【ロクでなし魔術講師と追想日誌 10】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

その日、グレンは彼女の墓地に花束を捧げていた。その脳裏には彼女――セラを喪ったあの日の記憶が鮮やかに蘇っていた。ジャティスが引き起こした『天使の塵』事件。訪れた別離の瞬間にセラが遺した言葉は――




【セリカの南海大冒険】

またぞろセリカのワガママで、カニを取りに南の海へと航海の旅に出ることになったグレンとシスティたち三人娘。
暇かよ!
いや、君たち学生と先生なんだからそんな暇があるんかい! と言いたいがここらへんの時空はギャグ時空なので如何ともし難い。
でも最近この短編集みたいなのやってるのってもうこのロクでなしシリーズとあと何作かくらいなんじゃないだろうか。少なくとも富士見ファンタジア文庫だけですよね。いや、前から富士見ファンタジア文庫くらいだったか、やってたの。スニーカーと電撃でちょろっとやってたくらいですよね。
中々このシリアスな本編と同じキャラクターでひたすらギャグでやるノリってのは、登場人物の新たな側面が見えてきて面白いんですけれど、よほど人気シリーズでもならないと今どき1巻や2巻で打ち切りになってしまう所ではやるの難しいんだろうなあ。
水着美女と美少女たちのクルージングで海賊船を釣って、そのまま船強奪。セリカが呼んだ竜牙兵で船を動かしてたらまんま幽霊船みたいになってたあたりは大変好きですわ。
本物の幽霊船が現れて、襲いかかったら相手も骸骨ばかりがうごめいている船で、お互い一緒に「幽霊船だぁぁ!」と悲鳴がシンクロしてるあたりとか、うんそういうノリ大好きです。



【家なき魔術師】

なんでか短編集の方だとグレンと同じくらいの頻度で不幸に見舞われ不憫なことになる事の多いイヴ先生の悲しいホームレス生活。
いや、マジでイヴってグレンと同じレベルの不幸属性持ちじゃないですか? こんなん、もしイヴがグレンとくっついた場合、不幸属性が重なって二乗となってさらに酷いことになりかねない気がするんですけれどw
おまけにイブの方はなにかと生き汚くてしぶといし、世知に通じているグレンと違って、元々お嬢さまだから世間知らずだし結構生活能力ないし、得意分野以外はポンコツなのに意地っ張りのツンデレだからここぞという時にやらかすし……わりとグレン先生よりダメな所多いんだよなあ。
何気にそういう所がグレンの面倒見良い所を刺激してしまう、というのもあるんでしょうけれど。怠惰でサボり魔なグレンだけど、こいつはそもそもダメ人間のセリカによって育てられたせいもあってか、わりとポンコツダメ人間を前にすると勤勉にお世話しだす傾向があるだけに。
今回も、熱心にイヴの家探し手伝ってますもんね。いや、本気で熱心だからさ、てっきりいつものグレンみたいに変な儲け話とか企んで裏でコソコソこすい事やらかしていて、最後にバレて痛い目見る流れかと思ったら……今回、本当に全く何にもコソコソやってなくて、一から十まで本気でイヴのために家探しやってたんですよね。なんだかんだ特務分室時代はお世話になったから、今度は自分が面倒見てやらないと、と意気込んでたんですよ。まじかー? 下心なしで!? グレン先生が!?
……これ、マジでシスティとルミアの心配通りじゃないですけれど、すでに決着ついてません? ガチ目にちょっとラブ入ってる結末になってるんですけどw


【熱き青春の拳闘大会】

目先の金儲けに釣られて何事かはじめてしまうのがいつものグレン先生なのですけれど、そのまま痛い目見るパターンと、途中から金儲けを忘れて眼の前のことに夢中になっちゃうパターンの二通りがグレンの場合散見されるのですけれど、今回は後者の方だったなあ。
しかも、今回は実際にボクシング大会で優勝して賞金までもらっているにも関わらず、青春の汗に心の欲を洗い流されたのか全部相手のために吐き出している始末。ちょっとは貰っておきなさいよ、と思わないでもないのですけれど。
でも、グレンがキレイなグレンをやっていると代わりに汚れを引き受けるのがシスティとイヴである。いつも叱り役説教役のくせにこの二人、けっこう欲望に負けてグレンを怒れんだろうという振る舞いやらかすケース多いよなあw
というわけで、グレンがひたすら清い汗を流すのを出汁に、がっぽり儲ける心の汚い白猫とイヴでありました。罪悪感にのたうちまわりながらも、貰うものはちゃんと貰っている二人であるw 多少グレンに還元してるけれど、これ儲けた金額想像するとだいぶはした金ですよねw


【Lost last world】

グレンがついに特務分室執行官を辞するに至った事件。相棒でありそのままならきっと恋人になっただろう女性セラを喪った、ジャティスによる帝都襲撃事件。今まで語られることのなかったそれが、ついに描かれる。つまるところ、本編もそれだけクライマックスってことなんですよね。丁度次でジャティス再来って所ですし。
ってか、想像以上に特務分室大壊滅してたんですが。ってか、この時点まで特務分室の執行官ってそこそこ人数揃ってたんですね。そして、この事件で、ジャティスによってこんなに沢山セラ以外にも殉職してたの? 
しかも、同じ職場の仲間として普通にその面々とグレンって親交あったみたいなんですよね。そりゃセラやアルベルトほど近くはないかもしれないですけれど、他の執行官たちも人格的に別に問題があった様子でもなく普通に仲間として同僚として親しい付き合いがあったみたいですし。
それがこんな軒並み殺されるって。止めに、正義の味方の魔法使いとしてやっていく自信を失い、それでもせめて手の届く所にいる大事な人だけでも守れる人間になれれば、と崖っぷちで踏みとどまったところで、そのセラを守りきれずに喪う羽目になる。
よくまあ廃人にならずに1年の引きこもりで済んだなあ、とこうしてみると思ってしまいます。
それ以上に、執行官の人員が半減どころか7割減くらいいなくなっちゃった特務分室、残されたアルベルトたち、その後よくやってこれたよなあ。それ以前の段階で人員が回っていなくて酷いことになってたのに。責任者のイヴが若干頭おかしくなってたのもちょっとわからないでもないですわ。
自業自得、と言ってしまうには可哀想な境遇でありましたし。でも、イグナイト卿明らかに判断ミスしているにも関わらず責任問題にもならないって、酷い話だよなあこれ。ワザとだったとしても、あからさまにイヴの判断に介入して間違った行動を指示しているわけですから。
もうイグナイト卿については片がついているのですけれど、こういうの見せられるとまだ足りんと思っちゃうよなあ。