【魔女と猟犬 4】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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4年前に処刑された”お菓子の魔女”争奪戦

“首飾りの森”近くの村エイドルホルンで、魔女災害が発生。

4年前にこの村で捕らえられ処刑された“お菓子の魔女”が復活したのだという。その真偽を調査すべく王国アメリアより異端尋問官のカルル、アビゲイル、ザミオ、そして見習い尋問官のエイミーと、その冒険譚を記録すべく宮廷詩人のリオ・ロンドが村へと派遣される。

だが村ではすでに、魔女集めを行っているという“キャンパスフェローの猟犬”と、“鏡の魔女“と思しき人物の姿が目撃されていた。その情報が本当なら、彼らに先を越されて”お菓子の魔女“を奪われることはなんとしても避けねばならないと躍起になるカルルたち異端尋問官。

そんな彼らをよそに、宮廷詩人のリオは見習い異端尋問間のエイミーとともに、村人たちの証言から独自に“お菓子の魔女”へと迫っていく。やがて二人は驚くべき真実に行き当たる……。

そして異端尋問官たち一行は、魔女の潜むという“お菓子の家”がある森へと足を踏み入れる。この先に、彼らの想像を絶する驚愕の事態が待ち受けるとも知らずにーー。


ふわーーっ、ふわーーっ、そう来たかー! そう来たカー!!
この手の展開、予期せぬ死角からの一撃を食らうとやっぱりテンションあがってしまいますわー。
ええ!? うわーーっ、なにそれ全然気づかなかったんですけどーー!?? ってやつですよ。いや、マジで全然気づかなかった。アタマの隅にもその可能性は存在していなかった。
うひゃひゃ、やられたーー、嬉しい楽しい!!

これだけ完全に意識の外にこれが置かれてしまったのは、それだけ物語上における注意や意識がお菓子の魔女にまつわる謎の方に集中して引っ張り込まれていたからでしょうね。
かつて異端審問官たちによって囚われて処刑されたお菓子の魔女。間違いなく火刑に処せられて殺されたはずの魔女が、森の奥で目撃された。それも、迷い込んだ幼い兄妹のうちの妹を食べてしまったという惨劇を伴って。
今回はさらに、物語の主体となるのが猟犬ロロと鏡の魔女テレサリサじゃなくて、敵側となる異端審問官たち、というのもまた特徴的でした。
敵側の視点で描かれる物語ですよ。しかも、彼らの幾人かは、かつてのお菓子の魔女捕縛の当事者たち。なので、彼らは魔女が間違いなく処刑された確信がある。にも関わらず、派遣された先の村では確かに魔女の痕跡、そして目撃者、魔女の復活に怯える村人たちの存在があった。
果たして本当にお菓子の魔女は復活したのか。復活したならいったいどうやって? その謎を解くためには、改めてかつてこの村で起こったお菓子の魔女の騒動の真相を紐解いていかなければならない。
女王直属の監査役にして見届人たる宮廷詩人リオ・ロンドと、見習い尋問官のエイミーがかつてこの村で本当は何が起こっていたのか、という謎を解き明かしていく本格ミステリー仕立てになっていて、これがまた面白くて面白くて、リオとエミリーのでこぼこコンビのテンポの良い掛け合いにも牽引されながら、ついついこのミステリーに引き込まれていったんですよね。
またこのミステリーの解き方が絶妙だったんですよ。ちょっとずつちょっとずつ、過去に何があったのかが明らかになっていく。でも、証言から得られる過去の情景ってのは語る人の主観でもあり、またその人が見ていた範疇の出来事でもあるわけで。同じシーンでも、最初に得られた情報から描かれる情景は確かに真実ではあるんだけれど、すべてではない、というパターンなんですよね。
謎が謎を呼ぶ、のとは少し違う。それは真実だがすべてが明かされ描かれたわけじゃない。その場面、その時の心情は本物だけれど、さらにその奥がある。過去に消えた人達だけが知っていたさらなる真実が存在する。
それこそが、今ここに現れたお菓子の魔女に繋がっている。
そうやって一つ一つ証言や過去の痕跡を洗い出していくうちに明らかになっていく過去の事件の情景、その解像度をあげていくたびにそこに現れてくるのは、家族の肖像。それも最初の印象と後半に行くに連れて真実のさらに奥が見えてきたことによって明らかになってきた本当の家族の姿は全然密度が変わってくるんですよね。
そこにあったのは、本物の愛。愛ゆえに自らの何もかもを犠牲にする覚悟。彼女はあの日、間違いなく魔女となり、その魔を以てすべてを騙しきった。もっとも愛しきものを守りきった。
そして、かつて穏やかに紡がれていた、未来に希望を抱いていた家族を無惨に踏みにじったのは一体誰なのか。その真実に最も近づいた瞬間に、猟犬の牙が突き立てられる。
タイミングがちょっともう凄すぎるんだよなあ。
いやあもう、ゾクゾクしましたよ。
同時に、現在進行系でベストコンビとして紡がれつつあった二人が決定的に引き裂かれた瞬間でもあり、興奮に盛り上がりまくるのと冷水を浴びせられるのを同時に食らったんですよねえ。
ロロってばもう、ほんと君はこうなるのを分かっていただろうに完璧にやっちゃうからこうなっちゃうんだよ。そんでもって、冷徹に徹するなんて君には無理なんだよなあ。
禍根は残ってしまった。痛切にわかっていたのに、それでも残しちゃったんだなあ、ロロは。それもまた、覚悟だろう。

ともあれ、今回は何はなくとも魔女フランツィスカの独壇場、と言って良かったかもしれません。表向きというか、過去にしても現在にしても傲岸不遜に暴れまわり蹂躙し続けたのは異端審問官のカルルでありましたけれど、真実……そう、真実を詳らかにしてみればかの男の理不尽に対して、フランツィスカは過去においても現在においても勝利していたのでした。強い強い女性でした。現在においてすでに存在しないというのがなんだか不思議に感じてしまうほど、魔女として消えない爪痕を残した女性でした。
しかし、お菓子の魔女……この娘いいですよね。ある意味、一番魔女らしくないかもしれません。そもそも、自分が魔女という自覚なかったわけですしね。そして何より、家族の愛に包まれて大きくなった娘だ。今まで登場した魔女の中では一番人間としての自覚のある娘なのかもしれません。

そんでもって、また巻末で盛大にイジられてるカプチノちゃん。どんどん不憫可愛いに磨きがかかってきたぞ、カプチノ!