徒然雑記 : 魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) １１ ★★★☆

【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) １１】　川口士／美弥月いつかダッシュエックス文庫

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激闘の末にガヌロンを滅ぼしたティグルたちはシャルルの軍を退け、ブリューヌには平和が訪れたかに見えた。
だが、不穏な影は晴れるどころか、その濃さを増していく。大陸全土を強烈な寒波が襲い穀物はかつてない不作となり、諸国はその対策に奔走することとなった。隣国の動向を知るために、ミラはブリューヌへ向かう。
ガヌロンのかつての領地ルテティアで魔物たちの企みを探るティグルとリュディたちに忍び寄る魔の手。ついにアーケンの使徒と魔物たちは互いの真の企みを明らかにする。
そして暗く深き祭壇で魔弾の王を待ち受ける神の正体とは――

ミラに引き続き、ついにリュディとも結ばれるティグル。
後発新キャラながら、見事にミラと並ぶダブルヒロインの一角になりましたよねえ。元気ハツラツ天真爛漫愛嬌タップリの幼馴染って、もう最強じゃないですか？
おまけに健康的なエロティシズムにも溢れてますし。積極的でえっちな幼馴染って最強じゃないですか？
わりとグイグイと来る押しの強さなのに、意外とミラに対しては終始配慮というか、変に押し退けようとしたり張り合ったりする様子もなく、むしろティグル相手並みにグイグイとミラの懐に入り込んで懐いてみせていましたしね。
久々に再会して真っ先にミラに抱き着いてきたりとか、こんな風に無邪気に慕ってこられたらミラだって、お？可愛いじゃん？　と思っちゃいますよ。上手いこと邪魔に思われたり嫌がられるような振る舞いを避けてるんですよねえ。実は立場的にはリュディの方が有利な立ち位置でもありましたし、ミラにマウント取る機会はいくらでもあったと思うのですが、この娘常にリュディを立ててたからなあ。
ティグルがミラに対しての好意を明確にしていた、というのもあるのでしょうけれど。
どこまで意図していたかはわかりませんけれど、ティグルの性格を考えれば変に張り合っても遠ざけられてしまうだけですからね。そういう意味では、リュディはとても強かに立ち回ったと言えます。
レギン王女が、思いっきりティグルに避けられるようになってしまったのを見ると尚更ねえ。何気にこれ、リュディが王女をミラとの共通の敵に仕立て上げて自分のポディション確保した、というのもあるんですけれどｗ
ティグルと添い遂げるためなら、自分が陰に回ることも厭わなかったというのも強い所でしょう。どうしても領地や立場の事があって、なかなか結ばれるための条件が整わなかったティグルとミラ。お互い、そこが譲れない部分だったために妥結点をすり合わせるために色々苦労することになったわけです。ティグルが活躍しすぎて出世しすぎてしまい、余計にややこしい事になったというのもありますし。二人共、迷い悩みながら探り探りしてたんですよねえ。
一方でリュディは、少なくとも表向きには悩む要素を一切見せなかった。ティグルと結ばれるための最適を常に選び続けた。この迷いのなさ、一途さは強さですよね。引いては、公爵家の後継者としての立場をも引き払う覚悟をサラッと見せたわけですし。それも、ミラの邪魔にならないように。
そりゃあ、ミラももう降参ですよ。こうも憎からず思えてしまうように振る舞われたらねえ。
ティグルとミラの二人の好感度を乱獲しまくった成果がこれである。
何気に戦姫でもなく、新キャラという一種の軽さがあるリュディって場合によっては退場もあり得るという危険性をはらんでいましたからね。常に心配がつきまとっていたんですよね。瀬尾つかささんの方の手掛けている別シリーズでは実際あった話ですし。
とはいえ、ここまで来たら安心でしょう。安心した。

さて、波乱の人間関係の方はどうやら落ち着きそうなものの、一方の世界情勢はというと神の降臨の予兆か、不自然なくらいの作物の生育不良や狩猟の対象となる動物の消失、山の恵とも言うべき植物も消え去り、飢饉の危機がブリューヌだけじゃなく世界的に広がってしまっている。
３つの神格を持つというティル・ナ・ファの復活、それだけじゃなく外の神アーケンの復活を目論む輩も暗躍し、人類サイドとの三つ巴の争いに。
なんか別の世界線、みたいな話も持ち上がってきましたね。それを認識できているのは、魔物たちくらいで、ティグルたち人間はさすがに聞いても訳解んないだろうけど。それでも、ティグルが絶望のあまり災厄としての魔弾の王として覚醒してしまう世界もあるみたいだけど。
旧本作や瀬尾さんの作品なんかも、ちゃんと別の世界の話として成り立っている事になるのか。
しかし、この世界で一番運命変わったのはやっぱりザイアンなんでしょうなあ。毎回、なんだかんだと活躍してるしなあ。今回だって飛竜の上でしがみついていただけ、とは言え、地竜の大群の進行を一時的に足止めしてみせたのは間違いない武勲ですし。
ほんと、一体何が彼の運命を変えたんでしょうかね。やっぱりアルエットなんでしょうかね。

今回襲ってきた竜使いドレカヴァクは対魔物戦では一番ヤバかったんじゃないだろうか。単に一体の魔物の強さなら他の魔物も強いやつがなんぼでもイたけれど、こいつは大量の竜を伴って襲ってきましたからね。一体ですらマトモに立ち向かう事が困難な竜を、軍勢というほどの数を揃えて襲ってきたわけですから。
最後の敵となるのは、やはりミラの宿敵となるズメイになるのか。ただ、ドレカヴァクにしてもズメイにしても、人類の敵というのは変わらないものの、今までの魔物と違って人間という存在を大きく意識するようになっている、というのは何か大きな変化の予兆なんでしょうか。ここで魔物が滅びても、いずれ復活した時ここで得た変化を引き継いでいるとしたら、結構後世への影響は大きそうなんだけど。まあ、今の登場人物たちがみんな現世から居なくなるほどの未来だから、どうしようもないんだけれど。

シャルルさんは、この人ひとりになってさらに自由になってるなあｗ
復活してからの王としての振る舞いは、あれガヌロンへの義理と友誼ゆえで、ほんとはこんな風に一人の剣士として好き勝手伸び伸びとやりたいことやりたかったんじゃないだろうか。

世界的な食糧危機を前に、自国の生存をかけて略奪のために動き出したムネジオル軍。戦争だ、領土を奪うためじゃない、生き残るための大戦争だ。相手がガチのクレイシュ大王というのが余計に恐ろしい。こと戦争にかけてはあらゆるシリーズ通して、このクレイシュが最強格だもんなあ。
こっちもジスタートとブリューヌ大連合、しかもティナルディエ公爵も全面的に協力してくれそうだし、味方サイドも陣営のスケールは十分なんだが。
次が最終巻ですか。既に本は確保しているので、近いうちに。