【冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 10】 門司柿家/toi8 アース・スターノベル

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
旅の終わり――
されど人生という冒険は続く

異空間に囚われたアンジェリンとサティを救うため、
奔走するベルグリフと仲間たち。
一方囚われた2人は、自力での脱出を目指し
一連の黒幕と対峙していた。

次第に追い詰められるアンジェリンとサティのもとに
たどり着いたベルグリフたちは、皆で力を合わせて
黒幕の陰謀を破ることに成功するのであった。

帝都での事件も一件落着し、最後の仲間、サティとも
再会したベルグリフ一行は、皆でベルグリフとアンジェリンの故郷
トルネラへと帰郷する。

父の過去を巡る旅、陰謀と戦う冒険は幕を閉じ
穏やかな時間を過ごす冒険者たち。

なし崩し的に夫婦となったベルグリフとサティだが
新婚だというのに熟年夫婦のように落ち着いた2人を見て
パーシヴァルとカシム、アンジェリンはある一計を講じる。

親子の絆が紡ぐ異世界冒険譚。ついに最終章。

いやー、ほんと賑やかだなあ。

旅の終わり。されど人生という冒険は続く。

自分の後悔を引きずった過去を精算するために、かつての冒険の仲間たちを求めて今一度だけ冒険者となって外の世界へと旅立ったベルグリフ。その旅も、ついに最後の仲間サティを見つけて彼女の陥っていた危機から救うことで終わりを見た。いや、彼女をトルネラの村まで連れて帰ってようやく、終わったんですよねえ。
森の奥で泣いている赤ん坊だったアンジェリンを拾い、育て、ずっと二人で暮らしていた人生。アンジェが冒険者になると村を飛び出してからは、娘の壮健を祈りながら一人同じ毎日を繰り返す日々。
それが、旅を終えて帰ってみたら、なんて大家族だろう。小さい子供たちだけで、ビャクにシャルロッテにミトにハルとマルの双子に、五人も居ますよ。アンジェ、一応立場的には長女のはずなのに、どうにもお姉ちゃん出来損なってますなあw 小さい子たちはみんなビャクお兄ちゃんが大好きなのだ。
あのつっけんどんだったビャクが甲斐甲斐しく子供らの面倒みているの、それだけで微笑ましいというか尊いというか。シャルロッテのことずっと見捨てず守り続けていた頃から、何だかんだと優しい性分は透けて見えていたけれど、ミトたち本当に小さい子供達の面倒を見るようになってからはむやみに攻撃的な部分が見えなくなって、丸くなりましたよねえ。めっちゃ慕われてるのよねえ、小さい子らに。
対して、若干舐められがちなアンジェさんw
子供らだけじゃなくて、グラハムというじいじ役のお爺さんがいますし、でっかい子供みたいなパーシーとカシムが居て、姦しいアンジェたちのパーティーにマルグリットやヤクモやルシールといった居候もいて、そして奥さんとなったサティがいて、とほんとに賑やかなんですよねえ。
辺境の村の冬ごもりの時期は、きっとひっそりとして静けさとシンとした冷たさが季節の間中横たわっているような季節のはずなんだけれど、これだけ大人数でワイワイといるとそれだけで気分だけじゃなく暖かくなりますよ。
この10巻は戦いらしい戦いももうなく、昔の仲間達が集まり当面の問題もなくなり、ただただ穏やかな日々を過ごしていくだけのシーンが大半をしめるのですけれど、その辺境の村の何気ない日常の描写が、ちょっとびっくりするくらい瑞々しいんですよねえ。
どんな環境でも遊び場を見つけてくる子供達は元より、これまで凄惨で殺伐とした人生を歩んできただろうパーシヴァルやカシムといった面々が意外なほど飽きたり退屈したりする様子もなく、さりとて大人びた落ち着いた姿を見せるわけでもなく……いやこいつら、今更ベルやサティといった懐かしい面々と再会したんで心が若返ってしまったのか知らないけど、完全に中身子供である。でも、戦いも何もない穏やかな日常でも、彼ら全然馴染んでるんですよねえ。ベルとサティと一緒なら彼らは別に戦いの中で生きなくてもこんなふうに笑って雪かきしたり薪を割ったり、豆をより分けたりなんて単調で代わり映えしないような作業でも、こんなに活き活きと楽しそうに平和な日々を送っている。
パーシーもカシムもいずれはトルネラを出てそれぞれの行くべき所、帰るべき所に向かうんだろうけど、ベルとサティのいるこのトルネラの村は、彼らにとってもまた帰ることのできる故郷になったんだなあ、と感慨深くなった。アンジェたちが春になって活動拠点の街に戻っていったのに、こいつらは離れずにずっと居やがるしw
ただ、ミトのひたすら溜まっていく魔力の使い道で、ダンジョンの生成という可能性が生まれて、このトルネラの村の近くにダンジョンを作って発展の起爆剤にしよう、という話になっていったのは、なんかもう凄くワクワクする展開でしたね。穏やかな日常が続いたまま、代わり映えしない明日じゃなくて、見知らぬ未来が開いていく感覚。
それでいて、激変という大きな変化じゃなくて、村の人達とも相談しながら、領主の三姉妹たちとも連携して、一歩一歩踏みしめるように計画を立てていく、その慎重で実直な進展がまたこう……落ち着いた変化って言うのかな。ちゃんと色々と出てくるであろう問題点を精査しながら、地に足がついた進み方で、安定感があるというか信頼感があるというか、いっそ頼もしいとすら言えるような。
そんな中で、ダンジョンが出来るなら冒険者たちをまとめるギルドが必要になるわけだから、老若男女問わず人望が熱いベルグリフに、新たなギルドのギルドマスターをやんなさいよ、という支持信任他薦が集まっていく様子には、また別の意味でワクワクしてきたんですよねえ。
人生最後の冒険者としての旅を終えたベルグリフに差し出された、新たな可能性。主人公がギルドマスターになるってパターンは珍しくないかもしれませんけれど、だいたいそれって全盛期の力を失わないままギルマスやってて何事か起こったら前線に出ていくような立ち位置だったりするんだけれど、ベルさんみたいな本当の意味での定年後のセカンドキャリア的なギルドマスター就任(予定)ってのは主人公格のキャラクターでは見たこと無くて、なんか新鮮な感じだったんですよねえ。

また、再会後…アンジェがサティの本当の娘だったことが発覚したり、サティが育てていたハルとマルの双子の子供達を一緒に引き取った事も相まって、なんかなし崩しに夫婦になってそのまま熟年夫婦みたいに慣れ親しんでしまったベルさんとサティのために、というより二人の初々しい姿を酒の肴に面白がって弄りたいがために、パーシーとカシム、そしてアンジェたちを中心に始まったサプライズの結婚式。うん、これは良かったですよ。収まる所に収まった的な夫婦カンケイも良かったですけれど、ちゃんとプロポーズしてお互いドキドキしながら結婚を誓い合うっていうのは、若い頃にお互いの想いを実らせられないまま不本意な形で別れ別れになってしまった身の上だからこそ、何十年という間がアイてしまったからこそ、改めてお互いへの愛情への熱量を高めてほしかっただけに、うんうん二人の真っ赤になった様子は素晴らしかったです。お幸せに。幸せだなあ。

アンジェも、ベルさんを任せられるお母さんが出来て、その人が本当のお母さんで、一緒にいればいるほど大好きになる人で、というわけで安心してトルネラをあとにする事ができましたね。ファザコンなのは変わっていないけれど、秋になればまた帰ろうと既に帰る時期を考えてたりもしますけれど、それでも今まで以上に後ろを気にすること無く、前を先をピョンピョン跳ねるようにしながら目を凝らし、目を輝かせて未知を探す姿が見られるようになりました。
もっと遠くの見たことのない土地を見に行きたい。見知らぬ土地を旅して回ってみたい。それは、父ベルグリフの語る冒険者の世界に憧れて、トルネラの村を飛び出していった頃に或いは立ち戻ったような、原点回帰だったのかもしれません。マルグリットをパーティーメンバーに加えて、アネッサとミリアムの4人の娘たちで組む美少女パーティー。その行く先はまさに冒険の道。世界は大きく広がっていきそうです。……ただ、男運は全然なさそうなんだよなあ。そっちはほんと大丈夫なんだろうか。男っ気本格的に全然ないぞ!?

あらすじだと最終回みたいな文言だけど、あと1巻続くんじゃ。