【軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。4 〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜】  冬瀬/タムラ ヨウ 一迅社ノベルス

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学園祭の準備もいち段落し、ヒロインであるフォリアが故郷に戻ったところでスタンピードが発生!
害獣の群れが教会に押し寄せる。ラゼは急ぎ駆けつけるが、フォリアは回復魔法を覚醒させて窮地を脱していた!
彼女の“覚醒”は友人カーナの破滅条件であり、それはすなわちラゼの潜入任務失敗のフラグでもあったのに……。
自分の失態をカバーするために、バトルフェスタではミッション完遂に挑むラゼ。
そして迎えた学園祭では、帝国の“先読みの巫女”と謳われる転生者が「あなた、シナリオの邪魔なのよね!」と接触してきて――!

前世知識と軍人としての技能をフル活用したら、これらのミッションを乗り越えられますか?
軍人ラゼの異世界転生ラブコメディ第4弾♪


ラゼ・グラノーリ。その一時の青春の終わり。
かくして彼女は一学生たるラゼ・グラノーリから、特攻大隊隊長【狼牙】ラゼ・シェス・オーファン中佐へと立ち戻る。
それを表すかのように、今回の表紙はついに軍服姿になっちゃってるんですよね。ラゼの軍服姿は凛々しくてとても素敵だとは思うんだけれど、今回ばかりは物悲しいものがある。
ラゼ、卒業出来なかったなあ。
それでも彼女、この潜入護衛任務でついに友人となった学生たちにその正体を一切バレる事無く終わってるんですよね。その【狼牙】と呼ばれるに至った戦闘能力ですら、何人かに薄っすら彼女は強いんじゃないかと疑わせるくらいで、その実力を見せることなく特待生として学力の方で目立つまま、だったんですよね。
とはいえそれも、先読みの巫女の予言を外れさせるために、学生同士の決闘大会での優勝を命じられてその戦闘力を開示することで終わってしまったのですけれど。それでも正体は結局敵にも味方にも明かすこと無く最後までやりきってるんですよね。こういう所、ほんとにプロだなあ、と思う所なんですよね。
本来この護衛任務は、体裁だけでありラゼに年相応の青春を、普通の学生生活を送らせてあげたい。軍人としての立場を忘れて、一人の少女としてこの貴重な若き日々を過ごしてほしい。そういう大人たちの親心あっての形骸だけの任務だったはずなのに、何の因果か本当に学院に通う子女が狙われ危険に見舞われることが続き、ラゼが護衛についていて助かった場面が幾つもあったんですよね、悲しいかな。
何より、ラゼの存在によってこの世界を象っているゲームの原作シナリオが崩されて不幸になるはずの人達が救われていったのですから、本当にラゼの存在こそがキーパーソンだったのは間違いないのですけれど。それでも、彼女のことを思う大人達にとっては不本意極まりない状況だったんだろうなあ。
しかし、彼らは同時に国を担う重責を負った王族であり、国の重鎮であり、時として情を排して非情に徹しなくてはならない。或いはそれを誰よりも理解し実感し体現していたのはラゼ当人だったのかもしれない。
彼女だけは一貫して、自分が任務についている事を片時も忘れることはなかったんですよね。学生とう仮の身分を全うしながらも、軍人としての自分を絶対に忘れなかった。
悲しいかな、ラゼこそがこの一時の青春を、泡沫の夢のように捉えていたということなのだろう。大人たちの思惑や願いとは裏腹に。
彼女にとって、学生生活で得た友人達は本物だった。彼らとの時間はかけがえのないものであった。それは決して夢ではなく現実ではあったけれど、ラゼにとってそれはいつかその場に置いていかなければならない、いつか消え去るラゼ・グラノーリではない、ラゼ・シェス・オーファンが持っては行けないひとときの宝物だと、誰よりも彼女自身がわかっていたのだろう。
だからこそ、余計にラゼは学生生活を全力で楽しんでいたんですけどね。一線を引かず、一時の夢だからこそ思いっきり存分にやりつくそうとしていた。
学園祭は、ラゼが全力を尽くして青春を謳歌する、その最たるイベントとなった。ちょっとやりすぎだろう、というくらい全力を尽くしてしまっていたけど、これもう伝説になってしまいますよね。ある意味、バトルフェスタの優勝よりも伝説になるんじゃないだろうか。
しかしここで得た思い出、学生生活で得た友人達の存在が、その大切さがさらにラゼの軍人としての覚悟を、必ず守るという思いを強くさせていったのは、皮肉というべきなのだろうか。軍人として日の当たる場所から退き、闇の底に沈んででも守るのだと、覚悟を決めさせてしまったのは哀しむべき事なのだろうか。ラゼ当人は、本懐ではあるんですよねえ。
ただ彼女を見守る大人たちにとっては痛恨事であったのは間違いないだろう。フォリアの前でラゼが人だった魔物を殺そうとした事に。ラゼにその覚悟をさせてしまった事に一番苦渋したのが宰相閣下だったんだろうなあ。その報告を聞いた時の閣下のあの悲痛な反応は、ちと忘れがたい印象が残っている。
それでも多大な後悔と自分たちへの嫌悪を抱いてなお、彼らは迷うことを自らに許さず、ラゼに命令を下すのだ。彼らが国を担い国を守り、国に暮らす人々が健やかに過ごす日々を守る責任を負って、この皇国を導いている者達である以上は。
宰相夫妻が、ラゼを娘のように思っているというのは決して嘘偽りのない本音だったでしょうから、尚更その娘を戦場に、死地に送り込む事を命じなければならない立場にある、というのは……辛いよなあ。
戦争がはじまる。ラゼに置き去りにされた友人達は、子供達は……果たしてこれから何が出来るんだろう。ラゼとしては、そのまま彼らには恋を叶え、好きな人と結ばれて幸せになってほしい。それこそが彼女の願いであり、軍人として戦う理由となるんだろうけれど。
重たいなあ。