【変人のサラダボウル 5】  平坂読/カントク ガガガ文庫

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恋と友情が入り乱れる群像喜劇、第五弾!

ある朝、惣助が目を覚ますと隣に全裸の弁護士ブレンダが寝ていた。果たして惣助は本当にやらかしてしまったのか……!?一方、サラは相変わらず中学生活を満喫し、演劇祭で主役を務めることに。もう一人の異世界人リヴィアは、半グレ組織のリーダー・ミコトと出逢ったことで、地下闘技場で戦ったりヤクザの屋敷に乗り込んだりと、ますます裏社会との関わりを深めていくのだった。入り乱れる恋と友情、そして別れ。登場人物たちの意外な一面も明かされる、予測不能の群像喜劇第5弾!今回は恋愛成分多めでお送りします。

リヴィアさん、この人ほんとにいったいどこまで行ってしまうんだろう。
本来ならこのリヴィアさんを拾った剣持命も、リヴィアの旧主となるサラもそりゃもう波乱万丈の人生を歩んでいるはずなんだけれど、いや現状もうどう考えてもあんたが一番波乱万丈の人生を歩んでるよ。歩んでると言うか新体操の床競技並みにピョンピョン飛び跳ねて回転して月面宙返りしてるよ!
乱世とか世紀末の世ならまだわかるけれど、なんでこの平和な日本の地方都市でこれだけ意味不明なほど変な立ち位置を獲得してしまうのか。ホームレスだけでも面白かったのに、カルト宗教の象徴になったりカリスマバンドのメンバーになったり、とあれよあれよと訳分からんポディションに放り込まれたと思ったら、今回のこれですもんねえ。
サラの方も普通の学生が送るべくもない破天荒な学校生活を送っているはずなのに、リヴィアがあんまりにもあんまりな道を歩んでいるために、これと比べると堅実な日常を送ってるよね、と感じてしまう不思議!

しかし今回はリヴィアの異世界、というかあっちは乱世混じってたんだよなあ。そういう生き死にが身近にあった世界に生きる人間ゆえの死生観みたいなのが伝わってくる回でもありました。いや、異世界とかあっちの世界関係なくリヴィアという女性の特性なのかもしれませんが。
リヴィアって騎士らしく忠誠心は高いんだけれど、逆に言うと自己欲求は薄いんですよね。……いや、性欲とか食欲とかギャンブル欲とか本能とか肉体的欲望は旺盛と言っていいんでしょうけれど。
ただいつもどこかケセラセラで、あんまり我を通そうとしないしそもそも我を持たない。サッパリしていると言ってもいいし、執着が薄いというのだろうか。
相手に望まれれば、なんだかんだとそれに応えてしまう。嫌々でもないし、従順に唯々諾々でもなく、フラットに。なんの先入観もなく、在るが儘に見て面白いと思ったら興味持ってくれて。
いろんな理由から周囲から浮き上がっている自分を特別扱いせず、でも腫れ物扱いとは別の意味の大切な特別扱いして一緒に居てくれる。
望愛もミコトも、そんなリヴィアだからこそのめり込んでしまったんでしょうね。
……これがヒモの資質というものか。
ただ、既に余命宣告されて延命治療を止めてターミナルケアに入っていたミコトにとっては、当初ただ退屈を紛らわせる、終わるまでの諦観に刺激を与えてくれるという意味合いで拾ったリヴィアの存在が本当の意味で特別になっていったわけだ。
どこか飄々と自分の終わりを受け入れていたミコト。でも、事あるごとに何か仕出かし、観たことも聞いたこともないでっかい事をやってのけ、何気ない家での時間をまったりと安らがせてくれる。それは間違いなく楽しい時間で、止まりかけていた彼女の時間に刺激を与えてくれる喜びで、自分がもうすぐ死ぬをわかっていながら、無駄に感情過多にならず普通の顔をしてでも大切にしてくれる、ずっと一緒に居てくれるリヴィアの存在が、この僅かな時間でどれほど大きなものになっていったかは、ラストでの彼女の残したものが示してくれているのでしょう。
リヴィアの存在は、きっとロスタイムだったミコトの時間に未練をもたらしてしまったのでしょう。でも、それは確かに喜びだったはず。後始末だけじゃない、生きた証と感謝を残す気持ちをもたらしてくれたんじゃないでしょうか。少なくとも、リヴィアと合わなければ生き別れていた実父と最期に会おうとは思わなかったでしょう。自分の死が、ただ父の憂いにならないように、感謝の言葉を残せたのだから。
でも、リヴィアがあんなに泣くとは思わなかったなあ。悲しみながらも、生き切ったもう一人の主を慈愛の笑顔で見送れるのかと思っていた。ミコトとの出会いと別れは、リヴィアにとっても一つの人生の岐路となったのではないでしょうか。
にしても、彼女の遺してくれたものが予想外過ぎて、いやこれ本当にどうするの!?
これまで社会のアングラな光の当たらない部分にちょくちょくと紛れてしまっていたリヴィアだけれど、これまでは偶然だったりでアンダーグラウンドな側の世界に足を踏み入れてしまったりと、半分住人になりかけくらいの関わり方で、なんていうんだろう。あくまで既存のアングラな世界にちょいちょい迷い込んでウロウロしてる野良猫みたいな感じだったのに。
これもう、リヴィアその人がこの地域のアンダーグラウンドそのもの、みたいになっちゃったんじゃないですか、これ!?
しかも、ミコトの半グレ組織継ぐだけだったら、街の顔役の一人くらいで収まってたはずなのに。いやそれだけでも十分えらいことなんですが、怒涛の展開でそれで収まらなかったですからなあ。
いや、まじでどうなるんだ、リヴィアさんの今後。バンドの方もメジャーデビュー自体はもう無理っぽいけれど、なんか既存の音楽業界に拘らないバンド活動を始めるみたいなことも言ってるし。

サラの方もハチャメチャな学校生活送ってるはずなんですけどね、ちゃんと学校の範疇にサラさん収めているからなあ。そういう意味ではあくまでサラは秩序側の人間なんでしょうなあ。既存の概念を破壊しても、ちゃんと新機軸を構築して皆がその中で安んじられるようにしてるわけですし。
いや、別にサラちゃん意識的に学校改革とかしてるわけじゃなくて、自分が楽しいように自由にやってるだけなんですけどね。これがカリスマかー。
飛騨に不時着は、元の韓国ドラマ知らないんだけれど、岐阜ネタが相変わらず容赦なくガンガンぶっ刺してきて、いやもう面白い、笑うわw

惣助を巡る恋愛模様の方は、ブレンダ先生から回ってはいるんだけれど、結構要所で惣助に刺さっているみたいですし、サラというコブ付きであることに対しての覚悟もあるし、これは一歩リードしたかもしれない。とは言え、ちゃんとサラと積極的に交流しようとまだ出来ていないので、いざとなるとどうなるのか。
そういう意味ではサラに一番近しい友奈はいいポディション掴んでるんですけど、惣助があんまりにも大人すぎて、ちょっと女子高生は完全に恋愛対象年齢外なんだよなあ。多分高校卒業しても十代はまず無理なんじゃないだろうか。二十代でも前半は怪しい。今はサラという子供も出来たわけですから、そのあたりの基準さらに厳しく律しそうですし。