【冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 9】 門司柿家/toi8 アース・スターノベル

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昔の仲間達、ついに全員集合! 陰謀渦巻く帝都にて、彼らの旅はいよいよ佳境に。 親と子、過去と未来を繋ぐ異世界冒険譚。 ベルグリフ達は、元仲間の最後の一人、サティを探す旅の果てに帝都へとたどり着く。 国を相手に戦うサティの情報を集めるうちに皇太子ベンジャミンが偽物であるということを知った一行は大きな陰謀の渦に巻き込まれていく。 ついに黒幕たちと相対したアンジェリンは彼らの卑劣な罠により窮地に追い込まれてしまう。 娘の危機に静かに怒りを燃やすベルグリフ。 国家という、これまで以上に強大な敵に対してベルグリフと仲間たちの総力戦が始まる……! ベルグリフとサティ、カシム、パーシヴァルの出会いを描いた特別描き下ろし「足跡」も超大ボリュームで収録!


ああ、良かったなあ、良かったなあ。
なんか胸が一杯になりましたよ。良かったなあ、という言葉が湧いて湧いて止めどなく。
まだ若きあの日、ベルクリフが片脚を失う大怪我を負い、誰もが悔いしか残らない形で輝くような四人の青春は終わりを告げ、パーティーはバラバラになってしまった。
あれから長い長い月日が経ち、故郷の村で暮らすベルさんが森の中で籠に入れられていた赤ん坊を拾った所からきっと一度絶たれた彼らの運命は再び細い糸で繋がったのだろう。
赤ん坊アンジェリンはベルの薫陶を受けてすくすくと大きくなり、やがて一端の剣士となると冒険者になるのだと村を出ていき、やがて赫々たる功績をあげて冒険者の頂点であるSランクに昇格。
そうして久々に父ベルクリフに甘えるために故郷へと凱旋……なかなか出来なかったんですよねー。帰りたい帰りたいと駄々をこねながらも、Sランクに課せられる任務が多すぎてなかなか帰れなかったんだ。そうこうするうちに、故郷のベルさんの方でも事件が起こり、アンジェのようやくの帰郷も相まって、それまでの穏やかだが時間が止まったままのようだったベルさんの人生が動き始める。
そして、かつてのパーティーの仲間であるカシムと再会した所から、かつて別れた仲間たちが今なお自分の怪我に負い目を感じ、とてつもない超一流の冒険者となりながらも苦しみ藻掻くような人生を送っていたのだと知り、再びかつての仲間たちに会いたい。もう一度、かけがえのない友たちと会って、自分と彼らをがんじがらめに縛っている呪縛を解きたい。そう願い、ベルさんはずっと外に出ず逼塞していた村から出て、再び外の世界に足を踏み出すんですね。義足の剣士として。
そうして、幾つもの事件を経て、アンジェにも関わる陰謀をたどり、そのとてつもない父性でもってあちらこちらでパパと慕う娘・息子たちを拾い、親友パーシヴァルと再会し、そして今、かつてお互い仄かに想いを育んでいたエルフの魔剣士サティと遂に遂に邂逅を果たしたのであります。
感慨深い、なんてもんじゃなく。ほんとねー、良かったねえ。良かった良かった。

思えばカシムもパーシーも、そしてサティも。ベルと再会するまでとても荒んでたり暗い陰をまとっていたり、大変な苦労を重ねて生きることに疲れ切ったような顔をしてたんですよね。カシムもパーシーも、冒険者なら誰もが知っているだろう英雄となりながら、そのことに何の誇りも栄誉も抱いておらず、苦渋を噛み締め自分を痛めつけるように生きてたんですよね。
それは、ベルが今も元気でやっている事をアンジェやその仲間たちなどから知ったあとでも、安堵を交えながらもやっぱり罪悪感とか陰を背負っちゃっててさ、辛そうだったんですよ。
それが、ベルさんと再会すると、顔を合わせるとさ。カシムもパーシーも、サティも。パーッと、晴れちゃうんですよ、これが。何十年も抱えてきた、背負ってきたものが本当に簡単に、キレイに拭われて、三人ともすごく雰囲気が軽やかになって。物凄くイイ顔で笑えるようになるんですよ。
会えて本当に良かった、と心から思うし。ベルさんが、もう一度仲間たちと会おうと思ってくれて、行動に移してくれて本当に良かったと、重ねて思うのです。
ほんと、良かったねえ。良かったが幾らでも溢れ出てきて止まらないや。

ただ再会したにとどまらず、サティとベルが別れ別れになってからの事を話しているうちに、アンジェがサティの実子だった事が発覚。アンジェがどうやら魔王のうちの一体だというのは以前から話しにはあがっていたのだけれど、自然発生したわけじゃなくてちゃんと肉体をもってしかも籠に入れられて置かれていた事から、誰かの思惑あってあの森に置かれていたらしい事は分かっていても、その思惑が一体なんだったのか。いったい誰が関与していたのかがわからなかった中で、この答え合わせ。偶然の奇跡でしたからねえ。
はからずも、アンジェのお母さん探し。大切なお父さんの奥さんになってくれる人探しは、巡り巡って自分を産んでくれた本当のお母さんへと行き着いたわけだ。
お母さん!娘よ! と母子二人が暇さえあれば両手繋いでキャッキャと跳ねてるシーンは微笑ましいとか尊いを通り越して、なんかもうひたすら嬉しかったですわ。
サティは特に登場した時から、帝都を巡る陰謀と陰でバチバチ戦いながらもずっと追い詰められ、ボロボロになりながらしんどそうにしていた姿ばかり見ていただけに。体の痛みだけじゃなくて、長年の心の痛みに耐えかねているような、辛そうな陰を背負ったような姿ばかり見ていただけに。
明るくキャッキャとはしゃいでいる姿が、目に染みます。
それでも、アンジェと比べると大人の落ち着きを感じさせるサティなのですけど、巻末の書き下ろしのベルたちが新人として冒険者になり、初めて出会って一緒に冒険をしてパーティーになっていく、彼らのスタートの物語を見ていると、サティってもう元気いっぱいの溌剌、というよりもうこれヤンチャ娘でしょ。熱血冒険野郎なパーシーと張り合うような暴走エルフ娘で、ああこんな天真爛漫な娘だったんだなあ、と。これ、若い頃のサティだとマルグリットとしょっちゅう喧嘩になりそうw
そういう意味では、アンジェと良く似ている気がするし、ベルさんの薫陶行き届いているアンジェの方がまだ冷静沈着かもしれないw
ほんと、輝かしい青春時代だったんだなあ、この頃は。果たして、ベルがあの大怪我をしなければ。彼ら四人の少年少女は果たしてどこまで駆け上っていったんだろう。果たしてどこまで行けてしまったんだろう、とどうしても思ってしまいますよね。
でも、今再会なった四人は数十年の人生を経て、またこうして心から笑いあえている。その周りにも、娘のアンジェを含めて多くの人達が彼らの再会を心から祝福して、笑顔で喜んでくれている。
良かったなあ。
なんかなし崩しに、パパのベルさん、ママのサティ。そして娘のアンジェと自然に家族に収まっちゃって。でも、不思議なくらいしっくり来るんですよねえ。あと、子供がアンジェだけじゃないんですが、もうw いきなり子沢山のご夫婦になっちゃって、でも余裕余裕な二人の感じが表紙絵で並んでいる姿にも溢れてますよねえ。長年連れ添ってきたみたいじゃあないですか。

皇太子ベンジャミンが関わる大きな陰謀も、今回であらかた黒幕を倒したおかげで片付いたはずなんですが、正直敵さんのユニットがどれほど大駒揃っていても、味方サイドもベルさんの昔のパーティーと、アンジェの仲間たち、あと諸々強力な味方が沢山いてほとんど総力戦みたいな感じで集まってくれていたので、危なげらしいものあんまりなかったですよねえ。質も数も揃い踏みって感じでしたし。
これでひとまず一連の事件には区切りはついたはずなんだが、まだシュバイツが偽皇太子の一党とは違う目的で動いていて、他が壊滅したあとも残って暗躍しているだけに、もう一悶着以上残ってるんでしょうな、これ。

まあ何にしても、良かった良かった。