【暁の魔女レイシーは自由に生きたい 2〜魔王討伐を終えたので、のんびりお店を開きます〜 】  雨傘ヒョウゴ/京一 オーバーラップノベルスf

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夏を迎えた「何でも屋」に、聖女来訪!?
季節のお悩みも、仲間の困り事も全部解決してみせます!

魔王討伐の褒美として、自由に生きることを願った暁の魔女レイシー。
プリューム村で何でも屋「星さがし」をはじめるが、なかなか依頼の来ない日々が続いていた。
丘の上にある屋敷で悩んでいると、見かねたアレンに連れられ村に下りることに。
そこでは……夏の「暑さ」というお悩みが待っていた!
話を聞くと、暑い時期は食糧の保存に困っているという。
特に畑に出る村人に持たせる昼食が味気ないものになっているらしい。
その話を聞いたレイシーは依頼として引き受け、「保冷温バッグ」という魔道具を作りあげる!
冷気や暖気を閉じ込める鞄は、村人のお悩み解決はもちろん、商人の手で国中に広がっていき――!?
その頃、レイシーからの手紙を受け取った聖女ダナがプリューム村に向かっていた。
癒やしの力を使い活躍しているダナだが、自分では癒やせない、ある悩みを抱えているようで……?
臆病な最強魔女の『何でも屋』ライフ、第二幕!



読んでる間中、ひたすらほわほわと気持ちがあったかくなり続けてでしたよ、これ。
このクソ暑い酷暑の日々だけれど、心だけはどれだけポカポカ温まっても暑くてへばることがないのでいくらでもハートウォーミングしていいのよ?
しかし改めて読み直してみると、この作者さんの語り口ってちょっと独特なところがありますね。普通の情景描写なんですが、擬音の使い方や文章表現の絶妙さなのか、語呂のテンポの良さもあるかもしれない。どこか読んでいるだけで空気感がほんわかしたものになるんですよね。
そんなポップで明るいのにどこか落ち着いた穏やかな温もりの空気感の中に、登場人物のそれこそ鈴を転がすような心情描写が収まると、一気に物語そのものが彩りが色めいていくようなのです。
ひたすらキュンキュンほくほくしてたなあ。レイシーの目まぐるしく移ろっていく感情、不安だったり驚きだったり喜びだったりが、瑞々しいばかりに伝わってくる。彼女だけじゃない、レイシーから手紙を貰って会いに来た聖女ダナの、パーティー解散以来の再会への不安と期待。予期せぬ出来事にレイシーに対してワクワクが抑えられなくなったり、一緒に旅をしている頃には見たことのなかったレイシーの新たな側面に驚き喜ぶ、こうすごくいい人だなあと伝わってくる描写表現。レイシーのこと本当に心配して気にかけていて、色々と考えてたんだなあってのがもう色んなところから垣間見えるんですよね。
勇者パーティー、本当にいい仲間たちだったんだなあ。そんでもって、すべてが終わって解散したあとに、当時以上に打ち解けて心寄せ会える友達に改めてなれるって、とても素敵なことじゃないですか。
ダナと最後の夜に一緒のベットの中に入って、自然と眠ってしまうまで色んな話をするシーン。口下手なレイシーが一生懸命いろんなことを話すのを、ダナが聞き上手に相槌を打ちながら聞いているシーン。すごく素直に自分の気持を、もう一度会えて嬉しかったっていう、気持ちをあのレイシーが口にするシーン。なんかねー、すごく好き。あーーたまんない。ほかほかする。

大したもんだと思うのが、やっぱりウェインですよ。勇者ウェイン。この男、魔王討伐パーティー組んで旅していた頃から、コミュ力皆無で他の面々と積極的に関わろうとしない……まあ、まともな人間扱いされず育った故に対人経験なかった上に内向的だったがゆえなんですが、当初はそんなレイシーにあれこれと話しかけてコミュニケーションを図ろうとし、パーティと馴染ませようとあれこれとかまっていくうちに、なんだか放っておけなくなってどんどん甲斐甲斐しく世話するようになり、果てはもうお母さんか! というくらいのおかん系勇者にジョブアップしてしまうのですが。
それはそれとして、レイシーへの構い方に関してもあれこれとグイグイ無理押ししていくんじゃなくて、ある程度レイシーの性格みたいなものを把握して以降は、ウェインって話しかけてもうまく言葉を返せないレイシーに対して、一切急かしたり促したりせずレイシーが話す、返事する言葉を見つけて噛み締めてそれを口にするまでの長い時間を、ずーーっと待ってるんですよ。
無言というプレッシャーすら与えずに、自然に穏やかに会話のテンポが間延びしようが変な空気感にせず、待ってるんですよ。レイシーの言葉を、レイシーの話を。
こいつすげえな、って思いましたよね。
若いみそらでこういうのちゃんと出来るやつはなかなかいないですよ。彼の場合は決して義務感や責任感ではなく、ほんと自然にレイシーと話したいから。レイシーが会話するという事を嫌に思わないように、という思いやりもあったんでしょうけれど。
これ、魔王討伐のあと何だかんだと不器用でも拙くても他人とちゃんと会話できて、コミュニケーション取れるようになったのって、完全にウェインの尽力ゆえですよねえ。
そんなウェインに対して、レイシーが当初抱いていた気持ちは感謝と申し訳無さ。まあ、あれだけおかんさながらに面倒見て貰ってたらねえ。何だかんだと忙しい元勇者(伯爵家の嫡子じゃない子供なので、勇者の権威はあっても国の中では結構使いっぱしり扱いなんじゃなかろうか)の身の上でありながら、休暇は全部レイシーの所に来ることに費やしている、という構われっぷり。わざわざ休みの日に遠出してきて、ご飯とか作ってくれるわけですよ。放っておくとろくに食べない家事しないレイシーのために、ご飯作りにきてくれて家事してくれて、そしてまたお仕事のために行っちゃうわけですよ。
そりゃ、レイシーも独り立ちせなあかん、と思ってしまうのも無理からぬところ。ウェインとしては好きでやってるので、下手に独り立ちしてもらわんでもいい、という所なんでしょうけれど。
ウェインの方はこれ、自分のレイシーへの気持ちに付いてはある程度自覚あるんでしょうね。レイシーの身近に現れた、年頃の男性。行きつけの食堂の店主であるセドリックに、やたらと突っかかってたのもジェラシーっぽかったですし。まあ、おかん系勇者としてレイシーの食事は全部自分が面倒見てあげたい、という独占欲がちらほらと垣間見えましたが。
まあそういう、仲間というよりも家族、というかおかん? というウェインへの意識もだんだんと変わってきたのが前回のラストあたりでしたか。それが、さらに時間が重なり、レイシーが魔導具づくりの才能を開花させて、ちょっとずつ出来ることを増やし、引っ越した先の村の人達との交流を深めていくなかで徐々に精神的に成長していく中で、自分のなかのウェインに対する気持ちの変化にも段々と気づいていくわけですな。
ほんわかとした中にも甘酸っぱさが染み渡っていく、この二人の距離感。いいなあ、たまらんなあ。
レイシーのペット、というかもう家族ですね。不死鳥のティーとイノシシくん、この動物コンビがまた賑やかで、そのコミカルな落ち着きの無い騒がしさが微笑ましいんですよね。
この子らの感情表現のダイナミックさは、アメリカのアニメの動物キャラのそれを思わせる元気いっぱいさなんですけど、それが可愛いんだ。レイシーの家の住人として、なんていうか、レイシーとウェインのうちの子供、みたいな家族感があるんですよね。イノシシはまたちょっと別ですけれど。

聖女ダナの訪問、そしてレイシーが作った日常生活の中で非常に便利な魔具が全国的に流行して、謎の作り手による密かなブランドとしてアステールの名が売れだす中で、ついに村の人達にレイシーの正体が暁の魔女としてバレる……別に隠してなかった気もするけれど、世間的に知れ渡っている暁の魔女の風貌とレイシーの姿は全然違うので、誰もレイシーのことを暁の魔女だと思わなかったのですが。
そんな正体が知れわたる中でも村の人達は変わらずレイシーを村の仲間として受け入れてくれて、魔女が暮らしそこに勇者が帰ってくる何でも屋の屋敷は、村の風景の一部として馴染んでいく。
さて、いつ魔女と勇者が本当の家族になるのかは、まだ定かではないのだけれど。そんな彼らの騒がしくも穏やかな日々を描いた、魔王討伐後の勇者パーティーの物語。
まだもう一人、パーティーの仲間が登場していないっぽいので、その人との話しも是非見てみたいなあ。
なんかもう、読むほわほわ、みたいな描写力表現力の鮮やかな、幸せを感じさせてくれる作品でした。