【迷宮狂走曲 1 〜エロゲ世界なのにエロそっちのけでひたすら最強を目指すモブ転生者〜】  宮迫宗一郎/灯 オーバーラップ文庫

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伝説の陵辱RPGエロゲ【あの深淵(ダンジョン)へと誘(いざな)う声】の世界に転生したハルベルト。
ダンジョンを攻略し報酬を得る冒険者がいるこの世界では「HP0=モンスターに襲われ凄惨な目に遭う。
なのでHPを減らすのは極力避ける」のが常識だった。
しかし、ゲームの知識を持つハルベルトがとった行動は「HPを削っては回復する」という、この世界の人々を驚愕させる常識破りのレベル上げで!?
(端から見れば)狂気的な行動をとるハルベルトは「ぶっちぎりでイカれた奴」だと畏れられ始め――?
エロそっちのけで、ひたすらダンジョンを攻略し「最強」だけを追い求める異世界ファンタジー、開幕!

伝説の凌辱RPGエロゲ【あの深淵(ダンジョン)へと誘(いざな)う声】――通称「アヘ声」。
これがガチで伝説だな、と思ったのは取り敢えず穴さえあれば女でなくても、男でも老人でも動物でもなんでも苗床にされてしまうという、ある種のジェンダーフリー、種族フリー性だろう。
いや、マジで怖いよッ! 隙あらば殺されるだけじゃない、この世界のダンジョンのモンスターたちと来たら、常に人間としての尊厳破壊を狙いサダメているわけですしね。
この世界の人間が男女問わず非常に緊張感と恐怖を持ちながら、恐る恐る慎重に最大限リスクを回避しようとしながら、邪神の復活による人類滅亡を回避するためにダンジョンに挑んでいるの、気持ちとしてはよくわかるんですよね。
単なるダンジョンものと違って、冒険者ギルドの職員に対して精神的に参っちゃうから冒険者と個人的に親しくなるのは推奨しない、と公式に注意を促しているくらい冒険者の死亡率高い……死亡率だけじゃなくて尊厳破壊率はさらにもっとか。そういうのを目の当たりにしてばかりいたら、そりゃギルド職員も病みますわなあ。
つまり、そういう過酷な世界なのである。モンスターと人間の関係は明らかに捕食者と非捕食者。どちらが上位に位置しているのかは自明の理。
そんな世界で、高笑いしながらモンスターを追い回して根絶やしにしていき、HPという尊厳破壊を免れる人間たちの縋るべき最後の盾を効率重視で削っていく主人公ハルベルトは、まあこの世界の人たちからしたら理解できないブッチギリにヤベえやつ、なんですよねえ。
……いやうん、これが単に現地人と転生してきた前世の世界の記憶を持つ人間との価値観の違い、加えてゲーム廃人の効率的攻略法に対する無理解からくる認識の食い違いだったらまだ良かったのですけれど、はいハルベルトさんは明らかにアタマおかしいので転生者がみんなこんなだとか誤解しないでくださいw
ヒト呼んで「黒き狂人」。誤解しようのないくらい、どストレートにこいつアタマおかしいという意味以外無い渾名である。
これで、人当たりよくて倫理観は普通に高くて社交性も高い、というあたりが罠なんですよね。ダンジョンの外で接するとほんとモラル低い世界の中ではびっくりするくらい人当たり丁寧で気遣いの出来る人間なんですよね。まあ、それが地雷とも言えるのですけれど。
確かに、このハルベルト、アタマのネジが何本か吹っ飛んでるの間違いないんですよね。挿絵のあの完全にイッちゃった眼付きは、妙に爽やかな表紙絵の彼よりもよほどしっくりと来るのです。というか、ハルベルトに限らず挿絵でまともな表情で居られているキャラクターいないですよねw
まあ彼のヤバさというのは……そうですねえ、この全身スーツを着ていると高度2000メートルからダイブして地面に激突しても9割大丈夫のはずですが念のためにパラシュート装備して飛び降りますか? というシチュエーションで、パラシュート開いて降下するより直でダイブした方が早いから、と毎回地面に激突するようなヤツ、といえばわかるでしょうか。普通に無理です、怖いです。怖くて出来ないし、平然と何度もそれをやるやつも怖いです。
いや、それの安全性が確かめられて常識化したら、怖い怖いと思いながらもそうするのが普通になるのかもしれませんけれど、そもそも率先してリスクをリスクとも思わない精神性をこそが怖いんですよねえ。どこか頭イッちゃってないと無理だから、というレベルなんですよねえ。
ハルベルトも心の何処かでは尊厳破壊に対しての恐怖は持っているようなんですけれど、それをダンジョン攻略の楽しさ、そう「楽」で埋め尽くして少なくとも最中は完全に麻痺させてしまっている上に、自分の異常性をまったく認識していないのが、ブッチギリにヤバい主人公像を作っちゃってるんだよなあ。
そして、その狂は行動をともにしてしまったものを着実に汚染していくのである。

ウェブ連載版だと、この作品っていわゆる「ヒロイン」に該当するキャラクターが皆無! マジで皆無!だったんですけれど、さすがに書籍化するにあたってそれではあかんだろう、という意見があったのか、ヒロインが追加・改変されているのですが……まあ、主人公がアレなのにヒロインがマトモなはずありませんよねえw
ってか、まさか最初の仲間、というかペットであったノームのルカがヒロインになるとは思わんかった。完膚なきまでに思わんかった! ってか、ヒロイン化の方法が無茶苦茶すぎて笑ってしまった。笑うしかなかった、というべきか。
いや、普通のノームのままのルカは、ハルベルトの狂人っぷりに対してのキレキレのツッコミと、自分も狂人ムーブに影響されてどんどんとヤバい精神性を勝ち取っていくあたりが非常に面白いキャラクターになっていたのですけれど、ヒロイン化したことで凄まじい依存性とヤンデレ化を勝ち取っちゃったなあ。そっち方向を勝ち取っちゃったかあw
あと、もう一人。この巻の最終盤で登場することになったもうひとりのヒロインの方は、これはウェブ連載版では登場しない完全に新キャラだと思うのですけれど……ラスボスじゃん! こいつラスボスじゃん! そして、ラスボスとわかったうえでハルベルト氏、この狂人野郎、ファーストコンタクトで相手にまともに一言も発する暇も与えずにいきなりボコボコにして捕縛しやがったw
けが人のフリして倒れていた女の人を、有無を言わさずフルボッコにしやがったw
だからやりかたーー。

ともあれ、ハルベルト氏のこの普通にモラル高い穏やかな人格から一瞬でやべえ狂人とかしてヒャッハーする、この1と100の極端から極端への反復横跳びのキャラクターがもう筆舌にしがたい濃ゆさで、そんな彼に振り回されるこの世界の人々の「あばばばばば」と白目剥いたような有様が、なんとも楽しい、楽しむしか無いとりあえずアヘ顔でピース決めてもいいんじゃないかな、と思える怪作でした。
ハルベルト氏、これで善人であることは間違いなく、人助けにも躊躇しないし何だかんだと彼に助けられた人も多くて、ほんと頭おかしい以外は素晴らしい人間なんですよね、頭おかしいんだが。
ちなみに、この増殖したヒロイン以外は、ハルベルト氏のパーティーメンバーは全員むくつけき男である。オッサン率非常に高いのである。いや、あれおっさんじゃないのかな。三兄弟若いのかな? 若いけど、三兄弟は世紀末ヒャッハー系だろ、これ。アーロンはなんか思った以上にイケメンでちょっとびっくりした。一番常識人で苦労人である彼はもっとしぶいおっさんのイメージがあっただけに。でも、若い妹がいるだけに一回り年上でもまだ20代なんだよなあ。
そんな本来はこの世界の人間の常識を持つはずだったアーロンたちが段々とハルベルトに染められていき、狂人扱いはハルベルトだけだったのがそのうち狂人集団として周知されていくの、可哀想と思うべきなのかおめでとうというべきなのか。ちょっと迷うw