【継母の連れ子が元カノだった 10.手を伸ばせれば君がいる】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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再び恋人同士になった結女と水斗は――浮かれていた。一つ屋根の下に恋人がいる新しい日常に!
両親に隠れてイチャつき、「もう少しだけ……独り占めにしたくて。ダメ?」友達にもしばらくは内緒。
秘密の関係を噛みしめる一方、“家族”としてのボーダーを超えられない環境に焦れてもいた。
バレンタイン・ホワイトデーは恋人らしく楽しんで、期末試験を支え合って乗り越えても、お互いにあと数センチ手が伸ばせず……。
「結婚記念日だからね。遅めの新婚旅行に行こうと思うんだ」
ついに訪れる、両親不在の三日間。
でも――自分から誘ったら負けなのでは!? 恥じらいと意地、根比べの行く末は!

ついに付き合い始めた結女と水斗だけど、こうなるといさなとの距離感はどうなってくるのかなあ、と危惧までは行かないまでも疑念みたいなものは感じていたんですよね。
大雑把にいうと、結女は男としての水斗は捕まえたものの、いさなは彼の人生そのものを捕まえたというべき状態で、いさなは遂に本当の意味で失恋したかもしれないけれど、結女もまた水斗のすべてを独占する事は叶わなかったわけだ。
ここでいさなに対して嫉妬に狂うほど結女も拗れていないし、家族を経て恋人になったことで……水斗という人間の恋愛と人生の間の距離感について、受け入れる事でいさなの存在がもう水斗の人生に組み込まれてしまっている事についても、余裕を持って承知了解してはいるものの。
さて、具体的にいさなと水斗の普段からの関係を前にして、恋人になった結女はどれくらいの範囲を不満や嫌気、劣等感や引け目を溜め込まないレベルに出来るのかなあ、と。
……これ、真面目にお世話係二人でやった方がいいんじゃなかろうかw
水斗くんに任せっきりになるより、二人でいさなの面倒を見てた方が一人だけ結女が距離を開けて二人の様子を伺っているよりも変に溜め込まずに済みそうな気がするぞぃ。
そうでなくても、今の所かもしれないけれど、いさなと直接話すことで彼女の特異で独特な…しかし妙にダイレクトに胸に響いてくる、或いは脳を焼いてくるような言動は、色んな意味で敵わんなあと思わず力抜いて笑ってしまう効果がありますもんねえ。

ともあれ、結女の方はほんとこう、家族という関係を経たことで…或いは高校デビューで主体性を自らに植え付けたお陰で、自分に自信を持てるようになった事もあるのかな。色々と余裕というんだろうか、どれだけ浮かれていても慎重と冷静と客観性を持てるようになっているように見える。
この二人、デートしてる最中でも、ああこれ普通の以前みたいな恋人関係だったら気まずくなっちゃうんだろうな、という場面や、気持ちがすれ違ってしまってぎこちなくなっちゃうんだろうなというケース、微量の不満や焦りが溜まっていくんだろうなという所がアチラコチラで散見されるんですよね。
でも、今のこの二人だとそういう場面でも結構ズケズケと率直に言葉にして、でも何てことのない事のように受け流したり。相手の意に沿わないことでも無理を押し通したり意地を張ったりするんじゃなくて、お互いに楽しめる方向に余裕をもって誘導したりしてるんですよね。
不満を溜め込んで我慢したりせず、ぶっちゃけちゃうのも遠慮のない信頼の証とも言えますし、他の人にはしない甘え方とも言えます。そういうラインを、他人じゃない家族だからこそこれまでの月日での様々な出来事を経て、見極められるようになっているとも言えるのではないでしょうか。
この巻で10巻という二桁大台に乗りましたけれど、なんかねー、改めて恋人同士になってのイチャイチャの中にも、これまでの積み重ねを感じさせてくれるものがあるんですよねえ。それが何とも感慨深い。
二人とも、本当になんていうんだろう、家族であり恋人であるという両立した関係をうまく扱えるようになったなあ、と。
これもねえ、先に徹底してもう一度恋人になった際に起こるだろう不具合、そもそも水斗という人間の抱えている恋愛不適合者の部分を洗い出し、話し合った上でちゃんと共有し、その上で恋人としてやっていこう、将来にいたるまで一緒に人生を歩んでいこうという覚悟をしっかりと決めた上での恋人関係リスタートだった故の安定感なのでしょう。
中途半端に勢い任せ、感情任せで恋人になっていたら、どこかで食い違いが生まれてしまっていたでしょう。そういう意味では、今のこの二人を見ている限り、当事者間ではもう問題が起こるようには見えないんですよね。
起こるとするならばやはり外的要因となってくるのでしょう。まず挙げられるのは、当然のごとくいまだ秘密にしているお互いの両親にどう話すか、という問題。
あとは……なんか不穏な空気が流れていた、明日葉院蘭の件かー。

これ、生徒会のメンバー全員がカップルうまく行ってしまったのも、大きく関わってくるんだろうなあ。彼女・蘭だけが一人蚊帳の外になっていまったの、別に誰も悪くはないのだけれど蘭と他の面々と見ている所が、一番に考えている所がステージ違いすぎて、どうにもその事が…というか、蘭だけが空回り、独り相撲、競争相手とも見られていなかった事に傷ついているかもしれないこと。
蘭の理解者、同じ側に立っている人が誰もいないって事なんだよなあ。唯一、結女だけが……かつて、成績一位でないと自分の存在価値ないんじゃないかと不安に押しつぶされそうだたという経験がある結女だけが、一番近しいとも言えるんだろうけど……今、この子恋人できて頭それでいっぱいなのよねえ。ってか、彼女の限らず恋人できて頭それでいっぱいの人しか生徒会にいないという……。

紅会長とジョーくんについては、もしかしたらここだけはうまくいかないんじゃないかという危惧もあったのですが。会長のあの恋愛ベタっぷりは他の追随を許しませんでしたし、ジョーくんのヘタレで自身のなさは筋金入りでしたし、もう少し拗れるかと……少しどころじゃなくメチャクチャ拗れるかと思ったんですが……なんか成就しちゃいましたけど、これはこれで大丈夫なんだろうか。

じわりじわりと着実に前進しているのがあの幼馴染ふたり。これに関してはもう川波小暮の精神的外傷がどれだけ癒えるかに掛かっているのですけれど。暁月のアプローチはもう完全に長期戦でどれだけ時間かかっても構わないという腰の据わりようですし、川波の方は彼の方でもう心情的には完全にヤラレちゃってますからねえ。両思いなのはもう間違いないだけに、あとは時間の問題だろうなあ。それこそが、時間どれだけかかるかこそが問題だった訳ですけれど、なんか拒絶反応着実に緩和されていってるみたいですし。これ、緩和されてるの暁月相手限定だったら、色んな意味でヤバいよなあ(苦笑