナにしてもクララにしてもカルラにしても、みんなガンギマリすぎて本来の年齢とはかけ離れた精神性になってるもんなあ。アリアにしてもそうなんだけど。
それでも、今回の番外編ではアリアの年相応の姿がちらほらと見られたのは愛いものがありました。この娘、ほんとにフェルドのこと慕ってるんだよなあ。まだそれが異性のそれになるほど心が育ってないみたいだけど。でも、パンツ履いてない、からそれなりに色っぽい下着を履いて見せに行く程度には育ったんだよね。全然本人色気づいていない、本当にただ買ったものを見せに行ったお子様思考なのだけどw
むしろ、フェルドの方がおっさんのくせに
なんかモヤモヤしはじめたぞw