【世界救い終わったけど、記憶喪失の女の子ひろった】 龍流/紅緒 TOブックス

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「私に世界【はじめて】を教えてください!」魔王を倒して燃え尽きていた勇者は、謎の敵に追われていた赤髪の少女に一目惚れした。助けようにも、追手の目的は一切不明、さらに当人は記憶喪失!?食いしん坊で天然そうなこの子に一体何が? 少女の秘密を探るために、勇者はかつての仲間を訪ねる旅に出る。腹黒な賢者、脳筋の姫騎士、千歳の幼女、成金の死霊術師。愛が重いパーティーメンバー達に「「「「あの女は誰ですか?」」」」と問い詰められながらも、皆の固有魔法で次々に刺客を圧倒!だが、遂に黒幕を追い詰めたその時、「赤髪に恋すると、世界が滅ぶ」と意味深に告げられて──。君が誰であっても、必ず救う。隠居勇者が最強パーティと一人の少女の過去を辿る、リライフ・ファンタジー開幕!

ふわぁぁぁ、これはあれですよ、めっちゃ好きなやつーーーー!!

別作品の名前あげて申し訳ないんですけれど、佐伯庸介さんの【昔勇者で今は骨】がめっちゃ好きな人はこれも絶対ハマるんじゃないだろうか。
魔王を倒したあとの勇者の物語という類似点だけじゃなくて、空気感の方向性がいい感じに似てるんですよね。
何よりこの作品、構成がメチャクチャ美しいですわ。
魔王を倒すのと引き換えに、自分の名前を失い他人の名前を知る事も覚える事も口に出して呼ぶ事もできなくなった勇者くん。
それは名前を失っただけで、記憶を失ったわけじゃない。仲間たちとの絆は健在で、彼はもう仲間たちの事を名前で呼べないけれど、賢者ちゃんや騎士ちゃんと言った風にその人の個を認識して呼べるのだ。面倒だけれど、そこまで問題だろうか。とも思わないでもなかったのだけれど……。
それはとっても大切なことで、勇者にとって名前とはかけがえのないものであり、背負うべきすべてであったはずなんですね。
そして名前しか持っていない少女に対して、勇者はその赤髪の少女の唯一を呼んであげられなかった。

放浪の先で記憶を失い唯一名前だけを覚えている赤髪の少女を拾った勇者は、赤髪ちゃんの記憶を取り戻す手助けのために、今はそれぞれ別の場所で生計を立てている魔王討伐パーティーのメンバーを一人一人訪ねていくのです。これ、みんな女性なんですけどね。
そこで、各章ごとにヒロインを一人ずつ描いていく、掘り下げていく、その女性が勇者にとってどんな人物だったのか。逆にその女性にとって勇者とはどういう人だったのか。
つまるところ、彼女達がどんな風に勇者という人を愛しているかを、彩り豊かに描いていくお話になっているわけだ。
これがまた、いいんですよ。実に良き。
カラー口絵に最初に描いているんですよね。ヒロイン全員の愛の形、それぞれが抱えている愛がいったいどんなものかを。
そして各章の終わりに、彼女達はそこで描かれたすべての結論として一つの言葉を語るのである。
「私の愛が、最も多い」
「あたしの愛が、最も熱い」
「我が愛、永遠に不変」
「わたくしの愛が、最も美しい」
この言葉に至るまでの物語が、もうグッとくるんですよ。それぞれのヒロインの想いというのは、既に完成していると言って良い。それは魔王を倒すまでの旅路で、冒険の中で培われ、育まれたもの。これは世界を救ったあとの物語だから、彼女達の想いも愛も、既に辿り着いている。
だからこその美しさがあるんですよ。冒険が終わった後の、エンディングのその向こうの、物語が終わったあとの物語だからこそ、描き出せるものがある。
そして同時に、これは新しい物語でもある。世界を救う冒険を知らない赤髪ちゃん。勇者という人の本当を知らなかった赤髪ちゃん。でも、自分の記憶を探す旅で、勇者と共に彼の仲間たちと出会う旅の中で、赤髪ちゃんは知っていく。勇者という人を。彼の心意気を、心根を。そして彼を慕う女性たちの想いの形を。その力強さを。
そうして彼女もまた、その旅の中で芽生えさせていくのです。最も新しい、生まれたての幼い愛を。
彼の仲間たちの愛の形をひとつひとつ目の当たりにしてきた上で、赤髪ちゃんもまた育んでいくのである、培っていくのである。
そして、彼女だけの、赤髪ちゃんだけの愛の形を見つけるのだ。

ストーリーとしてはこの手の世界を救った後の物語としてはオーソドックスの部類なんだろうけれど、ほんとねー、とかく魅せ方が実に素晴らしい。キャラクターもそれぞれめっちゃ魅力的で、ポップで明るいのに軽くなく、重たいのにしつこくなく、そりゃもうグイグイと惹きつけてくれるんですよ。テンポの良い打てば響くような会話劇と、それらを存分に活性化させる登場人物たちの愉快さ加減。そしてそれらを最大限に引き立たせる全体の構成。いやあもう、これ端から端まで好きですわ。大好きですわ。好みどストライク。うはははは、いやあ楽しい。好き。たまらん。
女性陣もみんな好きで、特に騎士ちゃんの貴族で領主なのにめちゃくちゃアレでアグレッシブな所とか大好きなんですけれど、赤髪ちゃんのやたらグイグイ行く遠慮ないところも食べるの大好きな所も好きなんですけど、賢者ちゃんや師匠ちゃんや死霊術師さんもそれぞれ語るに尽くせぬ魅力満載なんですけど。
まず何より勇者くんですよ。この勇者くんが、いいんだわ。なんかもう好きな男の子だわ。君はそんな風に明るくノリノリで生きてる姿がいいですよ、素敵ですよ。苦しみながら背負ったものの重さにのたうち回る彼もまた、それがあってこそなのかもしれませんけれど。
そういう意味では、魔王ちゃんがどうしてあんな名前を奪う呪いを最期にかけたのか、気持ちわからなくもないんですよね。独占欲でもあり、束縛でもあり、解放でもあり、勇者くんは否定したけれど、それもまた愛だよ。

なにはともあれ、自分的に好きの要素で積み上げられたタワーみたいな作品でした。うんもう好き♪