【不敗の名将バルカの完璧国家攻略チャート 1 惚れた女のためならばどんな弱小国でも勝利させてやる】 高橋祐一/つなかわ HJ文庫

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天才将軍は戦場全てを支配し勝利する!

帝国軍の侵略により、小国カルケドは滅亡の危機に瀕していた。
だが、『女の子にモテたい』という動機で戦う天才将軍バルカの登場により、戦況は一変!!

「難攻不落の城をわずかな兵で攻略せよ」
「大貴族の内乱を解決せよ」

という王女シビーユの難題の数々をバルカは涼しい顔でこなしていく――

「万一の状況も予測して、布石はすでに打ってある」

明るくチャラい『不敗の名将』は、惚れた少女の為に勝ち続ける!!
女好き天才将軍の一発逆転ファンタジー王道戦記、ここに開幕!!

これバルカくん、軽薄で浮ついていて女にモテたいがために戦っていると公言するナンパ野郎で、逆境や絶体絶命のピンチを前にしても、ここから逆転したら最高にカッコよくて女の子のモテモテだー! とヒャッハーしてるようなヤツなんですけれど……いや、将軍ともあろう男がそんな軽々しい男でいいのか、というくらいヘラヘラとして締まりの無いチャラ男風情なんだけれど……。

実態を知ってしまうとねえ。バルカという青年の本性を知ってしまうとねえ。
それが報われぬ愛と知りながら、たった一人の女性のために自分の人生のすべてを捧げている一途にして脇目も振らない男の中の男なんだよなあ。
そもそも天才将軍という所から大間違いで、才能だけでこんな無敗なんて戦果をあげてるわけじゃないんですよね。凄まじいまでの努力の男なのだ。その原動力のすべては、一人の幼馴染のため、というのがまた……グッとくるんですよね。
それが、大好きな幼馴染と結ばれるため、だったらまだわかるんですよ。でも、彼の歩む道はそうじゃないんだ。彼女を守る、そのためだけに彼は幼い頃からの望みを封じてしまっている。
モテたいモテたいと公言しながらこんな女好きのおバカになってるのって、これむしろモテない男になるためにやってるんでしょうね。やりすぎて、これが素になってしまってるかもしれないけれど、きっと本当に女にモテモテになるなんて、さらさら考えてないんだろうなあ、と。
シビーユとの昔の約束、モテる男になったらプロポーズするのを許してあげる、ですもんね。
何気に周囲の女性たちは、いや女性に限らないか。少しでも彼のことを知っている人達は、みんなバルカが自分で公言してるような女好きとは裏腹の、たった一人の相手しか眼中に入れていない男だというの、みんな分かってるっぽいんですよねえ。
おかげで、わりとバルカに好意を持っている女性は少なくないにも関わらず、彼女たちは自分じゃ割って入れないなあ、と一歩退いてしまっている。その気ないのに中途半端にコナかけるの、バルカくんけっこうヒドいことしてるよなあ、と思わないでもない。
彼が女心に疎いのは、士官学校の同期のルイーズのツンデレをさっぱり察してあげられてない時点で、まあそんなだろうね、という塩梅なのは伝わってくるし。
これは王女様の自業自得でもあるんだけれど、バルカの想い人である幼馴染の王女さまシビーユに対してもバルカくんけっこうエグい真似してるんですよねえ。結婚して結婚してと求婚しまくりながら、いざシビーユが閾値を超えてしまってバルカにすがりつきそうになったら、さっと躱してダメ出しするの、お前生殺しかよ、とちょっと戦慄してしまったくらいで。
まあシビーユとバルカが結婚できない、というのは小国カルケドを亡国にしないために必要なことであり、これってもう幼い頃からシビーユとバルカの間では共通認識が出来ちゃってるんですよねえ。
この結婚を巡る二人の茶番は、決して結ばれてはいけないというコンセンサスが取れている二人にとってのガス抜きであったのかもしれない。余計になんか溜まっちゃってる気がしないでもないけど。特にシビーユの方が。
ラストでシビーユの秘書官で天才官僚のエリッサがものすごい甘言でシビーユを唆そうとしていますけれど、シビーユがこれに乗ってしまった場合……好きな男と結ばれるために他国に戦争を仕掛けて覇権を確立しようとするって事になるんですよね。個人の幸せを掴むために、果たしてそれをやってもいいのか。わりと国民からは応援支持されそうな気もしますけれど。

さて、肝心のバルカの戦争の才の方ですけれど、彼の場合は常に用意周到なんだけれど、数撃ちゃ当たる的な用意周到さでもあるっぽいんですよね。常にあらゆる可能性を鑑みて、それに対する作戦や準備を整えている。でもこれって、無駄になる工作や物資もだいぶ出そうなやり方なので、国力の小さな小国がやるにはかなり経済ダメージとか大きそう。あと、見る限りでは対処療法が多くて、前線レベルでは主導権を握るんだけれど、プレイヤー…指し手としては後手に回ることが多いように思う。というか、他国の意図を誘導したり、この一手で先々に至るまでのルートを決定したりなど、盤面を自分の手で作り上げたり、思う通りの局面が現れるための仕込みをしていく、相手が自分の意志で決めたと思った行動は知らない間に選択肢を根こそぎ奪い取った結果だった、みたいなタイプじゃないんですよね。伝説の軍師の薫陶を受けた以上は、戦場の天才将軍として不敗を続けるだけじゃ限界が来るのはわかっているだろうし、もう一段階上の領域での活躍も見せてほしいところである。