【断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す 4】 楢山幕府/えびすし  TOブックス

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娼館帰りの貴族が殺害された。公爵令嬢・クラウディアはその黒幕として、自分と同じ王太子の婚約者候補である令嬢・ウエンディから糾弾されてしまう。犯罪ギルドを秘密裏に牛耳っていることを知られてしまったのだ。冤罪を晴らそうと独自の調査に乗り出すも、隣国パルテとの戦争を回避する名目で、妖艶な美女――新たな候補・ニアミリアが来国。第二の事件が発生する中、正妃の座を巡って二人の令嬢と対峙を余儀なくされることに! 本当の“悪女”は誰か? 三人の女の思惑が交錯する時、全てを決する仮装舞踏会の幕が上がる! 「喜んでなりますわ、あなたの敵に」 元娼婦の令嬢が悪で正義を貫く、痛快ラブファンタジー!


四人いるシルヴェスターの婚約者候補のうち、唯一クラウディアと関わりを持たず、しかし対抗馬として積極的に活動するでもなく、沈黙を守り続けていたウェンディ嬢が、ついに動き出した。
それも、前回クラウディアが傘下に収めた犯罪結社を糾弾のネタとして。
これまで、他の婚約者候補の子たちは親友枠と妹枠に収まっていて、前世では見事にクラウディアを陥れた異母妹はというと、ちゃんと向き合ってみるとライバル役としては役者不足も良い所の雑魚だったので、おっこれはとうとう女性でクラウディアと堂々と渡り合おうというライバル役がついに立ち上がったのか、と微量のワクワク感も伴いながらウェンディの様子を伺ったのですが……。
あかん、これはあからさまに思い込みが強すぎて思考や目にフィルターが掛かっちゃっているタイプだ、とわかってしまう暴走っぷり。
根拠を示せないまま、ひたすらクラウディアは悪女だ悪女だと糾弾するばかりで、既に社交界にしっかりとした立場を築いているクラウディアをそんな風に避難しても支持は集まらないし、ウェンディの方が胡乱な目で見られてしまうばかり。
ただ、普通の人が知るものではない、クラウディアが犯罪結社を統制する立場にたった事を何故か普通の令嬢であるウェンディが知っているのは不自然だし、これまでウェンディ嬢の評判は理知的で大人しく婚約者候補としてもあまり積極的ではなかったし、クラウディアに対しても派閥の立場上あまり関わりを持とうとしていなかったものの、個人としては完璧な令嬢として謳われるクラウディアに対して好意的ですらあった、という話だったのに。
明らかに異様な変貌ではあったんですよね。人格的にも余裕を失って、周囲の人間にも厳しく当たるようになってしまったようですし。
というわけで、あからさまに何者かの意図が彼女の背後に見え隠れするわけである。
とはいえ、今更こんなウェンディの拙い糾弾で揺るぐようなクラウディアの立ち位置ではないだけに、なんだろうこれ、と思いきや彼女の派手な動きはいわば陽動とか目くらましみたいなもので、本命は別の方向からのものだったんですね。

にしてもこの黒幕……ナイジェル枢機卿ですね。彼のやり方はほんとえげつないというか、人の命や感情、人生そのものを弄ぶようなものばかりでホント胸糞が悪い。
この巻だけでも、どれだけの人の人生が踏みにじられたか。
もろに結婚詐欺みたいなのに引っ掛けられ、恋愛感情と正義感を沸騰させられて良いように動かされた挙げ句に、暴走させられ愛する人のため、国家のため、正義のためという熱に思考を溶かし、ついには犯罪へと走らせてしまうこの悪行。
促成でもこれですから、長い時間をかけて人生を弄ばれ続けたニナのそれなんて、もう筆舌に尽くしがたい邪悪さですよ。人々を扇動して、小さな火種を大火事にして民衆の感情から戦争の危機を引き起こすあたり、やりたい放題なんですよね。これが自身の野望とか利益を叶え求めるためならまだ筋道というのがあるんでしょうけれど、ナイジェルの欲望ってそういう所にはなさそうだからなあ。余計にわざと人を苦しめる謀を何重にも仕掛けているみたいなんですよね。

今回、最後にシルやクラウディアが先手を取れたのは、二人が積極的に前線に脚を運んで実際に現場を見て、情報を手に入れたフットワークの軽さが要因だろうし、逆にナイジェル枢機卿を王国から追放することで、現場から物理的に距離を遠ざけることで最新情報の入手や指示命令の伝達までにブランクがあったから、というのが大きかったみたいですから、確かにナイジェル枢機卿を直接動きづらい奥向に追いやれたのは間違いではないはずなのですが。
逆に言うと、教会の最深部に引っ込んでしまったということで直接彼を止めることの出来ない安全地帯に行かれてしまったという事でもあり、こうしてナイジェルが長い手で持って幾つもの謀略を仕掛けてきて、何人もの人間が犠牲になっているのを見せられるとねえ。
あの時、ナイジェル枢機卿がまさに目の前に居た時、手の届く間に強硬手段で討ち果たしてしまうのも一つの手段だったんじゃないか、と思えてくる。死人に口なし。犯罪結社の連中を味方につけてもいたわけですから、シルの手のうちにあるだろう影とも協力して、人知れず始末、とかしてしまっても良かったんじゃないだろうか。ナイジェル枢機卿の嫌らしさからして、そういう手段を取られた時の対抗策なんかも当然準備してそうではあるんだけれど、それでもシルは理性を働かせずに怒りのまま動いてもよかったんじゃ、ってね。これだけ悪意を持って色々と仕掛けられてくると、ほんとそう思ってしまいます。
ウェンディは、捕らえられた挙げ句に結局自分が騙されていたと真実を知らされてしまうのですけれど……いやこれはかなり残酷な仕置じゃないですか? クラウディアはウェンディが現実を受け止めて、それでももう一度立ち直ることを願っていましたけれど、ただ騙されたどころじゃない、人まで殺めてしまったわけですしね。クラウディアみたいに、巻き戻ってやり直せるわけでもない。
貴族として破滅し、家族も道連れに没落させてしまい、信じた愛は偽物で、誓った正義はむしろ悪逆でしかなかった。これはもう、あかんと思うけどなあ。
一方で、新たに婚約者候補として隣国から送り込まれてきた、そして枢機卿の間者であったニナは自身だけではなく近習であり監視者であり師であったダートンが共に裏切ってくれたお陰で、辛うじてクラウディアたちに助けを求める事が出来て、彼女たちの陣営に加わることで生き残る事ができました。長きに渡ってナイジェルの仕込み間者として働いてきた、人生を弄ばれ続けたニナはあの枢機卿の手練手管を間近で見続け、味わい続けた経験者、ということでナイジェルへの恨み骨髄ということもあり、なかなか頼りになりそう。
しかし、ダートンさんだいぶお歳を召したイケオジ、というか初老のロマンスグレイのイケジジ? ということで相当の年の差カップルになってて、なんかこう……萌える!