【陽キャになった俺の青春至上主義 2】 持崎湯葉/にゅむ GA文庫

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「「「海だーーーーーーっっ!!」」」
夏休み、到来。陰陽入り乱れる橋汰たちグループは、カエラの提案で二泊三日の旅館バイトをすることに。
仕事をこなしつつ青春イベントを満喫する一行。
しかしその裏で橋汰の下には遊々、宇民、龍虎から続々と「自分を変えたい」という相談が集まってくる。
そこで橋汰は各自にとある計画を始動する――
その名も「陽キャ化計画」「イキらない計画」「メスガキ化計画」!?
さらに、この夏休みは想いを寄せるカエラとの距離を詰める千載一遇のチャンス。
橋汰はなんとか二人きりになろうと企むのだが――?
陰陽混合ネオ・アオハルコメディ、真夏の太陽照りつける第2弾!
これイマジナリー小森先生、実はイマジナリーじゃなくて小森先生本人が遠隔操作してるだろ、絶対!
イマジナリーのくせに本人味がありすぎるんだよw
小森先生、当人は冒頭と最後にチョロっと登場するだけで出番殆どないはずなのに、イマジナリー小森先生がずっと常駐して出張っていた上に要所要所でボケツッコミ込みのコメントを適時挿し込んでくるもんだから下手するとレギュラーメンバーよりも出番多かったんじゃないかと錯覚してしまうんだが。
ズルいぞ小森先生w

前巻にて敢えて自分がかつて陰キャである事を暴露して、陰キャ陽キャの枠をその人を閉じ込める檻じゃなく個性なんだ。もっと自分達は自分らしいまま自由でいいんだ、と既成概念固定観念を吹き飛ばしてみせた橋汰。
彼がそういうアンサーを出せたのは、中学時代に彼に陽キャの在り方を見せてくれたクラスメイトの存在があり、またカエラという徳の高い陽キャにそれこそ固定観念を吹き飛ばされたからとも言えるんだけれど、そんな橋汰のプレゼンはカエラ自身にも刺さってたんですねえ。

カエラの誘いで夏休み、彼女の親戚のやっている民宿で泊りがけのバイトに行く事になったいつもの面々。あのお泊まり会みたいに遊び回って、なんて余裕もなくカエラの叔母さんであるヤンキー女将さんによるビシバシと厳しい教導によって悲鳴をあげながらバイトに勤しむことになった面々だけれど、これはこれで楽しい青春模様。なんだかんだとみんな嫌々じゃなくて前向きに、厳しいと悲鳴をあげながらだけれど、楽しんで働いている様子を見ていると思わず笑顔になってしまうんですよねえ。
龍虎、水乃、そして遊々といった陰キャサイドの面々も橋汰のプレゼン以来ネガティブを抱えることなく、橋汰が出す宿題に挑みながら自分なりの自由に楽しくやれるスタイルを試行錯誤しはじめてるんですね。特に遊々は前向きさが顕著でただ橋汰に引っ付いてついて回るんじゃなくて、かっこいい大人の女性である女将さんに指導を求めたりと、自分に対する卑屈さが払拭されつつあるのがよくわかるんですよね。あのみんなで集まってのお泊まり会では、実は居場所がなくてキョドっていたのが、このお泊りバイトでは全然そういう居心地の悪さや居場所のなさなんてのを感じていなくて、そもそも橋汰に指摘されるまで、自分がみんなと一緒の時間空間にいることを自然に楽しんでいることに気づかなかったくらい、馴染んでたんですよねえ。
この子の成長が素敵すぎる。

しかし一方で、そんな遊々たちに構ってばかり(とカエラには見えた)橋汰に指を咥えて微妙な嫉妬を抱いてしまっていたカエラ。
橋汰にとってはカエラとは「太陽」と表現しているように仰ぎ見る存在。好きな女性ではあるものの、眩しすぎる存在であり憧れの存在であり、理想像の一つでもあったんですよね。
でもそれは、カエラ本人を無視した偶像視でもあったわけだ。いや、カエラ自身、自分に向けられるそういう視線、そういう人であって欲しいという期待。言うなれば、カエラは太陽みたいな人、というイメージを向けられたことで、それに応えないといけないと自然にそう在らんと振る舞っていたわけですから、そんな彼女を見た人、接した人がカエラの事を太陽のような人だ、と重ねて思ってしまうスパイラルになってたんですよね。
カエラ自身は、そういう期待と自分自身に乖離があって、いつの間にか違和感を感じてしまっていたのが、あの橋汰のプレゼンで自分も与えられた役割に自分を当てはめてしまい、檻の中に閉じこもっていたんじゃないか、と結構刺さったみたいなんですよねえ……でも、いうほど乖離はないんだよなあ。無理してそういう役割を演じていたわけでもないと思う。期待される振る舞いや言動を意識して指向していたかもしれないけれど、そもそも実際にカエラって太陽みたいな人なんだよ。
とはいえ、自分だって結構迷走してるんじゃないか、と思った時に、遊々たちにばかり指針を示している橋汰が、自分を放置しているのはなんか……不満! と、思ってしまったのはあれですよ、可愛い乙女心じゃないですか! いや、マジで可愛いんですけど!
中学時代のサッカーの女子仲間が合宿で偶然カエラたちがバイトする民宿に宿泊しに来たことで、期待通りに振る舞おうとして大きなトラブルを呼び込んでしまった苦い思い出が呼び起こされてメンタルが不安定になってしまったカエラ。今までの自分の在り方に少し疑問を抱いてしまっていたのも重なってしまったんですよね。
でも、他の人にはわからないように普段通りに振る舞えてしまうだけのメンタルの足腰の強さみたいなものがカエラにはあった、あってしまったのだけど、それにちゃんと気づくんだよなあ、この橋汰くんはさあw
私だって迷ってるし、困ってる。どうしたらいいか教えて欲しいし、助けて欲しいなあ。と、こっそり思っていたら、橋汰くんてばスルスル〜っと寄り添ってきて、自分が今苦しい思いを抱えていることに気づいてくれていて、ちゃんと弱音聞いてくれるわけですよ、相談したら真剣に考えてくれて、一緒に答え出すための筋道考えてくれるわけですよ。助けてくれたわけですよ。
橋汰だって、他の人みたいに自分の事太陽みたいと思って偶像視している部分、あったのにね。でも、いざとなったらすぐにそういう固定観念振りほどいて、自分の事を色眼鏡抜きで直視してくれた。
まっすぐ見つめてきてくれた。
そりゃーー、ドキドキしちゃいますわ。

カエラには陰キャとか陽キャとかのカテゴリー分けはよくわからない。この娘は真性の陽の者なんで、陰キャの在り方とかその価値観とか劣等感とか考え方とか、見下す区別する云々じゃなくてそもそも認識できないんですよね。そもそもカテゴリー分け自体理解できない徒然と比べると、そういう区分があるというのはわかってるんでしょうけどね。いや、徒然のそれはほんと凄いと思いますよ。あれは人として人間として余人と違う高みにあるんじゃないだろうか。
ともあれ、カエラには陰キャの気持ちはわからない。陰キャのことわからないのに、全然無神経なことしないし言わない、遊々たちに上からじゃなくて同じ目線で寄り添えるのって、それはそれで本気で凄いと思うし、これこそ徳が高い、陰キャ陽キャ関係ないもっと大枠の人間性の部分で揺るぎない優しさ、慈愛があるからなんだろうけれど。それでもそこからなお、このカエラ様が陰キャの在り方というものを実感し体得し理解し認識しえるようになったら、それこそパーフェクトカエラになれるんじゃないだろうか。というか、なってしまうんじゃないだろうか。
「あえて後ろ向きに考える……確かにアリだね!」
「そうだろ?」
「だって前なんていつでも向けるしね!」
「…………」

だって前なんていつでも向けるしね! ですよ。なにそのセリフ? こんな言葉がこの世に存在するの!? こんなん同じ惑星、同じ宇宙の存在とは思えないんですけど。別の宇宙から来た外宇宙人じゃないの?
でも、いつの間にか嫉妬の呼吸を体得している一人になってるの、やっぱりすごく可愛いんですけどw
橋汰くん、そこは気づかんのかー。もったいないもったいないw

あと、最後の締め、小森先生のその何とも表現しにくい厭味ったらしい顔の挿絵で締めるの、やっぱズルいですわーww