【ブレイド&バスタード 2.鉄骨の試練場、赤き死の竜】  蝸牛くも/so-bin DREノベルス

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恐るべき強敵。強くなった自分たち。無謀な挑戦。
一番、冒険が面白い時だ。

<あらすじ>
「僕は――あの赤い竜を、やっつけたい」
《迷宮(ダンジョン)》内でイアルマスたちが遺体を回収した大柄な少女は、ベルカナンと名乗った。駆け出しの魔術師である彼女は、浅階にいるはずのない火竜(ファイアードラゴン)に遭遇し一党(パーティ)ごと全滅したのだ。
迷宮を彷徨い続ける赤き死の脅威にベテラン勢さえ探索を躊躇する中、少女は前を向こうとするが――。
「十中八九、竜に挑めばあの子たちは死ぬぞ?」
「冒険は、そういうものだ。そうでなきゃいけない」
試練に挑むガーベイジとララジャ。そして彼らを介添えするイアルマス。
鉄骨の迷宮を火炎が焦がす、ダークファンタジー第二弾!


2メートルはデカいよ!! 表紙絵を飾る魔術師の少女。まだ迷宮に来たばかりで、右も左もわからないまま竜と遭遇し死んでしまったという不遇な少女。
いや、最初のダンジョンアタックで竜なんてモンスターの中でもとびっきりの存在とぶち当たってしまったのは、不幸ではあるけれどそれはそれで巡り合わせでもあるんですよね。
また、黒焦げで死んでいたところをララジャに見つけてもらって、連れて帰ってもらって生き返らせてもらう、という偶然に行きあったのは幸運の一言なのだろう。
しかし、彼女……ベルカナンという魔術師はその立派な体躯とは裏腹に、その高い背をわざわざ曲げて縮めて見せているように。猫背が標準になってしまっているように。臆病で内気で常にオドオドと周囲を見回して怯えているような、そんな押せばそれだけ引いてしまうような少女だ。
にも関わらず、死という激烈な体験をし。しかも竜という恐怖の具現と相対してその火炎にこんがりと炙られる、という末路を辿ったにも関わらず。
「僕は――あの赤い竜を、やっつけたい」
なんていう願いが、目的が、生き返ってすぐにホロリとこぼれてくるあたり。
ベルカナンという娘の根源が如何ような魂で出来上がっているかが伺えたのではないだろうか。
どれほど臆病でも、彼女は逃げない。身の程なんて考えない、真性の冒険者としての資質、ライトスタッフが彼女の中に眠っている。いや、眠っていた、だ。死は、竜は、彼女のそれを目覚めさせ奮い起こさせた。

しかしだからといって、魔術師の少女に竜殺しの剣を持たせて、戦えってのはなんか違うくね!?
いやうん、この半巨人かよという恵まれた体躯。恵体を活かせ、というのは合理的と言えば合理的なんだろうけどさ。イアルマスみたいな、超絶レベルの魔術を使えるわけでもないまだ新米の魔術師にすぎないベルカナンなんだから。殴ったほうが早いし強い、というのはもっともなんだけれど。

しかし、ダンジョン攻略においてドラゴン殺しってのはわりと最終局面だと思うんだけれど、かの赤竜さんがダンジョン上層まで登ってきちゃってるとはいえ、まだ卵の殻をお尻につけてるよな若者たち主体のパーティーに、ゴブリン倒したな、コボルト倒したな、よし次ドラゴンな、みたいな勢いで間スキップしていきなりドラゴン相手にするの、さすがにスパルタ過ぎない!? と、思ったのですけれど……。
この若者たち。いや、正直言ってまだ若者なんて名乗れない、子供じゃないの? というガーベイジ、ララジャ、そしてベルカナンの三人は決して無鉄砲ではなく、地に足をつけた形で着実に成長していく。特にララジャとガーベイジはもう新米なんて言えないくらい、しっかりとした一端の冒険者になってるんですよね。ガーベイジのあれを、一端と呼んでいいのかはちょっとわからないですけれど。自由で野良犬みたいに好き勝手にガンガン行っちゃう娘だけれど、不思議と好き勝手ではあっても自分勝手には見えない振る舞いなんだよな。ララジャの言うこと聞かずに弄り倒してくるけれど、決してララジャを見下しているわけでも無視しているわけでもないですし。あれは認めてるがゆえのじゃれつきだよなあ。
そしてララジャは、かつてのような卑屈さが拭い去られ、しかし浮ついた様子もなく、自分の立ち位置を見定めながら仲間まで細かく丁寧に気を配り常に落ち着いた意識で周囲に眼が行き届いているように見える。安定感が素晴らしいことになってるんですよね。間違いなく若手三人の中のリーダー役になっている。頼もしいことこの上ない。
そんな彼らを、なんか後方保護者面して腕組みして見守ってそうなイアルマス。別にドヤ顔はしてないと思うんだけど。してないよね?
あんまりごちゃごちゃと口出しせずに、若い連中の思うようにやらせつつ、いざという時フォローできるところに必ずいるんですよね、この人。年長者として先達として彼らを拾った者として、でも先頭に立って導くわけではなく、後ろから若い連中が成長していくのをじっと見守ってる感じなんだよなあ。
助言を求められたら、彼らが考える余地を残しながらもちゃんとあれこれとアドバイスくれるあたり、面倒見良いのは間違いないんだが。彼らのやりたいことをサポートするためのやりくりをさらっと気がつけば準備整え終えている風でもあるし。
これだけの人が後方に控えているのに、何もかも頼りたくなりそうなのに、ちゃんと自分達でやることやりたいことを考えてる若い子らは偉いよ、マジで。いや、ガーベイジはなんも考えてないかもしれないけど。本能全振りかもしれないけど。
シスター・アイニッキがこのパーティーのこととなるとめっちゃ嬉しそうに構うの、なんかわかりますわー。シスターはシスターでだいぶ頭おかしい感じの人ではあるけれど、方向性は真っ当だから、そりゃこれだけすくすくと健やかに成長していく若手パーティーを見たら、全力で応援したくなるのもよく分かるってもんですよ。

しかしそれでも、いきなり相手がドラゴンってのは大分突っ走ってるよなあ、と思ってしまう。実際、対ドラゴン戦は普通の人間ならまともな正気も保てないだろう激戦となる。
こいつら、なんであれで死なないんだ!? ダンジョンに潜る冒険者が外界のものと一線を画する一種の人外となっている、というのはこれを見ると比喩でもなんでもない、というのがよくわかる。
ベルカナンなんか、もろにドラゴンにガジガジ齧られてるじゃないですか。おまけに、こんがりとまた焼かれてるし。
これで心が砕けず、心が折れず、なおも向かっていけるというのは、ちょっと頭がどうかしてないとやっぱり無理ですよ。にも関わらず、あれだけ臆病なのにどれほど痛みを与えられても、次の瞬間には叫び声をあげてドラゴンに向かっていけるベルカナンは、やっぱり冒険者になるべくしてなった娘なのだ、というのが伝わってくる。
いやでも、魔術師なのになんで剣士のガーベイジと一緒に前衛やってるのかはわからんけどな!!

あと、面白かったのがダンジョン産のドラゴンスレイヤーと呼ばれる対竜特攻武器の強弱について、ドラゴンスレイヤー自身のやる気のあるなしと表現してるのは、なんか笑っちゃうけれどしっくり来たなあ。あのドラゴンスレイヤーはやる気がない、とか言われたら、ああそうなんだ、としか言えないよw まあ、ベルカナンの前に現れたドラスレはけっこうやる気満々だったみたいだけれど。

ああ素晴らしきかな子供たちの成長譚。意外とベルカナンには優しいガーベイジ、ちょっと冒険者として自信がついたララジャ。そして、ララジャにちゃんと名前を呼んでよ、とずっと思ってただろう事を面と向かって言えたベルカナン。いいねえ、若いってイイねえ。可能性の塊じゃないですか。かわいいなあ。
シスター・アイニッキじゃないけれど、なんかもうニッコニコでした、うん。