【勇者はひとり、ニッポンで 〜疲れる毎日忘れたい!のびのび過ごすぜ異世界休暇〜】  山崎 響/雪狸 一迅社ノベルス

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ここは、「ニッポン」誰も俺が「勇者」だなんて知らない――。

ギスギスしたパーティメンバー間の軋轢に悩まされていたストレスフルな剣と魔法の国出身の勇者・アルフレッドはある日突然、神より予算イチマンエンを授けられワンダーランド「ニッポン」へ転送(ジャンプ)!
食べて、飲んで、気の向くままに、癒しを求めて練り歩く!

週に一度、24時間限定の至福の時間を満喫するお疲れ勇者の異世界(ニッポン)探訪コメディが開幕!!

【婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ】や【聖女様は残業手当をご所望です】などコメディタッチのドタバタ劇でおもしろ愉快な作品を送り出してくれている作者さんの新シリーズは、逆異世界モノ。

文官系木っ端男爵家の冴えない跡取りで、武芸も魔法も何にも身に着けていないにも関わらず、いきなり神託によって勇者指名されてしまったアルフレッド。嫌だ、そんなもんなりたくない、助けて!! とどれだけ訴えても神様からのご指名なのでもちろん聞く耳持たれず、イヤイヤ勇者になったのに周囲からはポッと出の誰だかわからんような若造が勇者なんぞになりおって、と嫉妬や反感、敵意を向けられ孤立無援。
さらに勇者パーティーに指名された面々はというと、王女様からは蛇蝎のように嫌われて、女騎士には軟弱さからパワハラをかまされ、幼馴染の魔術師からはゴミのように扱われ、ダークエルフの女弓兵からは玩具のように弄ばれ、トドメに女魔術師と王女様はやたらと仲が悪くてパーティー内の雰囲気はギスギスして最悪です。
……わりと、アルフレッド自身の小市民を通り越した卑屈さと軟弱さとぼんくらで無神経で得意技は人の神経逆撫でする余計な一言を最悪のタイミングで差し込むこと、というあたりが原因な気もするのだけれど、王女様たちの性格も相応に悪いというかあんまり他人に配慮できないアカンタイプの人達だと思うので、アルフレッドの自業自得とばかりは言えないんですよね。自業自得の部分は少なからず、というか過半ではあると思うけど!
ただ、ミリア王女も幼馴染のエルザもアルフレッドの事全く男として見ていなかったにも関わらず、将来勇者が魔王を倒せば、王女を嫁に差し上げると王命が出ちゃっている事もあって、ミリアはマジか、こいつか?嘘だろ?と思いつつも、一応結婚相手としてホントイヤイヤだけれど認識しているところに、エルザの方が幼い頃ガキ大将でアルの事を手下、或いはペットかパシリとして自分の所有物のように思っていた所に、王女様に所有権を持ってかれる事に独占欲を刺激されて、変に王女に突っかかっちゃうんですよね。ミリアの方も喧嘩売られたら買うタイプだから、お互いアルを異性とも思っていないにも関わらず、裏で火花飛ばしながらアレがどっちのもんか、という所有権争いがはじまってるんですよね。
そうなると、元々別に好きでもなんでもなかったし、何ならイラッと来るほど生理的にムカつくタイプだったにも関わらず、なんとなく意識しちゃうじゃないですか。先々考えると、結婚するというのは現実性がある未来でもあったわけですし。
んで、まあ嫌だし嫌なんだけれど、まあちょっとは男性としてちゃんとしてる所見せてほしいな。パートナーとして、相応の振る舞いをしてみせてくださいよ、みたいな感じで譲歩のような歩み寄りのようなものを見せようとしたら……アルから帰ってくるのは、別にお前の事女として見てないから、意識してないから、むしろ嫌なんですけど。王女さまとはホント無理なんですけど。結婚?(ガチで忘れてる)、という無神経を通り越して喧嘩売ってるんじゃないか、というような態度。
無理なのはこっちの方じゃーー!! と王女様がキレるのもまあ、無理からん所があるよね。

お互い様である。

それはそれとして、アルが胃に巨大な穴をあけて魔王軍と戦って死ぬより前にストレスで死にそうになっていたのも確かなことで、かなりガチで神様に何とかしてください、助けてください、と願ったところ、神様から降りてきたのは、週に一度の安息日に24時間だけ異世界ニッポンにてゆっくり一人で休暇をとっていいですよ権であったのでした。資金は一万円。

そして勇者アルフレッドは、見知らぬ異世界ニッポンに降り立ったのである。一万円を握りしめて。
逆異世界モノである。
それも、異世界から日本へ異世界人が訪れるというパターンそのものは珍しくもないのだけれど、現地地球人や地球の神様系統の案内人など全く無しの、異世界人一人旅というのはかなり珍しいんじゃないだろうか。
神様の恩恵で喋ることや文字を読む事は翻訳で可能になっているんですけれど、それ以外は一切案内とか説明無しでしたからね。まるで文明度は違いますし、科学文明なんてアルフレッドとしては完全に未知の領域ですからね。
初手で思いっきり面食らい、怯え戸惑い、どうしたらいいんだ!? という混乱から、それでもまずは飯だ! と、料理店を探し出して、周囲の人の真似をしながら初手で牛丼屋に突入するアルフレッド。いや、見知らぬ見慣れぬ未知ばかりの異世界で、いきなり飯屋に一人飯できるアルフレッドってかなり勇者じゃないですか!? こいつ、小心者で小市民のくせに何気に精神タフというか、いい意味でも悪い意味でも鈍感なんですよね。普段のストレスも、少なくとも高貴なる王女様という地位や権威への怯えはさっさと忘れて、かなりミリア王女にも騎士バーバラにも対応雑になってますしねえ。肝が太いというか、無神経というか。
だいたい、こんな便利なものが溢れかえってる世界に来訪したにも関わらず、こいつってあんまりそういうものには興味示さず、とりあえずうまい飯とうまい酒さえあればいい、という感覚なのがすごい。まず牛丼屋に突入し、その後さらに居酒屋に馴染む、というあたりがなんかもうすごい。その上で、金勘定を鑑みてビジネスホテルやカプセルホテルの利用に馴染み、そのうち宅飲みにまで発展して、スーパー、コンビニの存在に驚きながらも速攻で馴染み、コンビニの雑誌の立ち読みにいっぱいコーヒー飲んで長時間利用をなんとなく誤魔化す、というお前現代人だろう、という小市民ブームまで速攻で修得しw
予算が限定されているために、ひたすら安いけど多くて美味しい飯、に探求が向いていくの、ほんと小市民じみてるんですよね。そこから、大学の学食にまでたどり着くの、かなり得点高いと思うんですけどw
まあ食い気以上にこいつの場合、酒の方への欲求がすごいんですけれど。普通に呑兵衛どころじゃない、わりと酒クズの資質ありますよね。酒が基準w 
しかし、これだけ一人で食べ歩きして、あっちこっちで酒飲みまくって、たまに映画見たりホテルでゴロゴロしたり、と見事にお一人様を堪能して楽しみ切っているのを見ると、羨ましくなってきます。
日本人にはもう日常として組み込まれてしまっている庶民の食文化、娯楽、生活様式が異世界人のアルフレッドにとってはすべてが新鮮で未知であり、初々しいくらいの溌剌とした楽しんでるぞ、美味しいぞ、酒が上手いぞ! 美味しいけど安いぞ! という感情が伝わってきて、こっちまで楽しくなってくるんですよね。
そして、この一日のために、この酒一杯のために勇者を頑張れる、あの怖い女たちの相手もパワハラも我慢できる、という毎日の苦痛からの解放感……こいつ、勇者というより絶対サラリーマン気質だよなあ。いや、本人も重々承知の認識ですが。
神様、ガチでなんでこの子勇者にしたんだろうw

……でも、これ毎週一日一万円好きに使って飲んで食べて遊べるって、かなり羨ましいんですけど。宿泊費込みで一日使い倒すには1万円ってアルも苦慮してますけれど、微妙っちゃ微妙な金額なんですけど、毎週となるとけっこう贅沢ですよね。とはいえ、命がけの勇者業の見返りとしてはどうなんだろう、という微妙な金額でもあり、異世界の人間にとってニッポンで毎週飲み食い出来るというのは桃源郷みたいなもんだろうし妥当と言えば妥当なのか、となかなかアタマ悩ませるところではありますなあw
いやでも、ぼんくら勇者アルフレッドの一人飯にお一人様遊び、見てるだけでひたすら楽しく、飯美味そうだったです。牛丼とカレーがやたら食いたくなるぜ。