【命短し恋せよ男女 1】 比嘉智康/間明田 電撃文庫

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余命1年でも恋がしたい! 全員余命宣告済な男女4人の多角関係ラブコメ!

余命1年を宣告された中学生・石田好位置は、同じく余命宣告済で、「死ぬ前に一度でいいから恋がしたい」と恋に憧れる少女、穂坂ほのかの恋愛対象に選ばれてしまう。
「ひとりぼっちだったと思われて死にたくない」というほのかの願いに応え、カップルYouTuberを始める好位置とほのかだったが、そこに好位置の元カノが現れて……!
さらには、ほのかに陰ながら思いを寄せるショタ御曹司も同じ病院内に居るだって!?
自称ミステリアスガールなぽんこつ娘に、毒舌クールを装う元カノ、金持ちヘタレ男子とお人好し主人公、全員余命宣告済な男女4人による多角関係ラブコメが動き出す――!


石田好位置……好位置ってこれ名前なんだよ? 普通にこれ出生届の登録の際に入力で変換失敗してるだろ!?
そうでなかったら、人間の名前としてこの単語がどうやって発想されたのか知りたい。入力変換でこの単語出てきて、ピンときた!とか?
お母さん、決して普通っぽい人ではなかったけれど、ここまで変な名前つけそうな変人には見えなかったんだけどなあ。と、うん、判断できるほど母親の描写なかったですしね。
そう言えば、この物語の中で大人として頻繁に登場するのって看護婦の刈谷さんくらいじゃなかろうか。このお話って極力子供達の間だけで世界が完結しているんですよね。好位置くんと穂坂微(ほのか)、近松美澄、妻夫木龍之介。この四人で。
彼らはほのか主体で動画配信をはじめるんだけれど、わりと好評というような漠然とした評価以外は外部でどういう反応が示されているのか、とかどんなコメントが送られているのか、とか外部から送られてくる情報も極力描かれてないんですよね。
余命幾ばくもない幼いとすら言える子供達の、毎日を楽しそうに過ごす動画ってそれだけでセンセーショナルじゃないですか。通常なら、あらゆる方向での激烈な反応が起こっていて不思議はないのですけれど、彼らの日常の中にそうした外部からのノイズは入ってこないんですよね。
これはあくまで、この四人のお話なのだ、という区分けがきっぱりしていたように思えます。
ただ、その御蔭というかそのせいというか。彼らの蒼化症の解決のアプローチまで医者抜きで彼ら、というか好位置と龍之介だけど。この二人だけで手繰り寄せられてしまったのはさすがにちょっといきなり好都合すぎて、もにょっとなっちゃったんですよね。
病気の延命のための薬の副反応。これ毎週一回投与され、その際に起こる副反応が本当に激烈で、まだ中学生にすぎない子供たちが受けるには辛すぎる苦痛で、ほのかが好位置と出会うまで毎週のこの治療が辛すぎて心擦り切れそうだった、というのもわかる迫真があったんですよね。
この苦痛に耐えるだけじゃない、一時でも心から一切忘れてしまえるほど楽しい時間を、同じ病気、同じ運命、同じ滅びを待つ四人だからこそ共有できる、そういう気持ちが伝わる迫真が、この病気の描写にあったんですよ。それが、あの解決ですからね。いや、病気を治す方法が見つかるのは大変良かったと思うんですよ。このまま悲劇が当たり前の悲劇のまま終わるって、実にお涙頂戴な展開で……やっぱ嫌じゃないですか。そんな運命をひっくり返してしまうのは、やってまえ!てなもんなんです。でも、それまでの病気の迫真に対してそれはちょっと無いんじゃないかなあ、と思いました。正直思いました。だって、これだと医者は何してたんだ、って思っちゃいますよ。わざわざ四人もこの病院に蒼化症の患者を集めたのは何のためだったんだろう。偶然? ここを専門治療の最前線にするつもりだった、とかはなかったのかしら。いずれにしても、海外で治験での好転の例があったにも関わらず、医者の方がそれを関知していなくて、龍之介と好位置が慣れない外国語を辞書で調べながら取り寄せた資料調べてたら見つけました、というのはなんとも。もやっとしてしまいます。そりゃお医者さんは日常業務で忙しいでしょうけど。せめて、主治医がちゃんとそういう海外での治験例なんかも調べて探しまくって、それを龍之介と好位置が手伝ってて見つけた、とかならまだリアリティを感じられたのですけれど。
うーん、まあこのあたりの見方感じ方は人それぞれになるのかなあ。自分はどうしてもここに強烈な違和感を感じてしまって、おおぅんんむう?? ってな感じでむにゅってなっちゃったんですよねえ。

さても、この時期は彼らにとってとても特別で、忘れられない時間だっただろう。まだまだずっと続くはずだった長い長い人生の線路、それがいきなり途切れていて断崖絶壁が迫ってくる。なのに止まれない、着実にその日が近づいてくる、終わるはずの人生の終端。
その最中を、彼らは目一杯楽しく生きていた。現実感がなかった、とは言えないだろう。副反応、副作用での激烈な苦痛は彼らに嫌というほど現実を突きつける。でも、それを一時忘れられるくらい、彼らは四人でいる時間を楽しんでいた。
彼らは恋をしていた。それは、恋に恋をしていて個々人に対しては溢れんばかりの好意、親密さ、かけがえのない同志としての共感なんかはあったかもしれないけれど、果たしてそれぞれに対して明確な恋があったかはわからない。少なくとも、彼らはそれを恋として受け止め、それ以上突き詰めて詳らかにしようとはしなかった。そんな時間はなかったし、そんな余裕もなかった。
本物かどうかなんて、彼らにはどうでもよかったのだろう、その時は。でも、本当の事を言ってしまうなら、彼らの中にはそれぞれ本物の恋心が明滅していたのもまた間違いのないことなのだろう。好位置も、美澄も、それを突き詰めるつもりは毛頭なかった。
そんな時間も余裕も、もう自分達にはないはずだったから。

だけど、だけれども。奇跡は起こった。起こってしまった。彼らの終着駅は、突如通過駅となり、彼らの旅路は再延長されてしまった。
彼らの友情は、友愛は、絆は本物のまま、しかし唐突にその先が出来てしまった。四人のキレイで輝かしいまま消えゆくはずだった光は、完結していた箱の中から送り出されることになってしまった。
終わりが約束されていた関係がそのまま先に続いてしまった時、果たして四人の間で曖昧なままの恋として終わるはずだったものは、どうなってしまうのか。
これって、ここまでがプロローグだったんだろうか。この複雑にしてどうしようもないほど固結びに結ばれてしまった関係からはじまる、そうここからはじまる本格ラブコメだったのか?
だとするなら、真価は次の巻ですよ? どれだけ情緒がグチャグチャになるのか、それともコメディ方向にドタバタと振り切るのか。予想がつかないだけに、ドキドキするじゃないですか。