【学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録】 峰守 ひろかず/カズアキ   メディアワークス文庫

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『絶対城先輩の妖怪学講座』の峰守ひろかず、最新作!

北鎌倉に建つアンティーク博物館に、その人はいる。眉目秀麗、博覧強記、慇懃無礼。博物館界のプリンスと呼ばれる名物学芸員・西紋寺唱真の実態は――呪いの専門家。とりわけ「実践的呪術」を追求し蒐集する、変人だ。
運の悪い大学生・宇河琴美は、西紋寺のもとで実習を受けることに。だが、実習内容は呪いにまつわるものばかり。しかも怪しい事件が次々と持ち込まれ――。憧れの学芸員資格取得のため、西紋寺の実習生兼助手(?)として呪術の謎と怪事件に挑む!

呪いや祟りでお困りの方は、当館へ。「専門家」がご対応いたします。
北鎌倉の博物館に持ち込まれる呪いの奇奇怪怪を、天才学芸員が華麗に解き明かす伝奇ミステリ!

以前の作品の絶対城先輩も尊大っぽい人だったけれど、あの人は後からどんどんと可愛らしい部分が見えてきて……うん、ほんと可愛い男の人だったんですよね。
今回の西紋寺先生は、ガチで口が悪いですね。いや、そこまで言わんでも、というようなあげつらいをするのですけれど、そういう口をきくのはある意味身内認定した相手だけなのか。むしろ他人に対しては慇懃な態度を徹底していますしね。
もっとも、琴美に対して最初からかなり辛辣な口の利き方をしていたのは、学芸員の実習生としてお客扱いせずに遠慮なしでバシバシ行こうと決めていたからなんでしょうけれど。それでメゲて逃げ出したらそれっきり、というくらいのつもりで。
いやー、多少なりとも気を遣ってたら初っ端からいきなり丑の刻参りの格好させて曰くありの神社で実際藁人形の釘打ちなんかさせないですってw
とはいえ、ここでの諸々の琴美の対応と西紋寺先生の辛辣な物言いに対しても大して堪えた様子も見せない所か割りと言いたい事は遠慮なくズケズケと言ってくるタフな性格を目の当たりにしたことで、西紋寺先生も対応を変えて……いや、全然変えてきてないよな。むしろ、余計に遠慮がなくなったというべきか。
元々、自他共に認める運の悪さで日々貧乏くじを引き続ける人生だった琴美さん。でも、それで性格歪んだり陰気になったりネガティブ思考になったり、という方向に拗らせずに、ああもう仕方ないなあと諦め気味ではあるんだけれど自分の運の悪さを割り切って、仕方ないから頑張ろう、となってるんですよね、この子。いや、なかなかこうもメゲずにため息つきながらでも立ち止まらずに進み続けられているの、なんだかんだ凄いですよね。図太いというかタフというか、これも一つの前向きさというものなんじゃないでしょうか。
彼女の運の悪さについては、何らかのオカルトとか超常現象的な要素でも介在しているのか、とも思いましたけれど、今回に関しては少なくともそっちの可能性については言及されたりはしませんでしたね。
そもそも、呪術にまつわるものを積極的に蒐集したり、呪詛だの何だのの話があればクビを突っ込みにいくとびっきりの呪術マニアであるところの西紋寺先生ですけれど、基本的なスタンスは呪術には効果がない、ですからね。
その効果がない、という言葉にも相応の呪術というものに関する意味合いが込められているのですが、ここで語られる呪詛だの呪術だのというのは概ね、歴史上に存在した実物であり、文化史地域郷土史の中に埋もれている遺構でもあり、場合によっては現代にも引き継がれているものである。かと言って、それらが超常現象を伴うものであったり本物のオカルト要素が介在しているものとは言い難いものが大半なんですよね。
その歴史的意味合いや文化史における位置づけ、かつてそれらの呪術がどのような思惑をもって使用されていたのか、などが現代の今に実際に起こった様々な事件や出来事を通じて見出し、解析し、解体して詳らかにしていく。そうしながら、それらの事件にまつわる人間模様にも、西紋寺先生や琴美がアプローチしていく。ちょっとしたミステリー要素もある各章のお話、色々と面白かったです。
完全に沼にクビまでどっぷり浸かった、というか頭からダイブしている系統のマニアである所の西紋寺先生。それでいて、口も悪いし性格もアレなんだけれど、呪術や呪物、それらにまつわる歴史や文化、古からの人の想いに対してはとても誠実で真摯である姿に、アレな部分がどうだろうとあんまり堪えない琴美は、こいつーと思いながらも将来目指す学芸員として尊敬の念を深めていくんですよね。性格はアレなんだけど、そしてヤバい系のオタクでマニアなんだけど。
それこそ、本物の呪術があるのなら是非自分にかけて欲しい、ガチの呪詛を浴びてみたい、と公言して憚らない人ですからね。そういうセリフをウットリと陶酔したみたいな顔で言いますからね。実際ヤバいです。
しかし、彼がそれだけ呪術というものにハマってしまった理由はちゃんと存在し、そこにはどうやら「本物」の存在が介在してるっぽいんですよね。彼は、その「本物」を。かつて自分が体験したその痕跡を、ここ「北鎌倉」という地でフィールドワークを重ねながら探し求めているのである。
そう、本物が存在するのかー! このあたりのオカルトの刺し込み方のエッセンスというか、バランスというか塩梅がまたイイんですよね。
琴美の、漠然と本質を掴むセンスも、なかなか面白いタイミングというか深度で問題や事件の解決にいたる鍵の一つになったりして、西紋寺先生も一目置くようになり……いや、そういうセンスも評価してますけれど、それ以上に琴美に関してはあのアグレッシブさとバイタリティをこそ見込んだんだろうなあ。余計にこき使われる要因になってる気もしますがw
まあ琴美も、思いもよらぬ体験だけでなく学芸員として得難い勉強をさせて貰っているわけですし、面白いベクトルからの人脈というかコネみたいなものも、西紋寺先生を通じてゲットしていますし、なかなかwin−winな関係になっていってるんじゃないでしょうか。でなかったら、西紋寺先生も実習終わったらはいさよなら、で終わらせずにバイトのお誘いとかしませんでしょうしねえ。