【恋は双子で割り切れない 5】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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横浜でのデート。琉実と付き合っていた頃にも行った思い出の場所。あの時と違うのは、今日は那織も一緒ということ。
7月24日。今日は僕の誕生日。琉実と那織から誘われて、三人で出掛けていた――幼い頃からよく知る家族同然の三人で。昔みたいに。
だけど、この楽しい時間がもうすぐ終わるということを、僕は知っている。
今日僕は想いを告げる。
告白の結果はどうあれ、一つの恋が終わることだけは間違いがない。この関係が崩れてしまうことに、もう戻れないことに対して明確な恐怖がある。
それでも僕は言わなければならない。
君が、好きだから。

兎にも角にも、琉実も那織も妹がお姉ちゃんが大好きすぎじゃね!?

前半で琉実が純と付き合い始めた頃の心情が。中間で三人デートとその最後に純の口から引き伸ばしていた結論が。そして後半では純から好きだと告白された那織の改めてちゃんと交際を申し込まれるまでの心情が、それはもう丁寧に丹念に描かれている。
そこから伝わってくるのは、この双子姉妹の純への好意なんだけど、それ以上に双子の姉妹への想いなんですよね。
この子ら、本当に純の事好きなんですよ。大好きなんですよ。琉実が告白して純からOK貰ったときの喜びよう。自分たちが彼氏彼女の関係になったという事実に飛び跳ねんばかりの嬉しさを感じてる。
デートの際の弾むような楽しさ。恋人という関係でいるからこそ、二人で何をしていてもウキウキが止まらない。そんな幸せの絶頂が溢れ出てるんですよね。これは那織も一緒で相変わらず非常に豊富な語彙と蘊蓄を交えながら、でも純に告白されてもう天にも登る心地なのは当時昔の琉実と一緒なんだよなあ。ひねくれてどこか斜に構えている那織が、これほど嬉しさに悶てこらえ切れずにぴょんぴょんしている姿を目の当たりにしてしまうとは。
でもね、二人共これだけ幸せの絶頂の中にいながら、でも決して双子の姉妹のことは忘れていないんだ。片時も、頭の中からその存在を消し去ることはないんだ。常に、姉妹のことを思ってる。考えている。嬉しさを爆発させると同時に、姉の事が・妹の事が心配でたまらなくて、喜びでどこか感情の箍がハズレている分、姉妹への家族愛ともいうべき愛情がとめどなく溢れてきてるんですよね。
だからむしろ、素直に歓喜する純への愛情よりも、複雑に迷い絡みながらもどこか一途にその大切に思っている気持ちを、大事に思っている気持ちをブレずに突き詰めている姉妹愛の方に強烈な存在感を感じてしまう、そんな双子の姉妹の心情描写なのでありました。
琉実に関してはね、言わば抜け駆けに近いことをやってしまった事実があるだけに、那織に対して申し訳無さや罪悪感、負い目みたいなものが、やってやったという優越感や勝利の余韻を塗りつぶすように琉実の心に影を落としていた様子が伺えます。でもどこかに、抜け駆けでもしなければ那織には勝てないという強迫観念があったようにも見受けられました。それだけ純と那織の相性は琉実の目から見てもぴったりだったのでしょう。この那織への劣等感みたいなものは結局この局面の最後まで琉実の心にこびりついているのですが、だからこそ琉実がそんな那織をそれでも大好きで大好きでどうしようもない、という感情が妹へのネガティブな感情を押しのけてしまっている様子が随所に浮かび上がってきてるんですよね。
一方の那織の方も、念願かなってついに純に告白された。一度仕切り直した純との関係、琉実との真っ向勝負で完膚なきまでに勝利した。もうたまんないですよ、ちょっと見ないほどのテンションで浮かれまくってますよ、このあんぽんたん娘。でも、これだけ浮かれているのに、頭沸いちゃっているのに、その歓喜の感情は別の棚に置いておいて、那織ってばフラれた形になる琉実の事心配で心配でたまらないって感じなんですよね。もうめっちゃ気遣っているの。普段あれだけバシバシ張り合ってる、というかまあ姉妹らしい距離感ならではなんだけど、喧嘩じゃないんだけど、結構無造作にやりあってるじゃないですかこの二人。なのに、この件に関しては勝利者として誇るでもなく、マウント取るでもなく、むしろ神経つかって周りがいらん事しないように気を張っているくらいで。母親が無造作に余計なことした時は結構な勢いでブチ切れてしましたしね。
勝った負い目、というのはなさそうなんですよ。そこらへん、正々堂々とやりあったという意識があるんでしょう。でもだからこそ、同情とか哀れみとかじゃなくて、恋愛の勝者としてじゃなくて、大事な人にフラれて傷ついている悲しんでいるお姉ちゃんを心配して守ろうとする妹という姿が現れてきていて、なんかものすごくグッとくるものがあったのでした。
だからこそ、琉実の方もかなりショックだったしダメージ大きかったのだけど、変にわだかまりを抱え込まず、素直に那織とも接しているようなんですよね。那織と純たちの部活の合宿旅行に琉実も一緒に行けば、みたいな話になった時、琉実の性格からしてまず断るだろうな、と思ったのにむしろ乗り気で参加してきたのは、それだけ琉実が前向きに今回のことを処理しようという心情の現れにも思えるんですよね。たとえ純と那織が恋人になっても、自分が仲間外れになって距離が離れていく、なんて事にならない事を証明するためにも。新しい三人の形を模索するためにも。
そのあたりの琉実の心境を踏まえて、なのかどうかわからないけれど、とにかくもう那織が気ぃ配ってるのよ。純と旅行だー、とはしゃいでるのも間違いなく感情の最前列なんだけど、こういうの見てると優先順位とか完全に別枠で、琉実のことは思考・感情の特別枠なんだなー、というのが伝わってくるんですよねえ。
もう、二人共お互いのこと大好きすぎじゃね?

ほんとねー、決着つけばもっと拗れるというか縺れるというか、気まずい空気になるかと。色々と割り切れずに難しいことになるんじゃないかと心配していたのですけれど、神宮寺姉妹のお互いに対する愛情は、思っていた以上に強くて大きくて深かった。参りました。
……純くん、ちょっとこう、あれですよ。姉妹愛に助けれてるところありますよ?
琉実が疎外感感じてるところで、純の方は琉実を仲間外れにせずにうまくやれてる!とか思っちゃってるシーンなんかで、まだまだ少年の未熟さが垣間見えてしまったなあ。いやまあなかなか難しいよ、そういう所、うん。