【シャーロック+アカデミー Logic.2 マクベス・ジャック・ジャック】  紙城 境介/しらび MF文庫J

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
〈マクベス〉を読むと、人を殺してみたくてたまらなくなる。

「後輩クン──キミ、フィオの助手になってよ」
寮の先輩・万条吹尾奈の誘いに乗った不実崎未咲が助手として連れていかれたのはとある島。
一人の大富豪が犯罪王の計画書〈マクベス〉を手に入れ、そのお披露目をするというのだ。
名のある探偵を招待し、推理イベントを全世界に配信する──はずが、集められた名探偵たちの前で本当に殺人が起こってしまう。
さらにホログラムがハックされ、島は、目に見える物全てが信じられない絶海の孤島へと変わってしまい──!?
探偵たちと未咲は、犯人と計画書〈マクベス〉の目論見を打破できるのか?
クローズド・サークルを内外から攻略していく第二弾!


やばい、楽しい、面白い。これが探偵世界の本物の事件か!

1巻では探偵学園という舞台上で行われる「選別裁判(セレクト)」と呼ばれる生徒同士の推理バトルがクライマックスになったのだけれど、これはあくまで相手の論理の矛盾や虚を指摘して論破することで勝利する勝負で、あくまで論理で上回れれば勝ち、という感じでゲーム感が強かったんですよね。
しかし、この2巻ではフィオ先輩の助手として手伝わされる、雇われる形で学園外で行われるイベントに参加する事になった不実崎未咲は、そこで虚構ではない本物の事件に遭遇することになる。
そう、本物の殺人事件が。犯罪王が残したとされる犯罪計画書「マクベス」を使ったと思しき、集まった探偵たちを標的とした連続殺人事件が起こるのだ。
実際に起こった事件を解決するとなると、やっぱりルールのあるイベントとは異なる迫真性が突きつけられる事になってくる。現実に起こった事柄を解き明かし、真実を真相を詳らかにして、その動機を、目的を、犯人を、事件の謎を紐解いていく。
魂をかけるのは探偵としてはまず当然だ。現実に起こる事件には、そこに関わる人々の生死はもとより人生そのものが捧げられ、未来の行方が掛かっている。故に、事件に挑むという事は事件に纏わる人々の人生に踏み込むことになる。だから探偵にはその先の、探偵としてのあり方への覚悟、決意が問われる。
1巻で自分の犯罪王の孫という立場故の迫害、世間からの白眼視に疲れひねてしまったが故に喪っていた、探偵という正義の味方への憧れをシアを通じて取り戻すことができた未咲。
でもまだ彼は探偵未満。漠然と探偵学園に在籍しながらも自分自身が果たしてどんな探偵になろうとしているのか、目標も方向性もいまだ見出していなかった。シアという輝きを守るために立ち上がった未咲だけど、それは誰かのため、他人のための起動であって自分自身は不鮮明なままだったんですよね。
しかし、ここで彼は改めて犯罪王・不実崎未全の残した遺産、その計画を引き継ぐ「劇団」によってその人生を捻じ曲げられた人々に出会う事で、犯罪王の孫としての原罪を突きつけられる。
何より現在進行系で繰り広げられる真の悪による悲劇を目の当たりにするのだ。
親の罪を子が引き継ぐ責任はない。ましてや孫など無関係も良いところだ。これまで、未咲はその「正しさ」で自らと妹を守ってきた。でもここで、彼はその正しさを超えて、罪も責もなくても無視できない、手を差し伸べたい、その苦しみを取り除いてあげたい。正しさの先にある自分の正義を、自分だけの探偵像を見出していく。
これは未だ何者でもなかった一人の青年が痛みと辛さを抱えて志を手にする物語。
一人の探偵が誕生する話だ。

そんな未だどこにも行けず、向くべき方向も分からず、ただ焦がれるままに茫洋と惑うばかりだった主人公に、手を差し伸べたのが……道を照らし指し示したのがまさかまさかのフィオ先輩だった、というのはなんかこうグッと来ましたわ。あの胡散臭くて信用が欠片も出来ないみたいな人物像で1巻では主人公たちを振り回し、悪役を担った彼女がこの巻では完全にメインヒロインですよ。
先達として、先導者として。或いは敗残者として、本物の探偵を探し求める彷徨い人として、彼女は間違いなく未咲を導いてくれたんですよね。そしてその背を見送ってくれた。光であった。
シアが対等な相棒であるのだとしたら、フィオ先輩はまた違った形で貫禄のヒロインやってくれたよなあ。この人がこれだけいい意味で主人公の傍らに在れるとは思わんかった。紙城さんてほんとどんなキャラクターでも奥行き作って魅力引き出すの上手いなあ。

そして、この犯罪の……マクベスの舞台となった館の設定の破天荒極まること。1巻でも使われた推理をより多くの人にわかりやすくビジュアルで見せるための装置、ホログラム技術を発展させまくったHOLOシステム。まさかこれを使ってクローズドサークルを作り出してしまうとは……どころじゃないよ。もはや現実とは何かすらわからなくなるくらいのAR・拡張現実じゃないですか。
その上で、犯罪王が残したとされる犯罪計画指南書「マクベス」の恐るべき内容、内容というかそれを手にした人が起こした凄惨な事件の数々。もう完全にぶっ飛んでて、マクベスが広まってしまえば世界が滅ぶ、なんて妄言に空恐ろしい迫真性が付きまとってしまう、その来歴のハチャメチャさと怪しさがもう完全に呪われた魔導書みたいな感じなんですよね。
同時に、この事件の解決までのあれこれが、元々推理イベントが行われるはずだった施設とシステムをそのまま使用しているので、全部全世界同時配信されている、というこの底が抜けたみたいなスケール感。
確かに、これ世界観そのものがぶっ飛んでぶっ壊れてるわ。

一方で、1巻で示されたあの理念。
「探偵は、事件に一人いればいい」
これをまた再び覆す形で、生き残った探偵たちがその力を結集して「マクベス」に挑む総力戦、いや各個撃破戦はやっぱり燃えましたねえ。RPGゲームさながらに三チームに別れ、最後の扉を開く鍵となる三つの塔に収められた過去のマクベスの事件に挑む探偵たち。
シアだけじゃなく、月読たちそれぞれみんなにちゃんと見せ場あるんですよ。その矜持を、誇りを、生き様を見せつける決意と覚悟の謎解き。
これやっぱり、1巻でシアと未咲が連弾のようにコンビを組んで戦ったように、この2巻でも探偵一人では決して解き明かせない、解決できない事件だったのは何か暗示するものがあるんだろうか。

そして、クライマックスで完全にミスリードに乗せられてしまい、世界中の視聴者と同じく「は?」となってしまったあの瞬間。
いや、犯人あからさまだなとは思いましたけれど、そこは犯人が誰かが重要ではなくてそのバックグラウンドとか人物像を掘り下げることで犯人としての存在感を確立して、最後の対決に挑むものとするのだと思いこんじゃってたんですよね。いやだって、そういう流れだったじゃないですか。だから完全に死角から急所を一差しにされてしまいました。うははは。

トドメの原状復帰にはひっくり返りましたけれど、あれがまかり通るってのは確かに探偵世界がどこかおかしくて壊れている証左になるんでしょうね。正しさとは何か。正義とは何か。未咲の見出した探偵像、真の正義にも通じる世界の歪さがここには在るのか。
ってか、あの人なにげに元居た人よりも中身濃くなってないですか!? なんか別のところで主人公してきたっぽいんですけど!? デスゲームサバイバーってなに!? 実はスピンオフ出来るくらい濃厚な物語突破してきてませんか、ねえ!? 
巨乳狂いのおっぱい星人にも関わらず、メインヒロインが貧乳っぽいのもなんかガチ主人公っぽいんですけど!?