【勇者、辞めます 3~次の職場は魔王城~】 クオンタム/天野 英 富士見ファンタジア文庫

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勇者の知識で、荒廃した魔界を再生せよ! 魔王城再建ファンタジー第三弾!

遂に魔界へたどり着いた魔王一行。
そこでレオが見たものは、水も土も重度に汚染され、滅びの間際にある魔界だった。
残された時間は後一年。しかも、同時にエキドナもある悩みを抱えていて、このままでは魔界崩壊の危機!?
こうなったら、どちらもまとめて救ってしまえ! 農作物の品種改良に、精霊を鎮めて水質改善! 魔界を現代知識で楽園に作り替えろ! 引退勇者の魔王城立て直しファンタジー、魔王&魔界救済の第三巻!

おおぅ、この三巻で物語を〆てしまうのか。
いざ魔界復興編、という事で個々の問題への取り組みをじっくり描いたり、ベリアル教との対決や副王イリスをはじめとする魔界側の魔王軍メンバーとの交流など、やろうと思えばまだ伸ばせたんでしょうけれど、主なテーマは一応前巻までに消化したとも言えますからね。これ以上は惰性になってしまうか。
四天王が取り組むべき課題、そしてレオが向き直らないといけなかった問題と来て、そうかそう言えばエキドナだけレオのコンサルティングを個人的に受けてなかったんでしたっけ。2巻はむしろレオ当人の話になっていてエキドナが解決に奔走する方になっていましたし。
でもなに? エキドナちゃん、自分だけレオに相談とか出来てないの気にしてたの? 根に持ってたの? なにこの娘かわいい。
いやー、リリがどうしてエキドナだけ「エキドナちゃん!」って呼んでたのか今回よくわかった気がするわー。元々エキドナの普段の振る舞いがあれ、装っているだけで素のエキドナがどちらかというと見た目相応の普通の少女そのものらしい、というのは先王のパパさんとのやり取りで垣間見せていたので分かっていたつもりになってたんですが。
……本来のエキドナって思ってた以上に普通の小娘っぽいな!
これは思いの外普段のそれと印象違っていて、けっこうイメージ変わったかもしれない。いつもそれなりにずっと片肘張ってたんだなあ。王様として周りに不安を与えないように、堂々とした態度を崩さないようにしていたのか。
こうしてみると、かなりプレッシャー受け続けていたのがよくわかる。イリスに化けてたのも、本気で演技してませんでした。あれはただ、素の自分を出したかっただけなのか。頑張り屋なのは変わらないですけれど、なんか甘えてる感じがありましたもんね。王様だとなかなか甘えたり寄りかかったりみたいな真似出来ないですし。
レオがあまりに優秀過ぎて自信喪失中のエキドナにとっては、何もかも背負い込んで頑張り続けるにはちと疲れてしまっていた頃合いでもあったでしょうし。それでも魔界存亡の危機となれば、力を抜く余裕なんぞなかったでしょうけれど、自分じゃなくてもレオがいる、と思えば色んな意味で力も抜けてしまうか。まあ、その魔界滅亡カウントダウンの余裕の方はまったくもって無かったわけでありましたが。

むしろ今まで良く持っていた方なんでしょうな、これ。そう考えると、先王でエキドナの父であるキュクレウスって、かなりとんでもない傑物だったんじゃないだろうか。印象的に、エキドナに全部丸投げしてとっとと隠居してしまった親父、みたいな感じでしたけれど、改めていろんな側面から彼の業績を顧みてみると、ほとんど無茶苦茶になってた魔界の地均しを彼の代で終わらせてるんですよね、これ。おまけに、人間界の方まで足伸ばしてレオともコンタクト取っていた、という。
最初から時代のエキドナかイリスに決着は任せる算段で、自分の代ではそれまでの道筋を立てておこうというつもりだったのでしょう。怠惰な物言いしか娘にはしてませんでしたけれど、これキュクレイスがあらかたの問題を片付けておいてくれなかったら、まずエキドナは魔界国内まとめるためだけに労力取られて人間界に攻め込む所まで辿り着けなかったんじゃないだろうか。
レオと一時期冒険者仲間していた、という事実には吹いてしまいましたけど。ほとんど親父の仕込みじゃん!
この親父、未だ隠居しているだけで健在のはずなので、ちょっと引っ張り出してきて働かせた方がいいんじゃないだろうか。というか娘が結婚するとかいう話になったら飛び出てくるタイプだろうか、このお義父さん。いや食わせ者っぽいからそれでも出てこなさそう。

デモンハートシリーズに関しては、さすがに今回のアクエリアスで打ち止めなんでしょうね。実は全員生きてました、なんて話もないでしょうし。ヴァルゴもアクエリアスも、それぞれ故あって今まで顔を出せなかったわけで、生きてたらこれだけの年月、さすがにレオとも再会、或いは接触を図る機会もあったでしょうし。
しかし、エキドナとレオじゃないですけれど、カナンとヴァルゴもこれ友人関係で収まらないですよねえ。なんかメチャクチャイチャイチャしてね?
まあエキドナとレオはそれどころじゃないですけれど。いや、本来ならもっとこう熱あげてイチャイチャしてほしくはありましたけどね。そのへんの距離感、微妙っちゃ微妙だったんだよなあ。そもそも君ら、どういう関係性を望んでいたの? と、いうあたり当人たちはスルーしていましたし。
そのわりにラストあたりはもう、なくてはならない存在同士になってましたからね。なんですかあれ、エキドナにしてもレオにしてもプロポーズどころじゃないセリフなんですよね。
でもなんにせよ、レオをしてこの出会いのために自分の3000年はあったんだ、とまで思える関係は尊いです。良いお話でした。