【ヴァンパイアハンターに優しいギャル 2】 倉田和算/林けゐ GA文庫

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闇のヴァンパイアハンターと光のギャルが織り成す、デコボコ学園(非)日常コメディ第2弾!

ヴァンパイアハンターの起こした非日常の騒動も終え、どこにでもいるギャルの琉花は来る夏休みへの期待に胸を膨らませていた。
海に遊園地に花火はマスト。銀華と過ごす夏の計画を立てていると、二人の前に黒装束の少女が現れる。
「狩人同盟にご帰還いただきます」
少女・スエラは、戒律違反を行った銀華に一ヶ月間の監視につくことを告げる。
同盟の監視を受け入れ、刺激しないように夏の間は遊びには出かけないと言う銀華だったが――
「よーし、海に行くぜヤローども!」
銀華とスエラの仲を取り持つため、琉花は二人を海に連れ出していく!?
光のギャルと闇の狩人が織り成す、デコボコ学園(非)日常コメディ!

光のギャル聖女再び! 
初っ端、揉めてる大人の男女の仲裁にナチュラルに入って、女の人が泣きじゃくっている状況ながら一方的に男を責めずに、とりあえず落ち着かせてお互いに感情的になっていて言えなかった双方の言い分を引き出すことで、自分の何がいけなくて喧嘩になってしまったかを双方に自覚させて、自然に仲直りさせている、この相変わらずの人のネガティブを浄化してしまう琉花の聖女っぷりに、惚れ惚れしてしまった。相手を責めず、誰にも説教せず、自分で勝手にわかって勝手に解決できるように、まさに第三者として仲裁してるんですよねえ。これ凄いよな。
特に凄いのは、琉花は通りがかりで喧嘩している男女のカップルと全く何にも関係ないのに、こりゃいかんと、どうしたんですかーってな感じで割って入っちゃうんですよね。押し付けがましくなく、余計なおせっかいという風でもなく、ほんとに自然に。上から目線なんて欠片もなく。
……いや、この娘の適性ってなんなんでしょうね? トラブルを解決するという意味では弁護士かな?とちらっとも思ったのですけれど、琉花って親身にはなるけれど肩入れしすぎないというか、どっちにも肩入れするというか。味方には絶対になってくれるんだけれど、味方になって一緒に他の誰かと戦ったりはしてくれないというか。そういう意味では弁護士向きじゃない気がするんですよね。
かと言って、公平さを鑑みて裁判官か、というとこの娘、ジャッジを下すというのもなんか合わない感じがして。これほどまでに、和を結んでしまえる人の目指すべき将来ってなんなんだろう。
まあ、何が向いているか、ではなくて何がやりたいか、ではあるんですよね、きっと。
だって、向いているものになるべきだ、というのなら最強のヴァンパイアハンターである銀華は、これからもヴァンパイアハンターを続けるべきだ、って話になってしまう。
そうでなくても、銀華ってヴァンパイアハンターの組織の中では花形も花形、スターでありカリスマであり、その闇の中で輝く強烈な光に脳を焼かれた人達というのが、かなりの数いるみたいなんだ。
スエラという子が尋ねてきて銀華にお願いしたように、混乱をきたすヴァンパイアハンターの組織を取りまとめるために、銀華のカリスマ性やその性格というのは極めて「向いている」んですよね。
でも、向いているからと言ってその仕事に従事することがその人にとっての幸せにつながるのか。
銀華の師匠が、銀華を賛美するもの、信奉者、崇拝者、彼女に助けられたモノ救われたモノたちの声をこそ危険視していた、というのもこうなるとよくわかるんですよね。
銀華は彼女の意思と関係なく、偶像化の一途を辿っていた。師匠が組織に戻ってくるな、と彼女に命じた理由がそれだ。
まあでも、銀華としては師匠の命令だから従った向きもあり、その生真面目な性格ゆえに、そして組織への愛着なんかもあるがために、ボロボロになって壊れていく組織の末期を気にしているのも確かなんですよね。
琉花によって、自分たちが守った日常の楽しさ、掛け替えのなさをその身で、心で受け止め感じて、確かな幸せを得ながら、でも組織を見捨てられずに居る。
口では厳しいこと、言ってるんですけどね。既に組織は吸血鬼が絶滅してしまった以上、不要な存在になってしまった。役割を終えた組織の行く末というのは、なかなか難しいものですしね。
もう存続する必要がないのに、必要がないからといってなくなられてしまうと困る人も沢山いるし、多くの人の生きる拠り所でもあった場所を消し去ってしまう事を割り切れてしまう人は、決して多くはないのだから。
でも本来の役割を見失った組織・集団というのは往々にしてろくでもない方向に行ってしまうんですよね。たとえ、その組織を構成する人達が善良であったとしても、だ。むしろ、損益よりも理念が優先される組織のほうが、その理念の方向性を見失うがゆえにヒドいことになってしまう。
出てくるヴァンパイアハンターたち、みんな概ね善良でイイ人たちばっかりだったんですよね。でも、それにも関わらず既に各所で暴走が始まってしまっていた。前回の吸血鬼復活を目論むヴァンパイアハンターの件もそうだし、銀華を祀り上げて組織を立て直そうという今回のそれも、銀華本人の意思を問わず、一般人を巻き込む事を許容してしまっている時点で、暴走なんですよね。
本来ならこうなってしまうと、もう一線を超えてしまったということで、どうあろうと血を見る形にしかならなかったはずなんだけれど……。
ほんと凄いなあ、光のギャルの浄化は。毒気が抜かれるというか、狭まっていた視野をもとに戻してくれるというか。彼女が共感してくれると、逆に自分の正しさを疑ってしまう、というのは不思議ですよね。
銀華の崇拝者たちは、自分たちの銀華への想いを琉花に共感させて仲間に引き入れようとしたわけじゃないですか。で、実際に琉花は彼らに共感してくれたわけですよ。でも、それで不思議とメンバーの大半がむしろ冷静になって沸き上がっていた自分を省みてしまってるんですよね。
琉花を仲間無いし協力者に引き入れるつもりが、逆に侵食されてしまうという。いや、琉花は決して自分の方に引き寄せているわけじゃなくて、本当にただ相手に冷静さを、理性を取り戻させているだけなんだよなあ。元々みんな、イイ人達だから落ち着きさえすれば自分たちが暴走していること、理解するんですよね。
琉花の光のギャル聖女っぷりについては、前巻でも語りに語ったのでそちらを見ていただけると彼女の在りようというのは見てもらえると思うのだけれど、ほんとこの娘は根本に人のためになにかしよう、という無自覚の善意が根ざしてるよなあ。
とはいえ、そこからインフルエンサーになる! と明後日の方向に目標を立ててしまうあたりが、何も考えてないこの娘らしさになってしまうんでしょうけれど。いや、彼女なりに本気で真剣に考えた結果の答えなんだから、何も考えてないというのは失礼か。それに、ふわっとした目的もなくやるんじゃなくて、今回の一件でインフルエンサーとなってなにがやりたいか、という明確な目的方針が出来たんだから、飽きたからって放り出しはしないでしょう。根っこ、真面目だし。
何より、銀華と一緒にいたい、という願いを叶えるためのグランドデザインなわけですしねえ。
今回だいぶぐるぐるとガラでもなく悩んでいた琉花ですし、悩んで色々と考えること自体似合わないとしても決して意味のないことではなく、大切なことだったんでしょうけれど、その上でやっぱりこの娘はシンプル・イズ・ベストが一番似合っていますわ。自分の気持に正直に。自分のホントの気持ちを見つけることが出来たなら、そこに向けて一直線。
さながら、闇を貫く光のごとく。闇を切り開いてみんな明るく照らし出す光のように。

今回は舞台の季節が夏、という事もあって、ギャルも夏仕様。夏は夏で化粧にしても身繕いにしても着るものにしても、相応に準備や暑さや日差し対策があって、こりゃあ大変だわ。いつもこれだけ色々と気をつけながら身繕いしてるの? もう当たり前のこととしてやっているのでしょうし、何ならこれらをするのが楽しいからこそギャルやってるんでしょうから苦はないんでしょうけれど、1巻から引き続き、ギャルという存在への解像度がやたら高くてギャルに対する勉強の深さがそのへんのギャルが出てくる作品とは桁が違いそうなんだよなあ。まじでどれだけ勉強してるんだか。参考文献リストとか列挙できるんじゃないのかしらw
あまりの身だしなみの面倒さに銀華が、ヴァンパイアと戦うより大変、ってか死ぬ、と疲弊しまくっていましたが、キレイになる、キレイで居続けるって努力だよなあ。
そうやって努力しまくった結果、色々と制限ある銀華に水着着せて海連れてきて、監視の子スエラまで遊びに巻き込んで、目一杯遊び倒せたんだから、まあ大したものなのである。努力は装備で説得力だ。
まあ色んな意味で、心洗われる、浄化されるお話でした。大団円を引き寄せてくれる光のギャル、ありがたいことこの上なしでしたw