【くたばれスローライフ! 1】 古柴/かねこ しんや MFブックス

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これはスローライフを憎む男のスローライフ!

ある日、現代社会に疲れた真島景は突然の交通事故で異世界へ飛ばされ、そこで邂逅した創造主たる猫――ニャザトースの好意により、憧れのスローライフを始めることになった。
嬉々として景が選んだ転移先は人里離れた森。そこは魔境とも呼ばれる弱肉強食の楽園で、獣が狂暴なのはもちろん、植物すらも命を摘みにくる愉快な環境。そんな大自然に裸一貫で対峙、共存する生活は、彼にとってまさに充実のスローライフであった……。
――それから三年の月日が流れ、森にすっかり適応していた景はふと気づく。
「これスローライフじゃねえわ! ただのサバイバルだ!」と。
この物語は、スローライフの幻想に踊らされていたことを悟り、悔い、築き上げたすべてを捨てて真のスローライフを求め旅立った男の記録である!


なんでや! スローライフなんにも悪く無いやん! あんたが勝手に人の手の及ばない深淵の森の奥での完全自給自足サバイバル生活をスローライフと勘違いしていただけやん! 完全にとばっちりだぜスローライフ!

いやーー……この主人公のケイン、アタマおかしいですわー。あたまおかしいで片付けていいんだろうか。でも凄い、凄いのは確か。何が凄いって頭おかしいのが凄い! って、話がループしてしまう。
何も考えてないんじゃないのか、とも思ってしまうのですが、何も考えていない脊髄反射ではこういう突拍子もない行動は起こさないと思うんですよね。
少なくとも脊髄で思考はしてるんじゃないだろうか、脳みそで思考しろよ、とは思うけれど。そして熟考は一切しないんですね。思いついた瞬間には行動に出ている。そこに合理性というのは存在せず、主観的には論理的だけれど客観的に見ると意味不明なので、思いつきから行動の間の過程が瞬間移動しているかのように吹っ飛んでる。わけがわからん! とにかく瞬発力に優れているのだけは理解できる。でも何の瞬発力だ? アホの瞬発力か!?

ともあれ、頑なに自給自足生活に拘って森から人里に出ようとせず、コツコツと血と汗と涙を流しながら建てた自作のログハウスを、ふとこれスローライフじゃないんじゃないか? と気づいた途端に何故かこれを木端微塵に破壊して、森を出て人里に向かうケイン。
……だから、なんで木端微塵にクレーター作って粉砕するの? なんで!?
悠々自適の生活を送るために、とにかく金を稼がないといけない、という事で冒険者登録を勧められて登録受付に行った所で、金は稼ぎたいけど働きたくない事に気づいて、因縁つけて登録を拒もうとするケイン。なんで冒険者登録しにきて登録しないように暴れまわるの!?
そして冒険者ギルドを飛び出したその足で奴隷商の元に駆け込み、自分を奴隷にしろと暴れまわり、奴隷契約の魔術を気合で消し飛ばして。
自分を奴隷として金持ちに売れ。奴隷契約で縛れないし主人の言うことを聞かない金持ちの家で悠々自適に暮らす奴隷に俺は成る! と奴隷商のもとで暴れまわる主人公。
すごい、どこをどう思考が反復横跳びしたら、こういう結論になるんだろう!?
凄い! 意味分からなくて凄いし、なんかわからんけど凄い!!
単にアタマのおかしい男じゃないか、と思うけれど、そのとおりです。
でも、冒険者ギルドから奴隷商のもとに飛び込んでいくこの流れの意味不明な勢いと瞬発力は、意味不明で芸術点高かったです。お金を稼がないといけないと気合い入れてアクションを起こした結果、行く所行く所で賠償金を支払って盛大に所持金をすっからかんにしていくこの流れは芸術的ですらありました。

一応、ギルド長から無理やり最低ランクで冒険者登録させられて、ヒモ付けられて紹介された宿屋なのか下宿なのかわからん、オモテナシ上等の一家のもとに寝泊まりするようになってからは多少は落ち着いたんですけどね。
宿屋の娘のディアーナや、明らかにお忍びっぽい冒険者志望のノラといった、少女というのも憚られるちびっ子たちの相手をしていたからというのもあるんでしょうけれど。子供相手だとわりと面倒見いいのよね、このケイン。いや、別に大人相手でも別に対応酷いわけじゃないんですけどね。普通に温厚で話も通じますし。ただ、思考の方向がいきなり明後日向いたり、向いた途端に既に行動に移っていたり、意味不明の発想を思い浮かべてから行動の移るまでのタイムラグが皆無なだけで。
怒られたら、わりと普通にごめんなさいするんですよね。ただ、事の起こりを察する前にもうしでかしているので、止めようがないんですよね。……大変じゃないかw
一番の被害者はシルヴェールさんですねえ、これ。森でスローライフ(笑)してた時に唯一友人になってくれた女性。色々と親身になってくれてたのに、突然家が粉砕されて姿を消してしまった時はえらい心配して飛び回ってくれたのに、怒るよね、怒りますよね。粛々と怒られろよ!! でも、なんか訳のわからんポイントで恥ずかしがって、どうして家を粉砕してシルヴェールが何度も勧めていた人里行ってみない?という誘いも蹴って森を頑なに出なかったのを、どうしてこんな事をしたの? なんで森出ることにしたの? という質問を頑なに答えず、また脊髄反射でやらかすはめに。
だから、後先考えずに逃げようとするな!! 逃げられなかったからって抵抗するな! わけのわからん抵抗した挙げ句に変態みたいな格好になるな!! すげえ、いみわからんw
シルヴェールが色んな意味でかわいそうで、ご愁傷さまとしか言いようがない。各地で起こってた騒動の原因、だいたいコイツだったし。みんながひたすら疲れた顔でため息つくのもわかるー。分かり味!
でも、ほんとに悪いやつじゃないんですよね、ケインくん。むしろいい人サイドなのだ。悪意とか一切ない。悪意がなけりゃいいのか、と言えばそんな事は全然ないのだけれど。わりと迷惑かけられた人も説教したり叱りはしても、あんまりガチで怒ったりはしてないし、嫌われたりもしてないあたりからも、どうにも憎めないタイプなのは間違いない。
いやもう、この意味不明な主人公のアクティブさと瞬発力の高い突拍子もない言動、それに引っ張られる作品全体の勢い、主人公の振り回される人々や案外とノリの合ってるちびっ子組の賑やかさ、となんだかんだと端から端まで楽しいが詰まっていて、面白かったです。
わはははは♪ なんじゃそりゃ! なんでやねん!? と笑える面白さでありました。