【祓い屋令嬢ニコラの困りごと】  伊井野いと /きのこ姫 DREノベルス

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第1回ドリコムメディア大賞《金賞》受賞作
「お憑かれ様です勘弁してください本当に」
前世は祓い屋。優秀だけど面倒事ばかり。
これは人や人外から厄介事を引き寄せてしまう令嬢がいつか幸せになるまでの物語。

その令嬢、前世、非凡な才能を持つ祓い屋!?
不幸な死から西洋風の異世界に転生した子爵令嬢ニコラ・フォン・ウェーバー。そんな彼女は、ニコラの前だけ甘えたな美形侯爵ジークハルトとの再会をきっかけに、厄介事に巻き込まれてばかり。人にも人外からも好かれてしまう彼の面倒事を祓い屋スキルで解決する日々を送る中、今度はジークハルトから身分差違いの求愛を受けて波乱の予感……!?
「婚約するのも結婚するのも、私はニコラ以外嫌だよ」
ドタバタなあやかしライフと、たまにじれったい恋愛を添えて――これは平凡な日常を求める彼女が、いつか幸せになるまでの物語。

幼い頃に、悪いモノに憑かれて怯え消耗しきっていた侯爵家の嫡男ジークハルトの様子を見かねて助けてしまったのが運の尽き。
子爵家令嬢ニコラは、やたらと人外や霊に纏わり憑かれてしまう体質のジークハルトに懐かれて、以降この目を離すとすぐに霊障に見舞われてしまう年上の幼馴染の面倒をみることに。

作品の雰囲気自体、なかなか面白くてねえ。舞台となる世界観は完全に洋風のファンタジーなんですが、その中で起こる霊障のたぐいは地縛霊だったり生霊だったり都市伝説的なものや学校の怪談的なもの。或いは悪魔だったり呪詛だったり。洋物のゴーストバスター風じゃなくて和風のオカルト風味なんですね。
前世では祓い屋として活動していたニコラが手掛ける術も霊能者や除霊師的なもので、式神みたいな術も使うけれど古式ゆかしい術式大系に基づいたものというよりも、現代の都市の裏側でせっせと稼ぐ霊媒師みたいな感じなんですよね。実際、雑居ビルの一室に事務所構えた祓い屋の師匠のもとで依頼を受けて除霊していた、まさに現代の拝み屋、祓い屋という仕事をしていたみたいですしね。


冒頭の話もジークが生徒会役員として長期休暇中も学校に登校して仕事をしていたら、いつの間にか自分の知らないところでもう一人の自分が存在していて、段々と自分の居場所を乗っ取っていく……というドッペルゲンガーなホラーから話が始まりましたからねえ。
洋風ファンタジーだけどこれ学園ホラーものだ! いや、ホラーというほど怖さを追求したものではなく、祓い屋ニコラが学内のオカルトトラブルを解決していく学園オカルトものというべきなんでしょうけれど。
この洋風の舞台の上で繰り広げられる和風オカルトという異種混合が思いの外しっくりと馴染んでいて、和洋折衷テイストの学園ものになっていて面白いですし。

それ以上に素晴らしかったのが、やはりニコラとジークの幼馴染関係でしょう。その圧倒的美貌で生者どころか死者も人外も神も妖精もなんでも引き寄せてしまう超絶美形のジークハルト。
身近な人間以外にはその玲瓏な顔を無表情の人形のように動かさないクールなイケメン貴公子として知られているのだけれど、ニコラの前になるともう飼い主が大好きすぎて嬉ションでもしそうな勢いで尻尾を振りまくる大型犬、みたいな感じになっとる!
一応あなた二歳年上のお兄さんでしょ? と言いたいくらいに、ニコラにべったり。構って構ってと甘えまくるのである。実際、けっこう鬱陶しいw
ニコラの方もいい加減うんざりしてるんだけれど、どうしてもこの年上のワンコな幼馴染を見捨てられないんですよね。見捨てられないどころか、わりと甲斐甲斐しく面倒見てるんだよなあ、辛辣で突き放した態度とは裏腹に。
まめまめしくジークの霊障対策のお守り作って渡しているし、けっこう心配して様子見に行ってるみたいだし。
めちゃめちゃ懐かれ構われるの、鬱陶しいなあと思いながらも、何気にあんまり逃げないし嫌そうな顔をしながらもジークのなされるがままにしてるんですよね。
普通幼馴染でも、それなりに年頃になったお嬢さんを膝の上に抱えあげて座らせて肩とか頭にあご乗せたり、抱きしめてスリスリとかしないでしょw いや、いったいどういう距離感なんだこれ!
そんなジークのなさりようを、渋面になりながらも何気に無抵抗でされるがままになってるニコラさん。いや、拒否しないんかい!
もう絵面が見てくれはいいけど甘えん坊な大型犬と、そのワンコが抱えて離してくれずにペロペロ舐めてきたり鼻でツンツン突いて戯れてくるのを、虚無顔でされるがままになってる猫(ときどき鼻面に猫パンチ喰らわす)という構図である。
実は、ジークのイケメン顔、顔が良すぎる!と眩しさに眼が潰れそうという仕草してるけど、ニコラさんけっこうジークの顔好きでしょw
あらすじだと、急に求婚してきたみたいに書かれているけれど、実際は幼い頃からずっとニコラと結婚する! と言って聞かなかったパターンなんですよね。いや、けっこう行動だけみると気持ち悪いよ、ジークくんw ただ、この男若くして侯爵家継いだだけあってネゴは辣腕で、外堀ガンガン埋めて言ってる上に、ニコラも何だかんだとまんざらではなさそうなんだよなあ。
ただ、身分違いの結婚はやはり難しく、貴賤婚になってしまうのでニコラとしてはまあ現実としてはジークがどれだけ結婚したいと言っても無理だよね、という姿勢なんだなあ。ジークとしては、いざとなれば駆け落ちも辞さず、とガチで準備してやがるのですが、ニコラはジークはちゃんと貴族してた方が似合うんだよなあと前向きではないんですよね。
ここらへん、ニコラのジークへの過保護っぷりがうかがえる。彼女の愛情って、独占じゃなくてかなり与える方に寄ってるっぽいんですよね。普段のニコラの姿勢って面倒なのやだなあ、というどこかダラッとした所がうかがえますし、貴族や王族の御曹司たちに対してズケズケ言いたいことは言ってのけるし、かなり雑な態度も取ってるのですけれど、実際はジークのみならず親しくなって庇護対象と認識した好奇心いっぱいのこれまたワンコみたいな王太子アロイスくんに対してもかなり面倒見良いところみせたように、かなり甲斐甲斐しく世話好きっぽいんですよね。んで、あんまり見返りを求めない。
ジークがニコラに対してあれだけ構って構っての甘えん坊になったのも、なんとなくわからないでもないんですよね。面倒見いいわりにこっちから積極的に行かないとススっと遠ざかっていきそうな所ありますし、うまいこと適切な距離取られてただの祓い師とその被対象者というくらいの関係にがっちり安定させられてしまいそうな所ある。
ちょっと強引なくらいにベタベタと甘えるようになったのも、ジークの中に切迫感みたいなものがあったんじゃないだろうか。まあ、ワンコ気質なのも間違いないだろうけれど。
実際、ラストのあのジークを守るために、あれだけの覚悟見せられてしまうとね。ニコラがあんな責任感感じる必要、ないと思うのだけれど、ニコラの幼馴染としての覚悟と元とはいえプロの祓い屋としての覚悟、ケジメ。これをあの切羽詰まった状況で腹を決めてしまえるあたり、ジークがこの娘は離さないようにしておかないと、と思うのもほんとわかるんですよ。


一連の事件の黒幕に関してはわりとすぐわかるようにはなっていたんですが、さすがにその動機についてはかなり予想外にぶん殴られました。ええ、そういうことだったの!?
……しかし、これ意識ないニコラの面倒、ジークたち三人で見てたってことですよね。おそらく、アロイスとエルンストには触らせなかっただろうから、大事な世話は全部ジークがやってたんだろうなあ。こいつ、すげえなw あと、寝ている飼い主のベッドに潜り込んで同衾してるのは完全にワンコすぎて、やばいですよコイツw

蠱毒についての意外と知られていない効果に関しては、まさかこういう形で作用するとは思わなんだ。単なるうんちくの一つだと思ってた。
これで万事ハッピーエンドかと思ったら、まだ一波乱あるみたいですし、次巻が楽しみ。これまでジークとの関係について本格的に向き合うことを避けてたニコラがかなり受け入れちゃったので、これからラブコメ展開もさらに濃厚になってきそうですし。
ニコラの容姿凡庸なのは間違いないみたいですけど、なんかかなり化粧映えするらしいフラグ立ってましたしねえ。あと、本来のこの世界のヒロインの存在が見当たらないだけに、果たして恋のライバルというかおじゃま虫というか、別の人とのカップル要員みたいな女性キャラは出てくるんだろうか。
オカルト要素もほんと面白かったので、いずれもパワーアップした形での2巻期待してしまいます。既に先月、新刊出てるみたいですし。