【ソード・オブ・スタリオン 種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる】  三雲岳斗/マニャ子 電撃文庫

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鋼鉄の巨人を駆り、王女を口説け!

「王女を一人、口説いて欲しいんだ。遅くとも十カ月以内にね」
ラス・ターリオンはフリーの傭兵。単独で上位龍すら倒すほどの実力を持ちながら遊郭に入り浸り自堕落な日々を過ごす彼は、極東の種馬と呼ばれて皇国中の人々に蔑まれていた。
そんな彼の前に、死んだはずのかつての婚約者、皇女フィアールカが現れる。
存亡の危機に陥っている祖国を救うために、ラスを皇宮に連れ戻した皇女の目的――それは皇太子の婚約者である隣国の王女ティシナを、ラスに寝取らせることだった……!
魔獣の棲む惑星で国家の存亡をかけた政略結婚に挑む騎士と皇女の、異世界戦記ファンタジー。

書籍化前提じゃなくて趣味で書いていたという本作、ファンタジー作品だけどロボットものじゃないですかー! 三雲さんのロボットものというと【アスラクライン】以来になるのか。でも、なんか強烈に既視感感じたの、これ【コールド・ゲヘナ】っぽくないですか!?
対人兵器としてではなく、本来は人類の生存を保持するための対魔獣決戦兵器として人型兵器が運用されているあたり。まあ、対魔獣兵器だろうと人間同士の戦争にも使っちゃうのですが。
とはいえ、【コールド・ゲヘナ】もう20年以上前の作品なだけに内容も薄っすらとしか覚えていないのですが(実本は棚の奥だ)、三雲さんのデビュー作だもんなあ。鮮烈な印象は焼き付いてるんだよなあ。電書化されてないんですよねえ。

さて、これ本作タイトルからしてインパクトがあるというか、ぶっちゃけると酷いよね!?
隣国の王女を寝取れって。主人公よっぽどナンパ野郎なのか、三雲先生の作品の主人公としては珍しい、てか見たこと無いぞ!? と、思ったんですがさすがにそこまでナンパで軽薄な男ではありませんでした。でも、これだけ女性の扱い方、接し方にこなれている主人公はやっぱり珍しいかも。そのあたりもコールド・ゲヘナの主人公のバーンをちょっと思い出すんですよね。
しかしこれ面白いのは隣国の王女を寝取れ、ってラスに命じるのはその王女ティシナの婚約者になる予定のラスの国の皇太子でありラスの幼馴染でもあるアリオール皇子なんですよね。
つまり、誰から寝取れって自分から婚約者を寝取れ! って言ってるわけですよ、皇太子さま。これっていわゆる寝取らせじゃね!? 
しかも、この皇太子アリオール。実は数年前に死んだはずの皇女フィアールカが化けた姿で、そのフィアールカ皇女はラスの元婚約者。相思相愛の恋人だった女性なのである。
……ダブル寝取らせじゃん! 自分の婚約者となる女性を自分の好きな男に寝取らせるという寝取らせ✕寝取らせ! 
まあでもこの皇女さま、いわゆる腹黒なんですよ。本当は数年前自分を犠牲にして竜の災害で死んだ皇太子の身代わりとして、皇太子を演じ続けたように策士であり、今回のラスへの依頼のように手段を選ばない謀略家でもある。だから、国家の安寧のため、自分の感情など機械的に切除して捨ててしまう事のできる計算高く冷徹な策謀家……じゃあないんですよねえ。
巻末の閑話での二年振りにラスに再会する直前の、乙女全開のフィアールカを見ているともう全然恋するやたら面倒くさくて女としての自己評価低くて捻くれちゃってるけど乙女心を抑えきれないポンコツ皇女なんですよねえ。皇女さま、あなた寝取られ属性皆無じゃん! ラスにあんなお願いしておいて、実際にラス寝取られたら脳を焼かれて死んじゃうんじゃない!? あなた、実はメンタルよわよわでしょ!? メンタル弱いのに腹黒とか、完全に自爆型じゃん!!
どうもラスやフィアールカ皇女の過去の回想を見ていると、本来黒幕…フィクサーの資質持ちだったのって亡くなった皇太子のアリオールだったっぽいんですよねえ。一番うしろから色々と画策して良いように操り思い通りに事をなす黒幕型。フィアールカもイタズラ好きでいつもはっちゃけてヤンチャしていたみたいなんだけれど、肝心なところで抜けているのか、いつもお兄ちゃんにギャフンと言わされて全然敵わなかったみたいで、なんとなくいつも涙目で悔しがってたんだろうなあという光景が浮かんでくるわけですよ。
ところが、その皇太子様は国を守るため、そして可愛い妹を犠牲にしないために、そして何より冷徹に計算をはじき出して、自分を犠牲にすることが最も効果的だと判断して、フィアールカにあとを任せて逝ってしまった。
これ多分、フィアールカって腹黒で悪戯っ子なんだろうけれど本質的に大切な人も自分ですらも駒として冷徹非情に徹することができるフィクサーは、向いてないんですよね。向いてないけど、しかしそれをこなせてしまう才能は有していた。出来ちゃったんですねえ。
お兄ちゃんも、国のためとはいえ酷な事をするよなあ。本当なら自分を支えてほしいラスは、というと愛する自分を守れずに死なせてしまって消沈して娼館に入り浸り、兄に化けた自分から徹底して逃げ回り、連絡も取れない始末。おまけに、種馬なんて悪評まで立ってしまい、内心相当に激おこだった模様。そりゃそうだよね。
ところが、今回政治的な必然もあって、隣国の王女と婚約しなければならなくなったんだけれど、自分の正体がそれで明らかになってしまうと、まあ色々と国内事情や国際事情もあるんだけれど、内乱から皇国滅亡まで一直線という亡国の危機になってしまったわけですよ。
ラスも幼馴染で恋人だった人のことなので良くわかってるみたいなんだけれど、今回の一件で皇女さまガチで切羽詰まっていたようで、なんか余裕かましてラスを嵌めて拉致ってきて再会して偉そうに正体暴露してたんですけれど、実際はもうアカン、これもうどうにもならん、ラス助けてーー! っとかなりガチのSOSだったっぽいんですよね。
ティシナ王女をメロメロにして、真実がバレても暴露せずに味方になってくれるように何とか口説き落とせ、という無茶振りである。なにか理路整然とした攻略計画とか作戦があるのかと思ったら、なんか全然ないっぽいんですよね。完全にラス頼みである。……フィアールカ皇女、もうこれ実はいっぱいいっぱいだったんじゃないの?w
腹黒の陰謀家ですし表向きはずっと余裕タップリの態度で国事を運営する食わせ者にしてくせ者、大物感あふれるプレイヤーとしての威風を感じさせる人物像ですし、いざという時の決断も大胆不敵。自分の尊厳を賭けのベットに乗せてこゆるぎもしない、という肝の太さ。覚悟の重さ。どこを見ても隙を感じさせない立ち居振る舞い。なんだけど、なんだけど。閑話見るとフィアールカ皇女、ほんと可愛くてねえ。もうめっちゃ乙女やん! ラスの事大好きやん!!
ラス頼みの無茶以外にない作戦を受けてもらえるかどうかは、かつて相思相愛だった恋人の愛情にすがるしかない。果たして、今でも彼は自分の事を愛してくれているだろうか。そんな不安に悶え、使者として送り出した女騎士カナレイカの美貌にコロッと惚れ込んでしまって自分の事なんか忘れてしまうんじゃないか。そもそも、入り浸ってる娼館は美人ばかりで自分なんか、とすねてこじらして不安に怯えて、と余裕綽々尊大で自信満々に振る舞う常の姿なんかどこにもないんですよ。
使者の女騎士に惚れちゃうんじゃないと心配でたまらなくなるくらい、ラスに想いを寄せているのに、愛情にすがって彼に頼むのは自分じゃない他国の王女を口説き落とせ、という寝取らせ案件。
マジでこの娘のメンタル持つんだろうか。

と、まあ皇女さまの方ばかり心配していられないくらい、ついに現れた寝取られ対象のティシナ王女のインパクトが強烈だったんですよね。
いや、口説き落とすとか自国を裏切らせて秘密を黙っていてもらう、とか不穏な事ばかり強いろうとしているから、てっきりラスからアプローチ受ける側の王女様って内向的で大人しいタイプか、或いは直情的で脳筋なタイプなのかなあ、と勝手に想像していたんですが……。

いやいやいやいや、これちょっと! この王女さまってもしかして、フィアールカの天敵タイプじゃないの!? この人多分、亡き皇太子アリオール殿下に匹敵する指し手、プレイヤーだぞ!?
しかもこれ、ラスやフィアールカ側の事情全部承知してるんじゃないの!? さらに言うとこの人……「何度目」だ!?
フィアールカさま、これマジでラスを寝取られ兼ねませんよ!? 寝取れって命じたら寝取られた案件になりかねませんよ!?

あと、恐るべき事にこの作品、1巻にしてヒロインと呼べるだけのキャラ立てさせてる女性の登場人物、およそ8人も登場させてるんですよね。さらに8人も出しておきながら、誰が誰? みたいな事になってないんですよ。それどころか全員非常に個性的で。それぞれ、この1巻の中できっちりキャラ立たせてるんですよね。流石に聖女リサーあたりは数ページばかりしか登場してないんですが、わりとそれだけでも強烈な印象残してますしねえ。
その上で、女性キャラだけじゃなくて男性キャラも結構たくさん出てますし、流石としか言いようがない。
んでもって、満を持しての人型兵器ですよ。もうエンタメ要素が豪華盛り付けのパフェ並みにてんこもりで、いやあもう楽しいのなんの。三雲先生の新シリーズ、ちょっと面白すぎでワクワク止まんないですわ♪