今月は【TS衛生兵さんの戦場日記】がついに登場。これはもう本当にヤバいので是非読んで欲しい。1巻の描かれるあたりだとまだ普通のこの世の地獄程度かもしれないけれど、先に行くほどそこまでするかというような展開になってきますんで。


【TS衛生兵さんの戦場日記】 まさきたま(エンターブレイン)

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ファンタジーの世界でも戦争は泥臭く醜いものでした

トウリ・ノエル二等衛生兵。彼女は回復魔法への適性を見出され、生まれ育った孤児院への資金援助のため軍に志願した。しかし魔法の訓練も受けないまま、トウリは最も過酷な戦闘が繰り広げられている「西部戦線」の突撃部隊へと配属されてしまう。彼女に与えられた任務は戦線のエースであるガーバックの専属衛生兵となり、絶対に彼を死なせないようにすること。けれど最強の兵士と名高いガーバックは部下を見殺しにしてでも戦果を上げる最低の指揮官でもあった! 理不尽な命令と暴力の前にトウリは日々疲弊していく。それでも彼女はただ生き残るために奮闘するのだが――。

まずはこれ、先ず以てこれ。【TS衛生兵さんの戦場日記】である。浪漫など欠片もない戦争の地獄を、悪夢を、絶望を、これでもかと描き切った傑作である、WEB版読了済み。
いやもうこれ、ほんとに地獄に地獄を折り重ねて地獄めぐりするような内容なんだけれど、不思議とめちゃくちゃ読みやすいんですよね。鬱になりそうな展開ばかりで実際もう心砕け散りそうなストーリーなんですけれど、なんでだろう、心が落ち込むと言うよりもなぜかテンション上がってしまうんですよ。あまりにも残酷な話に、逆に思わず笑いが込み上げてくるというか。あまりにも地獄すぎてハイになってくるというか。トウリの地獄耐性の強さにも寄るのでしょうけれど。決してトウリも耐えられているわけじゃないんですが、というか話が進むに連れて地獄度が増していき着実に壊れていくんですけれど、彼女のゆく道には惹かれ引き込まれていく。まだ1巻では戦争という地獄の当たり前の部分、戦場に立つ兵士たちの誰もが体験し戦争に巻き込まれた民草が当たり前に味わうこの世の地獄に直面するくらいなので、もう止めてあげて! 勘弁して! と読んでるこっちが土下座して請い願うくらいの話まではまだまだ届かないのでしょうけれど、なんとか続いてほしいものです。
ただの一兵卒として戦場に立ちながら、戦争という地獄の核心へと踏み込んでいく彼女の地獄行脚を是非ご照覧あれ。


【かくて謀反の冬は去り】 古河絶水(ガガガ文庫)

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TYPE-MOON武内崇氏の“推し”!
王弟、奇智彦(クシヒコ)尊殿下。王室の忌み子。弱小王族。足曲がり。サメの王子。
奇智彦は軍の式典で、帝国から祝いの品として送られてきたそれと対面する。
女奴隷、シニストラ。美しき獣。熊の巫女。おそるべき犯罪者。
意志とちからはここに出会い、王国をあらたな争乱が包み込む。
兄が、死んだ。王が、死んだ。ならば――次の王は、誰だ?
奇智湧くがごとく、血煙まとうスペクタクル宮廷陰謀劇!
ガガガ文庫の新人賞審査員特別賞作品。なんだけど、大賞と優劣なし、とまで選者が述べているように、ガガガ文庫からもかなりの推しの強さが伺えます。なんかPVとかまで出てるもんなあ。非常に面白そう。





【暁の魔女レイシーは自由に生きたい 2 〜魔王討伐を終えたので、のんびりお店を開きます〜】 雨傘ヒョウゴ(オーバーラップノベルスf)

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夏を迎えた「何でも屋」に、聖女来訪!?
季節のお悩みも、仲間の困り事も全部解決してみせます!

魔王討伐の褒美として、自由に生きることを願った暁の魔女レイシー。
プリューム村で何でも屋「星さがし」をはじめるが、なかなか依頼の来ない日々が続いていた。
丘の上にある屋敷で悩んでいると、見かねたアレンに連れられ村に下りることに。
そこでは……夏の「暑さ」というお悩みが待っていた!
話を聞くと、暑い時期は食糧の保存に困っているという。
特に畑に出る村人に持たせる昼食が味気ないものになっているらしい。
その話を聞いたレイシーは依頼として引き受け、「保冷温バッグ」という魔道具を作りあげる!
冷気や暖気を閉じ込める鞄は、村人のお悩み解決はもちろん、商人の手で国中に広がっていき――!?
その頃、レイシーからの手紙を受け取った聖女ダナがプリューム村に向かっていた。
癒やしの力を使い活躍しているダナだが、自分では癒やせない、ある悩みを抱えているようで……?
臆病な最強魔女の『何でも屋』ライフ、第二幕!
これ、1巻がとても素敵なお話でねえ。魔王討伐した勇者パーティーの一員でありながら、生きる目的を持てなかったレイシーが少しずつ人として成長していく。いや、人になっていく過程を、甲斐甲斐しく世話するオカン勇者アレンくんw この二人の関係が甘酸っぱくてねえ。人の心の移ろう様子の描き方が実に繊細で情緒深く素敵な作品です。めっちゃ好き。


【魍魎探偵今宵も騙らず】 綾里 けいし(MF文庫J)

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魑魅魍魎にまつわる事件――此処に人の騙りはあるか?

常世とこの世が完全に繋がって十年――。
幽霊も妖怪も幻獣も精霊も、あらゆる怪異は人間の隣人と化した。
人の世は姿をがらりと変え、魑魅魍魎がそこかしこにあらわれて混沌と化していた。
無論、妖怪絡みの犯罪は後を絶たず、その解決を生業とする者が出てくることは必然で。
『魍魎探偵』
そう呼ばれる男は、今宵も助手の美少女とともに妖に関する事件に向かう。
依頼人からの手紙にはこうあった。
「自分は人魚です。このままでは喰われる。助けてください」と。
しかし向かった先の旧家では、人魚はもう一年も前に食べてしまったらしく……。
魍魎探偵が騙る、事件の真相とは――?
常世と繋がっちゃったの!? 表にも魑魅魍魎や怪異が溢れちゃってるって、綾里さんの作品のこれらってガチでヤバいのばかりのはずなんですが、この世終わったなw
あと、なんか普通に魍魎探偵って女性の方だと思ってたら男性の方なのね!? 綾里さんの作品だと、だいたい女性の方が主体で男性の方は助手とか付き人側だったから結構意外かも。
ってか、魍魎探偵も助手の娘も、あらすじで名前すら出さないってこれはこれで凄いな。