【サイレント・ウィッチ VI 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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星詠みの魔女の不穏な独り言――「七賢人の誰かが欠ける」。その真相は!?

呪竜騒動へのクロックフォード公爵の関与を疑うモニカ。だが確証は得られず、呪いの後遺症である左手の痛みと、第二王子への疑念を抱えたまま新学期を迎えることに……。
しかも悪い報せは重なるもの。第二王子が左手を負傷した学園関係者を探し始める一方、ミネルヴァ屈指の問題児で、モニカの正体を知るかつての先輩が編入してきてしまう。
極めつきに、七賢人の在り方を揺るがす一大事まで発生し――極秘任務の後半戦は、いきなり難易度クライマックス!?
七賢人、本当にまともな人が全然いないw
いやちょっと待て落ち着こう。
ルイス先輩は加虐性ツヨツヨのヤバい人だけれど基本話は通じるタイプなのでマトモと言えばマトモな方かも知れない。
宝石の魔術師のエマニュエル氏は思いっきり俗物だけれど、その分感性は俗人に近く小悪党系かもしれないけれど異常者の類ではない。
星詠みの魔女さまと砲弾の魔術師はまあ癖がある人みたいだけれど、実はそこまで異常な言動をしているところは見ていないので、どちらかというとマトモな方なんじゃないか?
ほら、過半数はまともだ。
むしろ年少組の三人、モニカと深淵の呪術師レイ・オルブライト、そして茨の魔女ラウル・ローズバーグ。この三人が突出して変だよね!? 大丈夫? 社会生活営める!?
何より、友達がいない三人組である。
なんか、普通に友達できたモニカが一番真っ当に思えてきたぞ?
とはいえレイくんもあれですごく性根の良い青年ですし、ラウルの方も頭にお花畑が咲いているだけで中身は善良そのものなんですよねえ。花畑が咲いている時点でアレなんですが。善良である事とマトモじゃない事は両立するのである。
ってか、茨の魔女って別に女でなくてもいいんだ! 口絵を見て胸板のぶ厚い女性だなあ、とは思ったんだけど茨の魔女って書いてあるから普通に女だと思うじゃないですか。作中で初登場したときも、庭師か農夫かという格好をしているから女だと思われなかっただけで、普通に女性だと思ってたましたよ。やたらと顔面偏差値が高いみたいですし。
初代から代々家系として七賢人・茨の魔女を輩出している家柄なんですなあ。
しかしこのレイくんと真逆の陽キャ系コミュ障っぷりよ。これ、年長さんたちが引退して彼ら若手組が七賢人の中核を担うようになったとき…担えないんじゃないこれ?w
まあ元々七賢人って集団としてはあんまり機能していないみたいなので、今更といえば今更なのかも知れませんが。魔術奉納、よく無事に終わったよなあ。実態を見ると全然無事じゃなかったみたいですけれど。

……クロックフォード公爵は何をどう見たらこの連中を普通の地位や権益で動かせると思ったんだろう。自分の手駒である宝石の魔術師がわりと普通の俗欲の持ち主なのを見て七賢人なんてこんなもん、と思ってしまったんだろうか。
あれ、宝石の魔術師エマニュエルだって俗な人間ですけれど公爵が理解しきれない魔術師としての業は持ってそうなんだよなあ。だからこそ、一線を越えてしまって七賢人のみんなから集中フルボッコされそうになってたわけで。
よりにもよってモニカ相手に権威と権力で圧を掛けながら、利益供与と地位の確約なんかで陣営に取り込もうとしているクロックフォード公爵の姿を見て、確かにそこに居るだけで押しつぶされそうな迫力や威圧感、モニカに袖にされても感情を乱さない冷徹な空気はまさに大物、ラスボスって感じはしたんだけれど、あのモニカや七賢人というものを全く理解していなさそうなトンチンカンな対応を見せられると、ねえ。自分の価値観の枠内でしか他人を判断できない人物なのかと思えてしまいます。
そうなると、確かの彼の圧倒的な政治力と強引なまでの権力の使い方、そして手段を選ばない権勢欲は恐ろしいっちゃ恐ろしいのですけれど、そこまで怖くはなくなったというか底が見えた、というか。
むしろ事情がわかってきて尚、その真意の底を見せないフェリクスや、じっと動かずに虎視眈々と牙を研いでいるブリジットの方が何をするかわからない分、怖さがつきまとう。

現状、七賢人の所属を国王直轄から貴族議会に移管すべし、という議案が出されているそうだけれど、まあそうなった場合七賢人は今議会を牛耳るクロックフォード公爵の手駒にされてしまう……組織の構図的にはそうなんだけどさ。果たしてこの七賢人たちがそれで言う事聞くようになるのかかなり疑問なんですよね。大人組は比較的マトモと述べたけれど、大人しく傘下に入るほど殊勝には見えないしなあ。これほどの化け物たちが野に下って好き勝手やり始める方が大問題になりそうなんだが。

ともかく、モニカとしては自分の父の死に高確率でクロックフォード公爵が関わっていると知った以上は幾らこの気弱で臆病な娘でも公爵に下ることだけはないでしょうし。実際、あのモニカが毅然(?)と公爵からの露骨な勧誘を跳ね除けて見せましたしね。
ぶっちゃけ、モニカが気を揉んでいるのってフェリクスがこの件にどう関わっているのか、という所なんでしょうね。第二王子としての彼ではなく、ただの魔法好きな青年としての彼を見ているからこそ、モニカのフェリクスへの疑念はグラグラと揺らいでいるわけだ。
元から挙動不審のために、フェリクスに対して不自然な態度を取っていると気づかれていないのがモニカらしいのだけれど。普段から不自然だもんなあ。

そんなフェリクスへの疑念を持ってしまった中で、モニカにとってやっぱり一番特別な相手ってシリルなんですねえ。他の学校の知人や友人になった人たちに対しては、自分が七賢人である事実を知られたくない、バレてほしくない、というおそればかりを抱いていたのが、シリルに対してだけ反応が違ったわけですよ。
王城でたまたま、七賢人として詰めていたモニカと登城したシリルが遭遇したときモニカはシリルに正体がバレることを恐れる事よりも、七賢人の沈黙の魔女への敬意と礼儀を込めたシリルの応対にシリル先輩にはそんな他人行儀に自分に接してほしくないッ、と珍しいくらい強い感情の籠もった衝動に見舞われるのである。モニカがこれだけ他人に強く何かを求める気持ちを抱いてしまうのって初めてだったんじゃないだろうか。
このシーンを見た瞬間、モニカにとって特別なのが一体誰なのか、否応なく突きつけられた気がしましたよ。
そういう意味では、あれだけビビってトラウマになるほど恐れていたヒューバード・リーを自分からシメに行ったのだって、シリルに危害を加えた事にあるのは間違いないですしね。
シリルの方も、なんか微妙に気づき始めてるフシがあるんだよなあ。
そしてフェリクスの方も、こちらは全く沈黙の魔女とモニカを結びつけていないのだけれど、あれほど執着している沈黙の魔女と関係ないと思っているにもかかわらず、モニカに対しても柔らかな今の彼にとって致命的となり得る柔らかい感情を抱きつつある。
ここらへん、かなり人間関係が混沌としてきたなあ。

そして、存在自体が混沌としている悪役貴族ノートン家。冒頭のモニカの素性を調べに来た密偵相手に領民ぐるみで悪役をワクワクしながら演じてしまうケルベック伯ノートン家がほんと面白すぎる。
「冬至前、華麗なる悪役ファミリー劇場」ですからね、プロローグの題名w
一方で、モニカの為ならばどんな手段を用いても、権力を使っても邪魔者を排除する事を厭わない凄みをこの一家は有している。ある意味無敵の人であるヒューバードを脅しつけるイザベラの覚悟には背筋が震えるものがありました。たとえモニカに向けられていたその無邪気な悪意が自分に向けられる事になっても、むしろ望むところであるというイザベラ。この令嬢が全幅の味方となってくれた事こそモニカの大きな財産だよなあ。

ラストでは七賢人総出撃という自体になりましたけれど、これ相手が相手だけにオーバーキルじゃね? となりそうな所で古代魔導具が絡むことで厄介な話になりかけてるけれど……いや、やっぱり寄ってたかってのリンチになる光景しか思い浮かばない。ってか、どうやったら勢い余ってぶっ殺しちゃったり後始末難しいくらい盛大に破壊を広げてしまわないかで悩んでるじゃないですかー。
ここで元七賢人なんて人が出てきてますけれど……いや、七賢人って普通に引退できるの!? 単なる国の役職と考えたら別に不可能でもなんでもないのか。カーラさん、ルイスの姉弟子だそうだけれど寿退職したのかしら、と思ったら普通にバリバリ別のところで働いているみたいだし、魔術師としての力量は何ら落ちている様子もないんですよねえ。えー、現役七賢人以外にもけっこう居るのか? この手の実力ヤバい人w