【王様のプロポーズ 5.真赭の賢者】  橘 公司/ つなこ 富士見ファンタジア文庫

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退学と貞操の危機を回避せよ! 無人島サバイバル生活!?

「何よこれ、落第って……!」
「最悪、〈庭園〉からの放逐――つまり、退学処分もあり得ない話ではありません」

〈空隙の庭園〉で行われた魔術師適性試験を、彩禍として滅亡因子討伐で欠席してしまった玖珂無色は落第を通告される。
落第を回避するため、エルルカ引率のもと滅亡因子が生息する丹礼島で一週間の補習授業を受けることになるのだが……。
「寝込みを襲うのも嫌いではないが、やはり反応がなければつまらぬでな」
「無色さんの匂いを嗅ぐだけで、頭がどうにかなってしまいそうなのです」
大人の姿になったエルルカや、別の補習者から次々と誘惑され!?
退学と貞操の危機を回避せよ!
エルルカ先生回だーー! 庭園最古参の先生にして久遠崎彩禍が最も信頼する魔術師。
そう、最も信頼する!「信頼する」魔術師ですよ。そりゃ突拍子もない変態教師なんかじゃ、信頼するなんて事は言われないですよね。
元々医療部ののじゃロリ魔術師として今までも常に落ち着いて慌てた様子を見せたこともない、変なことを言い出す事もない、アン先生みたいにガラが悪いこともない、まともで頼りになる先生像を見せてくれていた人なのですけれど、彼女メインという事でこれまでに見えてこなかった新たな側面が見えてくるかなあ、と思いながら読んだわけですけれど。

むしろ、信頼感がガンガンあがりましたわなー! いや、この人マジで頼れる大人だぞ!? サブタイの真赭の賢者ってエルルカ先生の事なんだろうけれど、まさにこの人賢者だわ。それも賢しらな者ではない、自然の体現者というかこの世の真っ当な理を魂レベルから理解しているからこその大らかさ故の賢者というかなんというか。
このエルルカさんの鷹揚さ、大らかさって周りに無関心や興味を持っていないからの鷹揚さじゃなくて、どんな事でも気にせず受け入れてくれる、包み込んでくれるという神様にも似た器の大きさ故なんですよねえ。
実際、この人って半分自然由来の神様みたいな存在だったみたいですし。土地神の類だったんじゃないだろうか。イセセリたちのケモミミ一族は彼女を神として奉っていたみたいですしね。
確かにエルルカさん、浮世離れしている所もあり、人の規範を気にしない意味での鷹揚さもあって今回無色のことを性的にぺろりと食べようとしたりもしていたのですけれど。一方でガチの神様と違って人の価値観を無下にせず、むしろ人の心に寄り添うことの出来る人でもあるんですよね。そういう意味では確かに彼女は神ではなく人なのだ。自分の巫女であったイセセリが一族のしきたりに従って本人の意思とは関係ない所で婿を取らされそうになっていた時、争奪戦に乱入して彼女を自分の番にしてしまったのだって、あれ神の横暴じゃなくてちゃんと人のルールに則ってイセセリの事を奪ってますし、それでいてイセセリの気持ちを最優先してあんな事したんですよねえ。
翻って現在を鑑みても、医療部の教師役をつつがなく勤めてますし、この離島での補習授業の引率もすごくちゃんとやってるわけですよ。人間の魔術師の教育機関で教官役を十分以上に勤められているという時点で、人の枠組みの中でも窮屈そうでもなく普通にやれているわけで。
それでいて、神様レベルの存在ということで魔術師として図抜けた強さを持っている。そしてその強さを制御しきって、使うべき時収めるときをちゃんと弁えている。そりゃ、彩禍さんも頼りにしますよ。爆弾要素ほとんど無いんじゃないの? 医療系にありがちな変態性とかマッド性も全然無いし。
おい聞いてるか、不夜城一族w 
特に方舟の一番えらい人! 青緒さまとか言う人。てっぺん張ってる人があんまり下の人たちに迷惑かけたらあかんでしょうw 思いっきりトバッチリくってる浅葱ちゃんがかなり不憫である。

ってか、今回庭園の外で各地の魔術師機関の補習受講者たちとまとめて補習を受けることになった無色ですけれど、お陰でいつもの庭園のメンツと違う面々と行動を共にすることになり、かなり新鮮でした。と言っても、前回の不夜城編であった浅葱ちゃんや、影の楼閣の方で出会った紫苑寺竜胆ちゃんと以前に会った面々の方が多かったわけですけれど。
……竜胆ちゃん中学生だから年下なのか。言動だけ見ていると委員長系で凛としたお嬢様を想像してしまったのですけれど、カラー口絵などの彼女のデザイン見るとむしろロリ系なんですよねえ。カワイイ。いやこれ成長したら立派に凛とした生徒会長風の美少女になりそうな系統なんですけれど。
これに完全に漢の娘な武者小路涅々さんと、完全に女の子にしか見えない男の娘な秘宮来夢と相当に濃いメンツが揃ってました。いや、まじで濃いな! 実は庭園ってそれほどメイン以外の学生たち登場してないので、むしろこの娘たちの方が一気に存在感勝ち取ったかも。
涅々さんの女子力の高さと雄々しさのバランス感素晴らしかったですし。来夢くんの見た目完全に女の子すぎて、普通に言動も男として振る舞っているのが異様な違和感になってしまってるのもアレでしたし。いや、男なら水着でトランクスタイプ一枚で出てくるの当たり前なのに、なんで普通にトップレスのヤバい露出な格好している、というふうにしか見えないんだろうw

いつもの黒衣と瑠璃がいない回でありましたけれど、むしろワイワイと賑やかなキャンプ模様といった感じで普段よりも落ち着いた楽しさがあった気すらします。
……そりゃ、普段はいつも瑠璃が兄か彩禍さんに狂乱してるか、無色が彩禍さんに狂乱してるかでうるさいもんなあ。まあ瑠璃はいつも通り、庭園の方で狂乱してましたけれど。
この娘、不夜城家の縛りが解けて名実ともに自由になったせいか、以前からなかった自重がさらになくなって白昼堂々と彩禍さんと兄・無色に対しての狂乱推し活を隠さなくなったよなあ。
思う存分推せて、それはもう幸せの絶頂なんじゃないだろうか。兄と彩禍さんが好きすぎて本当にヤバいことになってる瑠璃ですけれど、このまま無色と彩禍が結ばれてしまったらそのまま自分も当たり前の顔して二人共自分の嫁とばかりについてきそうだなあ。
今回、エルルカ先生とイセセリという女性同士のカップルが、既婚者という形で現れてしまったがために、前例が出来てハードルは一切消え失せてしまいましたしね。
この場合、無色が両手に華、というよりも彩禍さんが無色と瑠璃の二人を両手に花という形になりそうだなあ。

と、今回は考えてみたら無色が彩禍に変じること無く、自分の身に宿った能力だけで事件を乗り越えた一件になったんですね。
エルルカ先生という彩禍に匹敵するとまでは言わないけれど、人知を超えた神に近い魔術師が味方に居てくれたから、というのもあるんですけれど滅亡因子キューピッドを消滅させる過程でエルルカ先生も侵食を受けて敵に回る展開もあったわけで。
実質今回のボスって本気のエルルカ先生だったわけですから、浅葱たちやイセセリたちと共闘したとはいえ無色の力でこれを乗り越えられたのはかなり大きいんじゃないだろうか。
前回のアンヴィエット先生とサラというカップルの誕生……これも既婚者同士の時空を超えた再会だったんでカップルの誕生とはちょっと違うか。今回もエルルカとイセセリの百合夫婦が再び元サヤに戻って、うん無色が彩禍に超一途なのと瑠璃にシスコンという二筋しかないのも相まって、意外とカップリングは無色一極集中じゃないんですよねえ。先生ふたりとも相手が現れてくっつくとは思わんかった。
ともあれ、次回はエルルカから伝えられた彩禍の状態も相まって、再び無色と彩禍の二人の話になりそう。