パリロンシャン競馬場(フランス)3歳以上 牡・牝 2,400メートル(芝・右)


ふおおおお!! スルーセブンシーズ四着ぅぅ! いや、4着だったけれど、これ近年で一番ワクワクドキドキさせられたゴール板前でしたよ。

今年は参戦馬が牝5歳のスルーセブンシーズただ一頭。唯一の重賞勝利が中山牝馬S(G3)と、お世辞にも日本の競馬界のトップホースとは言えない馬でした。
クラシックはオークスが9着(9番人気)。秋華賞が11着(7番人気)と目立った成績はあげられず、4歳時は3勝クラスをウロウロ。5歳になってようやく3勝クラスを勝ち、続いて中山牝馬ステークスで重賞初制覇というG1戦線にようやく参戦の資格をもぎ取った、というくらいの日本には何十頭もいる馬の一頭に過ぎませんでした。
勝った中山牝馬Sも正直強い馬全然居ないレースでしたからね。
ところが、彼女が一躍脚光を浴びることになったのが、次の宝塚記念。ここでドバイで世界最強と言ってもいい走りを見せこの宝塚記念でもその強さを証明するような勝利を飾ったイクイノックスを相手に、唯一クビ差まで迫る勢いの差し脚を見せたのがスルーセブンシーズだったのです。

とはいえその後、いきなりの凱旋門賞参戦プランをぶちあげたスルーセブンシーズ陣営には戸惑いを隠せなかったのも事実です。幾らイクイノックス相手に好走したと言ってもそれ以外に実績らしい実績を残していない中で、日本馬がことごとく返り討ちにあっている凱旋門賞を走るのはさすがに無謀がすぎるんじゃないかと。
しかし、今年に関しては凱旋門賞に参戦する日本の馬が唯一彼女だけだったこと。逆に陣営も日本の看板を背負うようなプレッシャーもなく走れるだろう事。日本の馬場での実績が通用しないロンシャン競馬場では、むしろ変に実績がある馬よりも彼女みたいなのがヒョイッと勝ってしまう事だってあるんじゃないか、なんて気軽な期待が凱旋門賞本番が迫るに連れて盛り上がってきたんですよね。
負けて元々、思いっきりやんなしゃいってなもんで。
何より彼女スルーセブンシーズは、海外という舞台で無類の強さを誇るステイゴールド系。凱旋門賞に一番近づいた馬であるオルフェーブルの小さなお兄ちゃんドリームジャーニーの子である。
一発やらかしてくれても全然不思議じゃない気配はあったんですよね。

今年のロンシャンは折からの快晴もあって久々の良馬場の凱旋門賞となりました。最近は雨ばっかりでズブズブの馬場ばっかりでしたからね。これだけ良い条件で走れたの久々だったんじゃないですか。
そんな中、スタートしたスルーセブンシーズはいつもどおりの後方待機。鞍上ルメールはロンシャンだからといつもと戦法を変えることなくいつも通りのやり方でこのレースに挑んだのでした。
とはいえ馬への当たりが日本などよりよほど強く、プレッシャーをガンガンかけてくる海外である。ほぼ最後方で内ラチ沿い押し込まれたスルーセブンシーズは、これ前どん詰まりだし厳しいだろうなあ、という道中でありました。
実際、この位置取りは最終コーナーを回ってフォルスストレートに差し掛かっても変わらずとうとう直線に入っても抜け出せず。ああ、今年は一番うしろの方をぐるっと付いて回ってくるので終わる凱旋門賞かー、と完全にあきらめムードになったその時でした。
馬群がバラけた残り300メートル地点あたりで、突然スルーセブンシーズの赤い帽子が最後方あがりからグググっと周囲のスピードとは全然違う勢いで前へと動き出し、残り200メートル地点あたりから馬群を縫うようにして一気に差し脚爆発。周囲を置き去りにして先頭争いの尻尾に食らいついていったのである。
とはいえ、一足先に集団から抜け出してゴール前の叩きあいに入っていた二頭エースインパクトとウエストオーバーに追いつくには少々遅きに失していて、大外ぶん回してぶっ飛んできたオネストも居て、ゴール板を通過した時は4着。とはいえ、クビ差縋ってきたハーツクライ産駒にして英セントレジャーを勝って緊急参戦してきたコンテニュアスより後ろは馬群けっこう離してましたから、善戦以上に強さを見せてくれた4着でした。

いやでもマジで、凱旋門賞で日本の馬があんな後方から差してきたの、初めてみたかもしれない。
これまで上位に入った馬たちってだいたいフォルスストレートでは先頭集団にいて食らいついていくか、早め先頭に立って後続の追撃を凌ごうとしていたか、でしたからね。
早め前につく、が凱旋門賞で好走する鉄則みたいなものがあり、ロンシャンの深い芝では後ろからぶっ刺すようなキレ味は発揮できない、というのが当たり前みたいになってましたから。実際、後方待機した馬たちは見せ場らしい見せ場もなく大敗していたのが常ですから。
そんな中で、あれだけ最後方に位置して、直線に入ってもまだ後ろにいたのに残り僅かとなってからものすごい脚で突っ込んできたスルーセブンシーズ。結果4着と言えど、今までにないドキドキした興奮を味わわせてくれましたよ。

スルーセブンシーズでこれだけ好走出来てたんだから、イクイノックスやドウデュースが参戦していたらもっとイイ結果が見られたかもしれない、なんて事を言う人も居てるみたいですけれど、それはちょっとこのスルーセブンシーズを見縊りすぎてるんじゃなかろうか。
この娘、ものすごい名牝になるんじゃない? 現時点で、もうG3勝ち馬ってな格じゃないでしょう。
日本現役最強馬イクイノックスにクビ差迫ったというのはフロックでもなんでもない。凱旋門賞で後方からぶっ刺して4着食いついた馬だよ。強いよ、この娘。文句なしに強い。
日本に帰ってきたとき、果たしてどれほどの走りを見せてくれるのか、めちゃくちゃ楽しみなんですけど!?
凱旋門賞を走ったことで本来の走りができなくなった馬、というのも昨今珍しくないのですけれど、スルーセブンシーズはあれだけイイ走り見せたんだからそれに該当しないと思いたい。
いやあ、あわよくば勝ちもあるかも、なんて妄想してましたけどさ。勝てなかったにしても、なんか思ってた以上に地に足がついた強い走りを見せてもらって期待を上回ってくれたんじゃないでしょうか。負けたとは言え、なんかすごく満足感のある今年の凱旋門賞でした。