【人狼への転生、魔王の副官 14.黒狼姫と砂の追憶 】  漂月/ 手島nari。 アース・スターノベル

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
風紋砂漠で“アソン”の謎を追う!?
生きる伝説“黒狼卿”ヴァイトの娘フリーデは使節団の一員として訪れた氷壁の帝国ロルムンドで功績を収め今度はその噂を聞いたワの国から技術交流の名目で招待されることに。
しかし、ワの国のことなので文字通りの技術交流なわけがない。これは“フリーデたちがミラルディアの次世代の担い手として足るか”の試練だ。案内役と称してミホシ衆の見習いである少女イオリが監視するなか、天性の勘と智勇でもって次々に試練を突破していくフリーデ。ついには風紋砂漠へ足を踏み入れるが、突如出現した砂の壁に囲われる街に迷い込んでしまった。一面の砂景色のなか、古風なワの服装をした一人の男に遭遇する。
曰く――「我こそはアソンなるぞ」
アソンといえば千年以上前にワを建国し、数多の伝説を持つ転移者だ。そして、旅に出たまま姿を消したことから神世に還ったとされていた。本物であればヴァイトに匹敵する英雄。しかし、この男から人間のにおいは一切しない。フリーデのこれまでの経験と勘が“この人を信用してはいけない”と警告を鳴らしていて……。
ほぼ全編書き下ろしストーリーでお送りする黒狼親子の新たな冒険譚!

カラー口絵見開きの、父ヴァイトと拳を突き合わせるフリーデがまたちょっとイケメンすぎませんか!? 正直パッとしないパパよりもだいぶイケメンに見えるぞ!?
これはお母さんのアイリア似なんだろうか。でもアイリアもわりとタカラヅカ系の美人さんのデザインだけれど、フリーデはもっと目尻がキュッとあがった切れ味のある美少女なんですよねえ。
けっこう同性に人気出そうなタイプではあるよなあ。
まあそんな容姿風貌とは関係ないんだろうけれど、何かと重みのある友情を結んでいる同性の親友がいるフリーデである。
ロルムンドでは現女帝エレオラの姪っ子で帝国の次期後継者であるミーチャと親友になり、幼馴染で輝陽教の大司祭ユヒトの孫娘であるユヒテとは相変わらず。そこに新たな親友候補が今度はワの国で現れることに。
……この娘らみんなフリーデが大好きすぎるので下手に顔を合わせてしまうと誰がフリーデの一番の親友かで意気投合するよりもなんか戦争でも始まらないか心配になってくるなあw

ともあれ、今度の舞台はワの国である。北のロルムンドに引き続き今度は砂漠地帯を渡って東に位置するワの国から請われて表敬訪問することになったフリーデ。まだ将来何になるか決めてない、と言ってるけれど既に国の顔として各国と改めて親交を深く結ぶ要となっていて、外交使としてめちゃくちゃイイ仕事してるんだよなあ。
もちろん、この外国との関係は既に父ヴァイトが深く友誼を結んでいてフリーデはそのルートを踏襲しているだけ、とも言えるのだけれど、ほんとそれは最初だけで一旦その地についた後ヴァイトとはまた別に独自に親交を深めているのは確かにフリーデなんですよね。
黒狼卿を知るものはフリーデにあの親しみやすい英雄の再来を観るのでしょうけれど、観星衆の長の養子であり観星衆見習いとしてフリーデの案内役兼監視役……実際は思春期拗らせてる年頃の難しい子と接触させたらどういう反応をするのか、どんな顛末になるかのリトマス試験紙なイオリちゃん。彼女は黒狼卿ヴァイトを知らず、フリーデの事も現魔王アイリアと英雄ヴァイトの娘というまず色眼鏡で観る所から始まっているので、ヴァイトと関係ないフリーデ個人の人となり、その才覚、そして魅力を映し出す鏡として機能するのである。
つまり、ヴァイトという影を意識せずに素のフリーデの魅力を力強く語ってくれる子という訳なんですよね。
長の養女ではあるものの底辺から拾われた才能も何もない凡人という自認、それを努力に努力を重ねて自分の力を証明しているというという自負を抱いているイオリにとって、身分も才能もサラブレッド中のサラブレッドであるフリーデはコンプレックスを刺激しまくってくる相手であり、感激スべき客人であり自分はそれの歓待を任されたにも関わらず、強烈な敵愾心を抱いていたのである。
だからもう目を血走らせてフリーデの一挙手一投足を監視しまくっていたわけですよ。なにか躓けばせせら笑ってやろうとして、その血に相応しい能力を見せるのならその生まれながらの才覚に嫉妬を抱き。
でもそんな敵意からくるイライラが、いつの間にかちょっと隙があって危なっかしい所もあるフリーデへの心配やもっとやりようがあるだろうにというもどかしさからくる「イライラ」に変わってくるんですね。そのイライラはやがて「ハラハラ」へと移り変わっていく。
魔王と英雄の娘にも関わらず突出した力を持たない彼女に侮るような意識を抱いていたのが、その見識の広さ能力の万能性、何より成長力の凄まじさに気が付きだすと、最初悔しさだったものが羨望に似たものに変化していくのである。にしても、目を離すと危うかったり突拍子もない行動に出たりとハラハラしながら見守っていたものが、もう口や手を出さないと落ち着かなくなってくるんですね。
フリーデが歓待されながらも、観星衆の長や大人たちから試されている事に気づくともう完全に立ち位置がフリーデの側になってしまっていて、ついつい応援してしまっていて「違うそうじゃないっ!」と内心でフリーデの失敗や間違いを嘲笑うどころか声援を送って一喜一憂している始末。
長たちに対しても、ついついフリーデの側に立って庇い立てをしてしまったり、と。
このイオリの絆されていく心理変化の過程が実に見事な変遷を辿っていて、ちょっと美しいなと思うくらいでありました。あっさりと手のひらを返して、手首クルクルさせて敵意が尊崇に変わるみたいな単純なものじゃなくて、なんかこうフリーデという沼にハマっていくというか、最初アンチだったものを嫌いであるが故に罵り嘲る材料を探して捜して注視しまくっていたらむしろどんどんのめり込んでいってしまって気がついたらオタになってしまっていた、みたいな。
実際イオリって、相当のフリーデ推しのオタになっちゃいましたしね。フリーデを監視する過程でその能力魅力を解析しまくった挙げ句に、自分フリーデに詳しいですから、みたいな感じになってましたしw
それを横目で見ながらちょっとおもしろくなさそうなのが、幼馴染で小さい頃から誰よりもフリーデフリークを自認するユヒテなあたりが、ロルムンドのミーチャも絡めて先々血を見そうな予感がw

さても、相変わらず怒られても懲りないヴァイト、一人で突出しながら東と西を遮って交通遮断の要因となっている砂漠地帯の状況を変化させるための調査団を率いていたのですが、それとは別ルートからフリーデたちもワの国の始祖であるアソンの影を追って風紋砂漠に調査に赴くことに。
やっぱり実際の戦闘となるとヴァイトの独壇場かー。まだまだフリーデたちは子供なので直接の切った張ったは大人連中と比べると修羅場潜ってないですからね……いや、前回のミーチャ誘拐事件の解決とかこの歳にしては修羅場大いに潜ってるんですけど、さすがに戦中組と比べるとねえ。
そう言えば、フリーデたちがヴァイトたち大人連中がガチで戦う場面を直接観るのは初めてなのか。それでも、単に守られる側になるのではなくちゃんと自分たちの役割を見つけて、十分以上に事態解決のキーマンとなって活躍していたのは立派の一言である。それはそれとして取り敢えず、ヴァイトの無茶苦茶を見習っちゃダメだぞ、というのを改めて実感した。ヴァイトと比べるとフリーデはその辺弁えていて賢そう。そのへんはアイリア似なのかしら。
久々にカイトの地味にして派手な活躍を見れたのでちょい満足。こいつも偉くなっちゃったからなかなか前線に出て現場働きとはいかなくなっちゃいましたもんね。でも、出たら出たで相変わらずでたらめに器用で弱っちいのに度胸満点の頼もしい所は変わってないわw