【ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜】 諏訪ぺこ/ 海原ゆた TOブックス

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「さあ、貴女の恐れる未来と戦いましょう?」八歳の爛皀峅女″ルティアは牋役令嬢″アリシアと友誼を結んだ。婚約破棄からの処刑エンドに怯える彼女の運命と、この国の未来を変えるためだ。来たる厄災を全て取り除こうと、死ぬはずの国王をスライム魔法で救出。疫病対策のため薬草の大量栽培にも着手し、作戦は順調だったのに──シナリオにはなかった放火事件が! 裏では弟の犢粁対象者″ポンコツ王太子が関わっているようで……「大丈夫。貴女を牋役令嬢″になんてさせないわ!」大切な親友も家族も国も、破滅エンドから守ってみせる! 小さな王女が友情と知略でシナリオ改変に挑む、本格内政ファンタジー!

いや、いやいやいや、モブというにはこのお姫様バイタリティありすぎません? 溢れすぎてません? とても大人しくその他大勢に埋もれていたとは思えない。
しかもこの子、ルティア姫って天然物。転生者じゃないんですよね。つまり、元からこういう娘だった、というのは後半で明らかになる亡き母のキャラクターがルティアそっくりだったという事からも明らかで。
いや原作でこの子が殆ど物語に絡んでこないモブ王女だった、というのはホントどういう事だったんだろう。
詰まるところ、序盤の改変極点となる父親の国王陛下の事故死が本当に大きかったという事なのか。でもまあ確かに、一巻終わって登場人物の人となりやバックグラウンドが明らかになってみると、原作の正史ルートでルティアが出しゃばる要素ってあんまり無いんですよね。何しろ、それで明確に国が傾いていくとかルティアに悪意が向く可能性は低かったわけですし。
なるほど、こうしてみると当初目に見える範囲の印象と実態はだいぶ違ってはいるんですよね。想像していた人物像と全然違っていたり、人間関係の立ち位置なんかが思っていたのと異なっていたり、と。
とにかく、第二王子にして王位継承者であるライルの我儘と傍若無人さが度を越して酷いもんだから、それに目を奪われてしまって権力争いやらなにやらが全部ライルに起因している、と思ってしまったわけだ。
悪役令嬢にして転生者であるアリシアが、ゲーム原作通りだと断罪され処刑されてしまう未来に怯えて、ライルに対して拒否反応を示してしまうのも、ライルが元凶と思うのに拍車をかけてしまったわけだ。
ライルが元凶というよりも、それだけライルが好き勝手しても許される環境、それを作り出している背景、つまり後ろで権力を握っている黒幕がいる、みたいな。
実際、アリシアから実質未来予知みたいな話を聞いて、喫緊の問題として父王の事故死なんてのがありましたからね。それも、いざルティアが自ら父王の視察に一緒についていったところ、起こった事故は明らかに意図的なもの。父や同行していた妊娠中の側室であるマリアベルの暗殺を目論んだものである事がわかったわけで。
それに、側室の子であるルティアや兄のロイ王子が王族でありながらかなり粗雑な扱いを受け、ライルからも兄姉でありながら兄弟として見られていない、という状況から見ても、誰が黒幕で誰が元凶なのか、だいたい想像がついた……はずだったんですけれど。

仕事の忙しさなどにかまけてあまり交流できていなかった父親と、改めて親子として親密な交流がはじまり、またマリアベル妃とも仲良くなって母子のような関係となり、蔑ろにされていたロイやルティアの生活環境も父王の知るところとなって改善され、ある意味野放しにされて伸び伸びと王族らしからぬ自由さで生きてきたルティアも、そのバイタリティを王族としての勤めに費やしはじめ、友人となったアリシアと共に色々と出来る範囲で施策を練ったり、国の要職にある人達とも交流を重ね得ていくうちに、この国の抱えている問題点みたいなものがルティアたちの目にも見えてくるわけですな。
放置されていたが故に、そういった国の問題とも縁がなかったルティア。それは大人世代とずっと断絶していた、という意味合いもあり、大人たちと改めて交流を深めていくうちに、自分の両親がどうやって結ばれたのか。それ以前に、親世代の若かりし時代にこの国で何があったのか、という過去の出来事もわかってくるのである。親世代の方がこれ激動じゃね?
正妃リュージュに纏わる真実も想像の埒外にありましたし。いやー、ただ親連中、見事にみんな子育てには失敗してるんですよね。失敗は言い過ぎか、いやライルに関しては失敗と言わざるを得まい。少なくとも、彼はろくでもない環境に置かれていたわけですから。ルティアやロイも、別の方向性でろくでもない環境に置かれていたのは確かで、騎士団長や宰相たちも子どもたちとうまく意思疎通取れていたかというと難しいところ。アリシアのところの侯爵だって、そのままならアリシアとどこか断絶したままだったでしょう。
それぞれの子供達が持っていただろう良質な素質を、決して健やかに伸ばしていけてはいなかったわけだ。でも、親世代の一人ひとりを個人で見ると、能力的にも有能であり人間的にもなるほどこの子らの親だなと思わせてくれる出来た人たちであり、何より同じ難局を乗り越えてきた戦友的な、或いは幼なじみ的な結束が凄く強いんですよね。
いや、一国の各部門の首脳部がこれだけ結束強いってなかなかないんじゃないだろうか。信頼感とお互いの信用も強いものがありましたし。
だからこそ、脇が甘くなっていたというのもあるのでしょうけれど。とかく、横の繋がりが強いくせに目下のそれぞれが掌握しているはずの下部が、全く掌握できていなかった、というのが大きな問題だったんですよね。
これ、結局誰が悪いという悪役がいる話じゃなかったんだよなあ。そりゃ、悪意や欲望のままに振る舞い人間はたくさんいたんですけれど、一人或いは一つの組織によって統一された悪意、企みが動いていたから、それを潰せば万事解決、みたいなシンプルな話じゃなかったんですよね。
大まかに見れば、大貴族たちの既得権益を守ろうという動きが大元にあるんだろうけれど、国王が暗殺されかけるような大事件まで起こっているにも関わらず、その背景がはっきりしないままってかなり怖いですよ。これ、宰相やリュージュ正妃が黒幕だった、という方が話は簡単だったんでしょうけれど。
これは一つ一つ問題を虱潰しに地道に潰していかないといけない、かなりの難事となっていくのではないでしょうか。或いはこれ父王たちが手掛けてきた事業とも言えますし。でも、こうしてルティアたちが表に立つことで、そこらへんの事情の伝達が子供世代と断絶していたのがちゃんとつながったことで、将来までじっくり取り組んでいく課題として引き継いでいけるようになった、とも言えるわけで。
原作のままだと、父王や騎士団長は亡くなってしまい、ロイ兄様も半身不随となってしまうみたいでうけれど、ライル王子が正史よりも何年も早く親の愛を知って本来の聡明な人物に立ち返るきっかけを得て、正史から大きく変わっていくだけのスタートダッシュが切れた。
……そんな希望あふれる一巻の結末だったはずなんですけれど、そうなると冒頭のライル王子による婚約破棄のシーンって一体なんなんだ!? となるんですよね。
この巻の終わり方だととても冒頭のシーンに繋がるとは思えないんだけれど。そもそも、全く冒頭にはつながっていかないのか、或いはどうしてもその冒頭のシーンに至らないといけない紆余曲折が待ち受けているのか。
何れにしても、元気ハツラツ栄養剤でもがぶ飲みしてるんじゃないか、というくらいバイタリティが有り余っているモブ王女ルティアが大人しくしているはずもなく。この子の牽引するこの物語がどうなっていくのか、続き楽しみです。




第二王子のライルが王位継承者にも関わらず我儘の限りを尽くしていたり