【田中家、転生する。5】 猪口/kaworu ドラゴンノベルス

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皇国に蔓延るオワタを一掃し、休暇を満喫しすぎた田中家一同。
王国は既に新学期に突入し、三兄弟は大遅刻決定。
いざ王国に戻ってみれば、学園は聖女に沸き、隠し子疑惑に国王は泣き、貴族たちはこぞって帝国商人にカモられ……あれ? 休んでる間に問題だらけに!?
仕舞いにはエマを狙う不穏な影まで現れ……これは田中家、久々の大ピンチです!

ええ!? これは一体どういう事なの!?

皇国の危機を救うため、というよりもかの国に存在した和食文化のために一家揃って海外出張していたエマたちスチュワート家一同。
まあお米に味噌醤油、そして天然温泉と危機を救ったあともグズグズと帰るのを延長に延長を重ねたお陰で、王国の社交シーズンは全部キャンセルしてしまうわ、学院の新学期も完全遅刻してしまうわ。
と、そんなこんなで彼らが帰ってこないうちに、王国では教会の神託によって聖女認定されたフアナという少女が現れ、急速に影響力を広げていたのです。
と、このフアナという少女……少女? 少女が問題で。
取り敢えず、エマ達が直接対面するまでは帝国の送り込んできたエージェントで、今となっては表立って大々的にエマと対立しようという同世代のご令嬢も真ヒロインも存在しない中でとうとう対抗馬となる悪役令嬢、あるいは敵役聖女? に該当するキャラクターが登場したか、くらいの認識だったんですよね。
とはいえ帝国がついに本格的に介入してきたわけですし、そのフアナの及ぼしている影響力もどうも魅了や暗示といった精神に影響を及ぼす系の術のようで、これはこれで面倒だよなあ。
でもエマ達がいない現段階でも、どうもフアナの魅了は予定通りの効力を発揮していないようで、これエマたちが直接対峙したら恐るに足らずだよなあ、くらいに思ってたんですよねえ。
ところが、実際にエマとゲオルグたち兄弟がそのフアナの姿を見た途端、激震が走ったわけです。

いやいやいや、どういうことどういうこと?
その聖女フアナがなんと、エマの前世である田中港そのままの容姿をしていた。うん、これは驚きだ。驚き、驚愕の展開ではありますけれど、ついにエマたち田中家の面々がどうして一家揃って異世界に生まれ変わってしまったのか。何らかの存在の思惑、或いは悪意があったっぽいのは猫さんたちが前世の日本の頃から港たち一家を瘴気を振りまく何者かから守ってくれていた、という話があっただけに、忘れていたけれど忘れていたんだけれど、そう言えば偶然自然災害で全滅してしまったけれど偶々一緒に転生しちゃったよ、という偶然の産物ではなかったんだよなあ、くらいの意識はあったわけです。
だから、遂にその田中家を転生させた、或いは転生する原因に為った悪意の存在がついに介入をはじめたのか。物語の根幹の部分が動きだしたのか。と想像するに足る展開ではあったのですけれど。

……いや待って。待って。そのフアナの姿が港の姿だった、というのは良いとして、港が死んだ時そのままの姿、というのはちょっと意味がわからないぞ!?
作中でも兄弟たちが阿鼻叫喚のパニックに陥ってましたけれど、死んだときの港ってアラフォーのオバちゃんだぞ? 今のエマたちより一回り以上年上だったんだぞ? そのおばちゃんが……エマたちの通う学院の制服着て女学生として振る舞っているって。いやおかしいでしょ!?
実際おかしいんですよ。国王陛下含めて、誰もがフアナの事を黒髪の娘、として認識している。年増っぽい女性、とは誰も一言も表現してない。
ただフアナの魅了にかかっていないっぽい人達は、フアナをもてはやす人達の聖女を褒め称える言葉に首を傾げて、別に美人じゃない普通の顔だけど、みたいな事は言ってるんですよね。
ただ、もう子供どころか孫居てもおかしくないぞって歳の女の人が制服着てるんですけど!?という強烈な違和感は誰も抱いていないようなんですよね。
あるいは、暗示みたいなので周囲の人間には若くみえるように印象操作をしていて、田中家の面々にだけは全く通じていない、という可能性もあるんだけれど。或いは、田中家の面々だけフアナの姿が港に見えている、というパターンもあるわけだ。
エマが見たフアナの姿が、本当に前世で死ぬ直前の姿。美容室で整えた髪の色とかまで一緒、というのはそれはそれでおかしいですし。もしフアナが港の肉体を与えられた、或いは港の体で産まれてきた存在だったとしても、その姿で何年も育って活動していたら、その見た目が港の死んだときの姿そのままになるかというと……ちょっと考えづらいですしね。
それに、そもそもフアナが田中家の人々のことについて一切何も知らない様子だということ。これだけスチュワート家の前世に関わりがありそうな人物でありながら、本当に田中家だの生まれ変わりだの猫だのなんだの、という話は本当に全く知らなさそうなんですよね。エマたちがどういう人間なのかすら関知していない。単に帝国の王国浸透に邪魔になってきている連中、というくらいの認識ですし。
あくまで、彼女自身はただの帝国の工作員、という感じしかしてこない。でもそれだと、彼女が港の姿をしている理由が本当にさっぱりわからないんですよねえ。
フアナ本人に自分が異世界の女の姿をしている、田中港という女の肉体を持っているという自覚があるんだろうか。
いやー、マジで何がどうなってるんだろう。
あと、挿絵の港の姿をしたフアナは普通に可愛い黒髪の少女にしか見えないぞ。これなら別に制服着て学院に通っててもそんな違和感ないけど。人種的に明らかにおかしいかもしれないけれど、見た目年齢的にはw

ともあれ、フアナを中核とする帝国の浸透作戦を破綻させる要因となりそうなのは、やはりエマたちスチュワート家の面々になりそう。フアナの暗示がまったく聞かないし、エマたちの影響力が広がるとフアナの暗示の効果もどんどんと解けていくみたいだし。
さらに、帝国産の綿の輸入による経済支配、価値観の束縛に関してもスチュワート家が生産する絹が突破口になっていくみたいだし。
ヘタに暴力に訴えようとしても、今回登場したスチュワート家の親戚連中が完全にマフィアのボスみたいなおっさんたちばかりなので、下手にエマにちょっかい掛けようとすると可哀想なことになる末路しか思い浮かばないんですがw
にしても、レオナルドパパみたいなポヤヤンな人の親戚がなんでみんなあんな強面ばっかりなんだ? 魔物被害と直接退治している辺境は武闘派の巣窟、というだけで説明しきてるのかこれ?!