【変人のサラダボウル 3】  平坂読/カントク ガガガ文庫

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異世界の姫は学校へ、女騎士はパチンコへ。

惣助の尽力で戸籍を手に入れ、学校に通うことになったサラ。
頭脳、メンタルともに規格外のサラは、当然のように入学早々波乱を巻き起こすのだった。
一方、中学でぼっちになってしまった友奈にも、人生の転機となるような出来事が訪れ、惣助に想いを寄せるブレンダ&閨の悪女二人も、変化した状況に対して動き出す。
そして何故かバンドでメジャーデビューを目指すことになったリヴィアは、パチンコでの負けを取り戻そうと沼にハマっていた――。
ラブコメ度やや高め?で繰り広げる、変人達の奇想天外おもしろ群像喜劇第三弾!!


もう……まって、ちょっと、面白い、面白すぎるんですけど!
サラ、サラ、小学校に転入したはいいですけど、6年生の12月中旬ですよ転入したの。もう卒業間近。学校のちゃんとしたイベントってもう残されてなかったんじゃないだろうか。
にも関わらず、初日で友達ではなくボーフレンド4人と家臣3人が出来てしまうという覇者の道を歩み始めるサラさん。
いまマジで小学校生活一瞬で終わったんだけど、作中でも本当に一瞬で終わっちゃったんだけど、小学校入ったと思ったら卒業式になって、ええ!? って思ってたらその卒業式の内容がえええええ!? てなもんで、いったいなにをやったんだサラ。100日天下か!? たった100日でガチで天下とっちゃったのか!? 単に同じ生徒たちを魅了してしまった、とかまでならまだ理解の範疇(よっぽど踏み外してますけれど)ですけれど、この異世界姫さんてば、なぜか教師や在校生やPTAまでサラ様と呼んで崇め奉ってるんですけど。卒業式がサラ様の旅立ちイベントになってるんですけど!!
いやもうバカ。バカバカしいにも程があるってくらいにバカバカしいんだけど、もうなんだろう。ほんとに面白い、腹の底から心の底から愉快で面白いんですけどぉ!

って、この作品がサラを描くだけの物語ならもうちょっと落ち着いて楽しめたのかもしれませんけれど、これはまさにタイトルそのままの【変人のサラダボウル】。どっちを向いても面白いしかない人たちのエピソードがたけのこみたいにわんさと生えてやがるんだってば。
いじめ問題で探偵である惣助に助けを請い、サラと友達になり転校するなどしてなんとか新しい生活を歩みはじめた永縄友奈もその一人。登場したての頃はおのが環境に苦しみ足掻きもがいている普通の少女だったのに、サラと友達になってしまったが故に。いや、本人に資質もあったんでしょうね。サラと同じ学校に通うつもりで転校したはずが、まさかのサラ実は小学生相当の年齢だった、というのが発覚してはしごを外され、ひとり見知らぬ学校に放り出されるはめになった友奈さん。
そこから、かつてのいじめを解決した経験をたまたま利用することで、彼女は探偵業の楽しさに目覚めてしまうのである。サラがいないのに、なんだか独特のポディションを一人で確立していってしまう友奈の明日はどっちだ。ってか、サラが新入生として入学してきた時にいったいどんな化学反応が起こってしまうのか、今から楽しみなんだが。
楽しみとは真逆の恐れを感じさせる事態も迫っている。ジリジリと導火線に火がついて起爆しようとしている関係が、惣助の女性関係(惣助の関知しないところで)の縺れである。問題は惣助が関知していないだけじゃなくて、当人たちも縺れている事にまったく気づいてないところなんですよねえ。
弁護士のブレンダと探偵にして別れさせ屋の閨春花。二人共、性格のアレさと職業柄も相まって同性の友達が居ない中で、好きな人が居て健気にアプローチしている同士という共感からついつい打ち解けてしまい、ホロホロと溶けるようにプライベートでも睦まじくどこか初々しくお互い気遣い親身になって支え合う親友同士になっていってしまうんですね。しかし、二人は知らない。自分たちが不倶戴天の恋敵だということを。果たして、その事実を知ってしまったとき、二人のきっと人生で唯一無二だろう親友という関係はどうなってしまうのか。
この二人の、今まで友達いなかっただろうな、という不器用で、だからこそ妙に肩寄せ合うような距離感になってしまっている姿が、微笑ましいやら約束された破綻が悲しいやら。
繰り返すが、惣助はこの二人からの好意にまったく関知しておりませんw

そして相変わらずというか、どうしようもない波乱万丈の人生を送り続けている遊び人女騎士リヴィア。完全に根っからのダメ人間になってるぞ、この子。お小遣いもらってパチンコ行くのが日課になってるって、完全にダメな方の紐じゃん! ヒモじゃん! ほそくてながくて縛るのによく使うあれじゃん!
だがあいや待たれい。今のリヴィアは遊び人ではあるが同時に働いているのである。いや、バンドのメンバーとして活動していることを働くと言って良いのか。普通は良いだろうと思うんだけど、リヴィアの場合はどうにも抵抗が生じてしまうのがた、ともあれ遊んでいるだけじゃない今のリヴィア。そう、アーチスト。アーチストなのだ、今のリヴィアは。そして、インディーズのまま大変な勢いでデビューに向けて駆け上がる。いやほんと展開早いな! サラの転入から卒業までの一瞬に負けず劣らずに一気呵成の上り調子だぞ。
そして、上がれば落ちるのがリヴィアの人生。いや、ほんとに急転直下だな。

なんか微妙にサラがこう……ねえ、微妙な、そう微妙な表情してましたねえ。惣助との関係、父と娘という形に落ち着いたことに異議や不服は抱いている様子見せていなかったと思ってたのだけど。
そうかー。そういう切なさも潜めていたのかー。ここらへん、ちょっとグッとくるものがありました。一度戸籍作っちゃったらねえ、どうしようもないものねえ。