【チュートリアルが始まる前に 3 ボスキャラ達を破滅させない為に俺ができる幾つかの事】  高橋 炬燵/カカオ・ランタン 電撃の新文芸

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それは、誰も知らない黒雷の少女の物語──シナリオ破りの攻略開始!

新たに凶一郎のパーティーに加わった少女・ユピテル。彼女は『ダンマギ』のストーリーでは、プレイヤーを苦しめるグランドルートのボスとなる存在だった。
彼女が暴走するボスとなる理由が、彼女の中に眠る精霊『ケラウノス』との理不尽な契約だと知った凶一郎たちは、そのケラウノスの“調伏”に動き出す。
しかし、そんな彼等の前に少女の過去を知る人物が現れて──。

「……お久しぶりですね、ユピテル」

過去からの使者が語るユピテルの真実とは?
黒雷の獣と夢見る少女が交わした本当の契約とは?
失われた記憶のパズルがひも解かれた時、少女を巡る物語は誰も見た事のない領域へと加速する。

「さあ──気張っていこうぜ、ユピテル」
「ぜったい、勝つ」

ボスキャラだらけの最強パーティーで、あらゆる理不尽を攻略せよ!
いま最も読者を熱狂させるゲーム転生ファンタジー第3弾!
ウェブ版では描かれる事の無かった黒雷の少女の“トゥルーエンド”が、ここにある!


こいつはっ、こいつはっ、泣いて這いつくばって頭擦り付けて後悔するまで殴る、殴るのを止めない、ぶったおーーーす!!
いや、2巻で一度分体とはいえクソ親父ことユピテルに憑く精霊のケラウノスをキャンと鳴かせてぶっ倒してはいるので、もう一度改めて同じケラウノスと戦って二番煎じにならないかなあ、と一抹の不安みたいなものがあったんですよね。
ところがですよ、2巻の段階で出てきていたケラウノスのモンスターペアレントにして毒親の極みみたいなエピソードがまさかの氷山の一角に過ぎなかったことが明らかになっていくんですよね。だってさ、毒親って言ってもやり方が過剰すぎただけでユピテルへの愛情みたいなものを独善的に暴走させている状態なんだなあ、という風に思ってたんですよ。ところがこのクソ親父と来たらこれユピテルへの愛情とかないだろう。完全に自己愛。父親気取りの自分に浸っているだけで、ユピテルの事は完全に飼育するペット、いやペットへの愛情ほどのものも存在していない。凄まじい悪意によってユピテルの意思を踏みにじり、尊厳を穢し、徹底的に苛め抜く虐待する希望も夢も片っ端から奪い去って、その上で自分だけが守っているかのように装う卑怯さ、卑劣さ、鬼畜外道の悪どさ、もう胸糞悪いなんてもんじゃない。
思い出しただけでも腹たってきた。怒り怒り憤怒である。殴っても殴っても殴り足りなくなりそうなくらい殴りたい。
そんなケラウノスの邪悪さが明らかになっていく一方で、これまでのユピテルが居た環境が決して彼女を孤独にするものではなく、彼女を傷つけるものではなく、彼女を痛めつけるものではなくて。
優しい世界だったんですよ。とても優しい人たちがこの娘の事を守ろうとしていた。自分たちが傷ついても尚、負けずに慈しみ続けた。それでも届かなかったからこそ断腸の思いで凶一郎や遥たちに託してくれたことがわかってくるんですね。
だからなおさらに、そんな愛情すらも優しい記憶すらもユピテルから完全に奪ってしまったあの鬼畜親父への憎しみが募る募る募る募る。
これはもうヘイトの権化ですよ。こんなんぶっ飛ばさんといかんでしょ、という衝動に塗りつぶされますよ。まさに、倒すべき敵の提示である。
ここまでヘイト向けられる敵を生み出すこと自体が凄いですし、これを実際ぶっ飛ばした時のカタルシスはいったいどれほどのものになるでしょう。もちろん、これほどの敵だからこそ半端な倒し方じゃあ逆に不満がたまるってもんです。
もうこれでもかというくらい徹底的に分からせて分からせて、やったった!!と握った拳を振り上げられるくらいの感覚がないとね。思い知らせてやらないとね。
それを、本作ではもう十分以上の存分にやりきったと思います。見事、見事にやったった!! 思い知ったか、くそオヤジ!! もう気分はまさに「ひゃっはーーー!!」ですよ。はああーーー、痛快でした。
そして、逆にユピテルに対してはもうこれでもかと愛情を注いでくれたので、ほんと満足です。母性の塊みたいな文香姉さんは元より、あんまり他人に構おうとしなさそうなアルまでがユピちゃんにはお姉さんヅラして随分甘やかしてくれましたからね。
今のユピテルを弱いと言い切って、こんなつらい境遇に居続けたユピテルが弱っていないはずがないんだ、とまず弱りきったユピテルのメンタルを癒そうと全力を注ぎ込んだ凶一郎の考え方はすごく好きですわ。
強い相手への接し方だけじゃない、強さへの希求だけじゃない、こういう弱った人に対する彼の優しさの温度を体感して、ただでさえ凶一郎に惹かれていた遥が完全に参ってしまうこのあたりの描写は、なんかもう感情の機微が素晴らしかったんですね。
武芸者として、同じ強さを求める強者として、同じ方向を向いて一緒に駆け抜ける楽しい相棒として凶一郎に対してどんどんと心の距離を縮めてきた遥でしたけれど、ここにきてこの青年の男としての魅力に一気にやられちゃってるんですよねえ。なんかもうすごく女の子の顔になったよ、遥さんw
さあ、そんなみんなでこの小さな女の子を幸せにしてあげよう。何よりこの娘がついに負ける事無く自力で立ち上がって、毒親に否を突きつけ、頑張って幸せになろうとしてるんだから。

しかし、シラードさんとエリザさん、まさか全盛期から二段階以上弱体化してるとは思わんかった。え、弱体化してあのハチャメチャさなんですか!? 散々手加減して戦い方もチュートリアルにした上で凶一郎たちにあれだけのパフォーマンスを見せたシラードさんですよ? それでも凶一郎たちが勝ったのは勝っただけに、今の彼らよりも強いんだろうけれどなんか頂点近くにまですでに手の届きそうな所まで来てるんだなあ、凶一郎たち……と思ってしまったのは思いっきり間違いだったんですな。ってか、人類の頂点らへんってどこまで化け物になってるんだ? 個人戦闘能力としてはもうわけわからんレベルになってそうなんだが。現状のシラードさんですら、極太ビームを何本も乱射連発しまくる人間宇宙要塞みたいな人なのに。
しかもシラードさんのクラン【燃える冰剣】において当のシラードさんは強さにおいては現状では第5位。上にまだ何人も強い人いるのね!? そんでもって全盛期のシラードたちは、その上を行ってたのか。こりゃ凶一郎くん、まだまだ頂点は遠いぞぉ。
そして巻末の番外編。これ異伝ってなってて主人公はエリザさんだけれど、内容はこの3巻と4巻をつなぐ話になっていて、凶一郎のなぜか誰も知らないような情報をしれっと握っている特異性に気づいた黒騎士という存在に目をつけられる展開になってて、かなり重要な話なんじゃないだろうか。
あと、エリザさんわりと準レギュラーでどんどん出てきそう。