【物語の黒幕に転生して 3 ~進化する魔剣とゲーム知識ですべてをねじ伏せる~】  結城 涼/なかむら 電撃の新文芸

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レンの新たなる才能が開花する! 超人気Webファンタジー、第3巻!

蘇った赤龍アスヴァルとの死闘から数か月。
レンはあることをきっかけに、これまで遠ざけていたはずの帝都へリシアとともに向かう。
そこで待っていたのは、バルドル山脈で別れた少女フィオナ・イグナートとの運命的な再会。
さらにはレオメル中に名を轟かす人物たちとの出会いだった。
「俺にこの剣の才能があるんですか?」
帝国最高の騎士団の牙城に招かれ、彼らと剣を交える苛烈な訓練の末、レンはさらに新たな力と、特別な剣技を得る。
そして、魔剣にもかつてない変化が訪れ――

うわっ、えー!? なんかレンくんが、主人公のレンくんがこの巻の中でもう見違えてしまうほどの成長を見せてくれたんですけれど。
見違えたというか、開花したというような、羽化したとでも言うような。
結局合わなかった聖剣技と違って、今度こそレンに会う剛剣技という流派の訓練場で練習できるようになった、というのもあるんだろうけれど。
何より、レンの心構えが変わったことでまとう空気そのものがふわりと変わった雰囲気がするんですよね。
これまで自分が黒幕として暗躍する原作の流れに極力関わるまいと、故郷の村でひっそりと暮らす事を志してきたレン。それも、故郷が狙われたり原作で自分が殺すことになる聖女リシアと親しくなってしまった事で隠れ潜んでやり過ごすことは諦めたのですけれど。
それでもリシアを守り一緒に切磋琢磨しながらも、どこか控えめに。目立たぬように。原作の流れに近づくまいと過ごしてきたレンだけれど、それも魔王教の暗躍や陰謀に寄って命を落とそうとしている人を助け、さらに赤龍アスヴァルを実質倒してしまったことで否応なく英雄という立場に経ってしまうことで、表舞台に立つことからは逃れられなくなってしまっていました。
それでも、それでもなお、果たして自分が英雄などと呼ばれる存在足り得るのか。原作のゲームを途中までしかプレイしていないため、世界に纏わる秘密やそもそもどうして自分が黒幕として暗躍する羽目になったのか。なぜ、自分がリシアや世界一の魔法使いと呼ばれる学院長を殺すのか。何もわからない未知への恐れが彼を足踏みさせていたのでしょう。
ですが、自分の成した事の意味を正しく理解している聡明さを持ち、またレンの行動で死す定めだった娘を二回も救われて悪堕ちルートから正道に残った稀代の政治家にして策略家であるユリシス卿と何度か話をし、世を見据えてきた人物としての経験から彼に様々な知見を与えられ、また諭されたレンの意識が段々と変わってくるんですね。
また、自分以上に大事な人々、大事な故郷が出来たこと。それを脅かす悪意が確実にこの世界の裏側でうごめいている事を実体験として味わってきた以上、いつまでも受け身で居ては大切なものを奪われなくしてしまうだろうという実感が、彼の覚悟を固めていく。
何より大きかったのが、やっぱりリシアの存在なんでしょうね。レンのリシアへの接し方を見ていると、間違いなくこの娘に対して対応が特別なんですよね。
未知を恐れず立ち向かっていかなければ、大切な人たちを守ることは出来ない。そんな覚悟と決心が、レンという少年を大きく羽ばたかせていく。
ユリシス・イグナート侯爵と第三王子ラディウスという、大きな視点から国を守り、そこに住む人達を守ろうと既にいろんな形で戦っている人たちと実際に顔を合わせ、話をし、彼らのあり方に感じるものがあった、感化されたというのも大きいのでしょう。
心のあり方の変化が、成長が、レン・アシュトンという少年を大きく羽ばたかせていく。それはもう進化や飛躍と言っても良かったかも知れない。
これまでのレンも強かったんだけれど、ここからのレンは剛剣技という獅子の剣を身に着けたという以上に何か別格の存在感を見せ始める。それこそ、主人公とかじゃなくて、ラスボスとか主人公パーティーの成長を後ろで見守りピンチに現れて助けてくれるような力強くも謎めいたキャラみたいに。
風格とか威風みたいなものをまとうようになった感じすらある。

また同世代である王子ラディウスとの邂逅が良い影響となったのでしょう。お互いいろんな意味で同世代の友人が居なかった中で、出会ってすぐに意気投合しラディウスなど身分の差すらも放り投げて彼の存在に入れ込んでいく。
あれ? 本作のヒロインってラディウス王子だったっけ? と思うほどに親密になっていく二人。ちょいちょい演出に凝ってレンのこと出迎えるラディウス、なんかハマっちゃってるぞ。でもほんとに親密になっちゃってるんですよね。出会って間もないのに二人して無二の親友っぽい空気感まで撒き散らしているありさまで。
マジでラディウスがメインヒロインじゃなかろうなw

一方の正ヒロインであるリシアとフィオナはというと、ついに同じ男性に恋した女性同士巡り合ってしまうんですね。まあイグナート卿とフィオナの父親が協力関係になった以上、二人が顔を合わせるのは必然だったわけですけれど。
一体どうなることかと思ってましたし、実際出会って一目でこの人は恋敵だッ、と察してバチバチと火花飛び散らしはじめるわけですけれど。
それ以上に、二人の女の子にとってレンってまさに運命そのものなんで、運命と出会ってしまった女の子同士の共感が生まれて、負けないというライバル心と同時にどこか同志めいたものを感じあって、意気投合してしまったのは意外でした。もっと粘度の高い修羅場になるかと思ったのですが。
それ以上に、レンの方がフィオナの事は助けた女性としてこれからも守ってあげたいと思っている以上に、リシアに対して特別感出しているのでこれフィオナの方が明らかにあんまり何も思われてないんじゃ、という劣勢感があったのですが……むしろこれでリシアの方がフィオナの事を引き上げて対等にまで持っていった感じすらありますねえ。

本来のゲームの主人公とそのメインヒロインたちとの出会いもあり、物語は士官学校編。すなわち原作ゲームの本編へとついに突入しはじめる。ここからさらにお話盛り上がってきそうで大変楽しみなのですが、レンのあのどっしりとした風格と、ラディウスとイグナート卿という原作ゲームの二大強キャラが争うこと無く手を結んでレンの味方をしてくれている、という安心感が半端ないんで、これ敵さんよっぽどのやつが出てこないと、原作主人公パーティーの活躍の場がなくなってしまうんじゃないかと逆に心配になってきた。