【創成魔法の再現者 5.新星の玉座 ‐小さな星の魔女‐】  みわもひ/花ヶ田 オーバーラップ文庫

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もっと褒めても構いませんことよ? 師匠(せんせい)!

王位継承争いの本格化を受け、エルメスはユルゲンが擁立する第三王女リリアーナの家庭教師を命じられる。
早速リリアーナの元に赴くが、実は彼女はエルメスの師匠・ローズの血族で!?
ローズに似て破天荒なリリアーナはエルメスの教えを拒絶。
家庭教師になる条件として“鬼ごっこ”を持ちかける。
一瞬で片が付くかと思いきや、リリアーナはエルメスを驚愕させる才能の持ち主で――!?
リリアーナを導くと決めたエルメスは“鬼ごっこ”をクリアし、陰謀渦巻く王位継承争いに身を投じていく。
そんな折、王国北部で反乱が発生。
国王の名代として鎮圧へ向かうことになるが、敵は魔法学園のクラスメイト・ニィナの一族で……!?

う……ははははは、いやいやちょっとちょっと。なんかとんでもない子出てきちゃったんですけど!?
なに?この……なに? これでもか、というくらいエルメスに刺さる要素を盛りに盛った純エルメス特攻ヒロインは。
自分と同じ血統魔法の発現しなかった無適正者であり、しかし繊細な魔力操作を得意とする魔法の天才であり、止めにエルメスの尊敬し敬愛する師匠ローズの血族で、めっちゃ容姿も似通っていて性格も結構似ているミニローズという第三王女リリアーナさま。
そんな彼女の家庭教師を頼まれたエルメスとしたら、もうこれ二人にとっての運命でしょ、というくらいの出会いですよ。かつてローズによって創成魔法という希望を与えられたエルメスが、ローズそっくりのリリアーナにローズから教わった創成魔法を教える、というこの流れ。エルメスの感慨たるや如何ばかりか。
……カチュアさまがヤベえ、なにこれやべえ、とばかりに青くなるのもわかりますわー。いや、これさあ、リリアーナの家庭教師を依頼したのカチュアのお父さんなわけですけれど、お父さん的にはどうなんでしょうね。かなりの確度で娘の婿に迎えようと思っている青年に、ド級に刺さりまくる少女を紹介するというその心境は。ユルゲンも、ローズとは親しいんだからリリアーナがどれだけローズそっくりかというのわかってるでしょうに。そしてローズとエルメスのただの師弟というには親密すぎるくらいのベタベタな関係も知っているでしょうに。
まあ王家や国を取り巻く情勢がそういう私事に拘っている場合じゃない、ってのもあるでしょうけれど。
一連の血統魔法至上主義によって凄まじい差別意識を下地にしている国の有り様の歪さを、これまでの巻で描いてきた本編ですけれど、王位継承戦はそれまで積もり積もって風船のように膨れ上がったた歪みが、一気に破裂するその悪意の針の一差しに利用されてしまうのだ。
こうしてみると、この国の価値観の歪みもヒドいはヒドいんだけれど、後ろで暗躍している奴らはそれを助長させて他人に対する悪意や害意を余計に悪化させているようにしか見えないんだよなあ。革命勢力とかそういう風な組織にはどうしても見えない。
そもそも、嘘や詐術で人を騙したり唆したりして道を踏み外させている時点で邪悪そのものなんだよなあ。王位継承戦では対立することになるリリアーナの兄姉たちが、本来は決して悪い人物には見えない人たちである事が尚更に暗躍者たちの悪意を強く感じさせるんですよね。
それが、リリアーナというまだ幼い少女に戦う覚悟を決めさせる要因になったとしても、小さい女の子を泣かせている時点でどうやったって悪者なんだよなあ。
しかし、いずれにせよユルゲン公爵は二手も三手も相手に先手を取らせてしまった、というのは間違いない。まあ仕方ないですよね、事実上エルメスが彼らの前に戻ってきた時点で既に裏で動いている奴らの計画はどうしようもない所まで進んでいたみたいですし。
それに、思いの外エルメスが苦戦する。実力では未だに作中の登場人物の中でも突出しているはずなんだけれど、それでも上手いことその力を最善の形で発揮できる環境を封じられて、有象無象相手にも苦戦してしまっていますしね。それに敵組織の幹部であるラプラスには負けはしないけれど勝ちきれない上に、ついには真っ向から実力で抗しきれない相手まで出てくる始末。これ、シリーズ始まった当初、エルメスだけが強いという状況では早々に詰みだったんでしょうね。
カチュアの覚醒、そして学校に通うことで落ちこぼれ達全員を底上げできた上に凡人枠から這い上がってきたアルバートのような良識派が脇を固めてくれるという、これまでに作り上げてきた仲間の層の厚さがかろうじて首の皮一枚繋いでくれる結果を導いてくれている。
このあたり、ユルゲンの導きが効いてるんですよねえ。エルメスの人間性の偏りを、公爵がほんと上手いこと育て直してくれたと言って良い。これはローズを孤立させてしまったユルゲンの後悔の産物でもあるんだろうけれど、それが巡り巡ってかつてローズを追放させた悪意の主の魔の手から、エルメスを救う一手にもなってるんですよねえ。地味にカチュアパパ、MVPだよなあこれ。
また、エルメスがリリアーナに創成魔法を教えた事はある意味特別な魔法としてエルメスとローズの独占する強力な武器に過ぎなかったものが、全く別の顔をみせはじめた回でもある。
創成魔法に込められた願いというのは最初から一貫していて、例えばエルメスが兄にこれを教えて彼に可能性を掴む余地を与えたように、それを広めていくという考えはエルメスの中にもあったはずなんだけれど、どうしても発想が固着している所があったんですよね。今までそのマトモな使い手が開発者であるローズとその教えを直接受けたエルメスしかいなかったから仕方ないのもあるのですけれど。
でも、リリアーナが創成魔法を教えてもらいながら、その使い方についてエルメスのそれを踏襲する事にこだわらずに、自由な発想でこの魔法に込められていた可能性を広げてみせたように。そして、この魔法があくまでツールにすぎない。そして特別な誰かではない、特別なものを何も持たない誰にでも魔法を与えてくれるツールである、というのを思い出させてくれるのである。
ローズは元より、エルメスだって血統魔法云々がわかるまでは天才と称されたように魔法に関しては才能の塊だった。リリアーナも魔力操作にかけては余人に追随を許さぬ天性の才がある。
エルメスは、この魔法を使うことの難しさも相まって、どうしても頭のどこかでこれは特別な魔法の才がないと使いこなせないものだ、という固定観念がどこかにあったんじゃないだろうか。
そういう諸々を根底から覆してみせたリリアーナは、ほんと存在感を示しまくってる。カチュアさん、マジでヤバいですよ。肝心の撤退戦でも、対軍戦では一番威力を発揮しそうな血統魔法の持ち主にも関わらず、あんまり目立った活躍の場を与えてもらえなくてこの巻、リリアーナ相手に焦ってるしかなかったカチュアさんに巻き返しのチャンスはあるんだろうか。マジで頑張れw
なんか、次あたりはニィナあたりが沢山ヒロインポイント持っていきそうな流れになってますし、マジで頑張れw