【異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない 〜人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?〜】  中島リュウ /キッカイキ オーバーラップ文庫

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「人狼って推理するより、全員殺した方が早くない?」
「そんなわけなくない?」

「人狼って推理するより、全員殺した方が早くない?」
「そんなわけなくない?」
人に化け人を喰う怪異『人狼』が跋扈し、その魔の手に抗い『異端審問官』が戦いを繰り広げるイギリス。
日雇いで働くジョンは仕事の最中、人狼を狩る異端審問官の少女シャーロットと出会い――そして殺されかけた。
間一髪で本物の人狼を導き出したジョンはその観察眼を買われ、『推理しない』審問官シャーロットとバディを組むことに!?
最強の審問官を目指すシャーロットの猪突猛進ぶりに振り回されながら、ジョンは街の平和を脅かす人狼を暴き出す――!
思考ゼロ秒の人狼狩り少女と紡ぐ人狼×推理×バトルファンタジー、開幕!


「人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?」
なははは、面白いこと言う娘がいるなあ。と、まあ掴みはOK. このサブタイトルで興味引かれてしまったのですから、実に上手い惹句…あー、誘い文句、宣伝文句でありましたよ。
とはいえ、こういう台詞を言うキャラってのはどんなキャラクターだろうか。仮にもメインヒロインの台詞なのですから、ガチの殺人狂ってわけじゃあないでしょう。
いや、昨今サイコパス方面にイカレているヒロインなんてのは珍しくもないですから、それこそ人を人とも思わない、皆殺し至上主義者かもしれない。そうでなくても、使命感の高さ故に。それこそ、異端審問官なんて狂信の代表みたいな役職やってるわけですから、人狼を殺すためならば民間人の犠牲など一顧だにしないというタイプかもしれない。
怪しいやつはまず殺す。それが正義だと心から信じているタイプ。
或いは、仮にもホームズの家名を冠しているのですから、こういう脅しとも言う台詞はあくまでブラフであって、こういう虚言や口八丁で相手の反応を引き出して犯人をあぶり出すタイプ。推理はしないけど、頭脳戦は仕掛けないとは言ってない、みたいな感じで。
まあ、色々と想像ははかどりましたよ。
でもまあまさか。「人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?」の台詞をなんの含みも意図もなく、字面そのまんまの意味で本心からそう思って言っている、ごくごくシンプルにただの馬鹿! というアンサーだったとはさすがに欠片も思わんかったわぃ!!
ガチでヤバいやつじゃん!!
下手な狂信者とか正義狂いとか殺戮マニアとかよりも、ある意味ひでえよ!?
お父さん、シャーロット嬢のお父さん、あなた教育失敗してますよ!?
手づから育て上げた自慢の娘が、実戦に出したらあんな事を言いながら破壊の限りを尽くしているのを見て絶叫する彼女の父マイクロソフト・ホームズ師の悲鳴を聞きながら曰くw

いや、まじでマイクロソフト氏、娘がこんなんなってるの気づかんかったんかい。節穴すぎやしませんか?
一応、これ以外のことに関しては有能極まりない異端審問官にして選びぬかれた騎士なんですけれど。矜持もあり柔軟さもあり、勇気も愛も真摯さもあるまさに覚悟決まったジェントルマンなんですが、娘の教育だけはこれ言い訳のしようもなく失敗してましたよね。
最初の現場に、ジョン・ワトソンがたまたま居なかったら果たしてどうなっていたのか。

この物語において、推理するのはジョン・ワトソンである。彼こそが、シャーロット・ホームズにとっての外付けの頭脳。助手ではなく、間違いなく相棒であり、目を閉じて闇の中をやみくもに突き進むばかりだったシャーロットにとっての、一筋の光となる青年である。
彼と出会うまで、シャーロットにとって推理しない、というのはある意味逃避であった。
でも、ジョン・ワトソンに出会ったときから、シャーロットにとって推理をしない、というのは信念となった。誇るべき指針となった。
シャーロット・ホームズは自他ともに認めるおバカである。短慮であり、深く思慮することがどうしても出来ない。しかしそれは果断へと繋がる。考えないというのは、目の前のものをことをあるがままに受け止める無垢でもある。彼女は推理しない、考えない、だから疑わないし蔑まない、差別しないし相手がどんな存在であろうと背景や肩書や人種種族をまるで認識しない。目に見えるその人個人をただまっすぐに見つめるのみ。
だから、シャーロット・ホームズがジョン・ワトソンと出会ったときから。彼が彼女にとっての光になったときから。
レディ・ホームズは迷わず躊躇わず疑わず、ただ彼の指し示す敵を最速で討ち抜く雷光となる。
敵は人狼、それは人類の天敵。人に化け、人の社会に潜み、闇を駆けるものたち。しかし、人に化けるということは、人に成るということでもある。人の社会に潜むということは、人々の営みの中に馴染むということでもある。

都市を制御する極大のコンピューターへと同化した女王マザー・ヴィクトリアの支配する排気都市ロンドン。そのスチームパンクともサイバーパンクとも付かない機械と郷愁の都と化したロンドンで繰り広げられる、人狼たちと異端審問官たちの戦いに巻き込まれたジョン・ワトソン。病弱な妹のために、日々様々なバイトに奔走する彼が巡り合ったのは、運命の比翼となる少女。
なんというかこう、ワイルドな快のある作品でしたね。
敵の大将である人狼王がまた、快活さと不気味さを兼ね備えた底知れない存在感と圧のある実にボスとしての格を持ったキャラで、後半ロンドン中を舞台にした……平野耕太先生の【HELLSING】のロンドンが火の海になる大戦争さながらの大激戦になってしまうのですが、最後までとにかく勢いに関しては途切れず衰えないので、まさに勢いそのままに最後まで突っ走れる作品でした。

ジョンの妹のアシュリーが、また可愛くてねえ。お兄さんのこと、「兄!」と呼ぶのめっちゃ良くないですか?
私は好きです!