【前世魔術師団長だった私、「貴女を愛することはない」と言った夫が、かつての部下】  三日月さんかく/しんいし智歩 GAノベル

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
「私に『この戦が終わったら、貴女に伝えたいことがあります』って言ったじゃん。覚えてる? あれ、本当はなにを伝える気だったの? 私、死んじゃって聞けなかったけど」

稀代の女傑令嬢オーレリアは、救国の英雄であるギル伯爵と白い結婚をする。
結婚初夜、オーレリアはギルが前世で自分の部下だった事を告げると、
彼の態度が豹変し―――



「この戦いが終わったら、貴方に伝えたいことがあります」
リドギア王国魔術師団長だった私ことバーベナは、
少年ながら優秀な部下のギルにそう告げられる。
しかし、その戦いで私は自爆魔法を使い戦死したのだ……。

その後、リドギア王国内で転生した私は、貴族令嬢オーレリアとして暮らしていた。
そして戦争を終わらせて英雄となった、成人したギルとの縁談が持ち上がる――。
一度も会わないまま結婚したその夜、ギルは私にこう言った。
「僕にはずっと昔から心に決めた人がいます。僕たちは白い結婚でいましょう」
だから、私はバシッと答えてやった。
「婚姻関係は了解。ところで『貴方に伝えたいこと』って何だったの?
死んじゃって聞けなかったけど」

これは、天心爛漫な令嬢オーレリアと残念系イケメンのギルが紡ぐ、
楽しくも騒がしい新婚物語。



いやこれほんとに、あらすじだけでここまでガッツリとウケたのはじめてかもしれない。
あんまりにもこのあらすじに描かれたメインの二人の会話が酷くてw いや、だって酷くないですか!?
オーレリアさん、もうちょっと、もうちょっとだけでいいから相手の気持ちとか考えたって!?
この娘、なんかもう生き方というかあり方が雑というか大雑把なので、自分が戦争末期に殉職した魔術師団長の生まれ変わりだというの、まったく隠してないんですよね。家族にもぶっちゃけてますし、別に大っぴらに公言はしてないですけれど敢えて隠そうともしていない。
いないんだけれど、そもそも言動からして雑で大雑把で三度の飯より爆破魔術が大好きなやべえ娘さんなので、家族にも転生? 若い子がかかる中二病なあれね?ワロスワロス。みたいな感じで誰にも信じて貰えてないでやんの。これで家族仲は凄く良くて、両親兄妹からも愛され慕われ可愛がられているのだけど、それはそれとして概ね頭がおかしい娘と認識されていてそれは間違っていないので、信用は一切ないんですよね。素面でもやべえのに酒なんぞ呑ましたらどうなるかわからんから絶対飲酒禁止令が、真面目に家族間で出されてるくらいだからなあ。
まあ、実際やべえくらいの酒飲みになるんですが。
とかく、そういう雑で大雑把で頭がおかしい系美少女なので、元部下のギルに対してもハナから全く隠す気も勿体ぶる気もなく、ギルくんがわりと深刻に自分には心に決めた人がいるので貴女を愛することはない。今後も白い結婚で居ましょう、と提案してきてるのを、おおそーなんだー、この子ってばいっちょ前に好きな子居たのねえ。誰だろ私の知ってる人だろうか。とか思いながらも私達の結婚に関しては了承した。とあっさり流して
「そんなことよりさぁ」
そんなことよりさぁ、である。
で、「私に『この戦が終わったら、貴女に伝えたいことがあります』って言ったじゃん。覚えてる? あれ、本当はなにを伝える気だったの? 私、死んじゃって聞けなかったけど」というコメントである。
いやこれ、ほんとに酷くない!? 酷くない!? ひどすぎて爆笑しかないんですがw
せめてせめて、自分はバーベナの生まれ変わりです、とか告げてから言ったげなよ。いきなり、これからの結婚生活お前とまともにする気ねえから、と告げた相手から、そうかそうかわかったよ。了解了解。そんなことよりさぁ、でこれである。
ギルくん、これ死ぬぞ。実際、死にかけてたし。メンタル死にかけてたしw
ギルくんの顔色がやべえことになって、息も絶え絶えにまさか貴女はバーベナ、なんですか!? とそりゃもう信じがたい事実に頭真っ白になりながらこの問いかけをするのに全身全霊を奮い立たせて訪ねて、どんな応えが返ってくるかと思ったら
「あ、うん。バーベナ。私、生まれ変わったんだよ」
雑ぅぅ!! 返答がもう雑ぅぅ!!
でもそれでギルくん、「重要なことを適当な態度で伝えるところは、完全にバーベナですね」とむしろ納得しちゃっているあたり、この人前世からこんなんだったのね、と。
どう考えても魔術師団長みたいな偉い人向いてないだろ、この女。まあ戦争の結果、上役同僚みんな戦死してお鉢が回ってきてしまった、という感じでまあ周囲も組織の長には向いてるとは欠片も思ってなかっただろうなあ、というのは魔術師団の平隊員から長時代の回想でもだいたい伝わるw

ただ、その明るく前向きで大雑把な性格はまさに陰気を吹き飛ばす陽の塊みたいな人で、他人から好かれる人ではあったんですよねえ。ギルくんも幼少の頃からヒドい境遇で育ち人生において「楽しい」ことなんて何も体験してこなかった所から、バーベナと出会って彼女を起点にして人生の中に「楽しい」という感情が生まれ、はじめて味わった、というくらいですからねえ。
そりゃもう、人生の中の初めてにして唯一の光。思い詰めてバーベナがすべて、となっても仕方ないんだろうけれど、それはそれとして望まぬ政略結婚とはいえ恩人の娘でもある相手に失礼な態度を取り続けていい理由にはならないんですよね。
おおかたギルくんの自業自得なんですよ。どうしても結婚するの嫌なのにしがらみから結婚しなければならなくなって、とはいえほんとに嫌なので結婚前の挨拶とか面通しとかもせず、かなりヒドい対応してたわけですから。バーベナことオーレリアとしても結婚相手としてひどく蔑ろにされて、激おこではあったんだ。
せっかくの想い人との結婚を、事前の準備から何から全部ぶっちして放ったらかしにして実際の結婚式も適当に流してしまう、という痛恨の一撃。その後の結婚生活も、ギルのあまりにも拒絶感出しまくってた態度にオーレリアのパパさんも、しばらく結婚生活続けてどうしてもあかんかったら離縁して戻ってきていいよ、と言ってくれている、まあお別れ前提の婚姻になってしまっていたという。
バーベナことオーレリアも、ギルに好きな人がいるなら、別れたげるしむしろ応援するよ、頑張れーー! と声援を送ってくれる始末。
まあ全部あんたが悪いよね、ギルくんよ。どうしようもなく自業自得である。七転八倒してのたうち回って後悔するギルくん、わりとあれである、ザマぁであるw

とはいえ、オーレリアもギルくんの態度の悪さに怒ってはいたものの、それは可愛い部下、というか弟分の不始末にこりゃちゃんと説教くらわしたらなあかんなあ、という愛情ゆえのお怒りでしたし。
前世ではだいぶ年下で子供の自分から育てたよなものであるギルのことを本当に可愛がってて、家族同然だった魔術師団の中でも実際の弟のように慈しみ愛情を注いでいた子でしたからね。
それが家族愛であったとしても、彼との結婚は全然嫌がってなかったですし。なんなら、魔術師団の主だった面々がみんな死んでしまったトドメに自分も自爆して、ギルだけ残して死んでしまうという可哀想な目に合わせてしまった事を悔やんでましたし、いっちょ私が幸せにしてやらんといけんのう、というなんかオトコマエな姿勢で結婚自体にはかなり前向きだったんですよ、オーレリア。
一方のギルの方も、大いにやらかしまくって結婚にケチつけてしまったとはいえ、もう二度と会えないと諦めていた愛しい人が生まれ変わりとはいえ自分の目の前に戻ってきてくれて、しかもなんか知らん内に自分と結婚していた、というこれなんという棚からぼたもち!? みたいな状況でしたからね。後悔にのたうちまわりながらも有頂天で幸せの絶頂、というかなり錯綜したありさまで、当初のクールで感情を見せない冷徹な男性というスタイルは影も形も残りませんでした。
うん、その後のオーレリア好きすぎて若干脳みそ沸いてますね、という感じ……オーレリアの家族公認の愛が重すぎる危険人物な残念イケメンに成り果てるのですが、それを上回るオーレリアのやばさがフルスロットルで、色んな意味で笑いが止まらず。
いやこの子、16歳ですでにアル中っぽいし、その上どんな魔術を使っても爆破魔術になってしまう、そして爆破大好き! 事あるごとに爆破、建物を見るとどう爆破するか考えてしまうほどの爆破マニア。一日最低一度は爆破しないと気がすまない、というほぼ完全に「頭のおかしい爆裂魔法使い」の系譜である。
とはいえ、ギルのプレゼントのファッションセンスのあまりのダサさに苦悩しまくりつつ、その無邪気な愛を苦渋を噛み締めながらも受け取るという、常識人というかオトコマエなところはあれでしたよ、うん、かっこよかった。
夜会であまりにもダサすぎるコーディネートを揶揄されて、それを毅然とあしらいつつも、最後の最後に悲痛な叫びで「これはギルのプレゼントなんだよぉ!!」と宣ったあのシーンの生ぬるい空気感は、色んな意味で最高でしたw いや、オーレリアの方も大変だな、これ。
そんな凸凹コンビな新婚夫婦ですけれど、元々好感度はマックスだったわけで。オーレリアの方もギルへの愛情が家族愛から夫に対してのものへとなめらかに変化していって、ちゃんとラブラブな新婚夫婦になっていく姿は微笑ましい限りでありました。まあオーレリアさん、ギルに対してかわいいかわいい、というのは一貫して変わってなかったような気もしますけれど。ってかラストの挿絵、お姫様抱っこされてるのギルくん32歳の方なんですけど!?w
いやー、このノリ、最後まで楽しさ満載でした。面白かった!