【陰キャだった俺の青春リベンジ 5 天使すぎるあの娘と歩むReライフ】  慶野 由志/たん旦 角川スニーカー文庫

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私も新浜くんみたいになりたいんです! 社畜力あふれるバイト編!

夏休みを経て互いに名前で呼び合うようになった春華と新浜。
夜2人で電話するほど仲の良い2人だが、まだ関係性は『友達』だ。
ある日、春華の誕生日が近いと知った新浜は自分が働いて得たお金でプレゼントを買うべくブックカフェでバイトを始めることに。
人手不足、アクシデント、クレーマー対応……培ってきた前世の社畜力が大活躍!
「ホワイト企業は本当にあったんだ!」
そんな彼の姿を偶然見つけてしまった春華は思わず見惚れてしまって――
「私も心一郎君みたいになりたい」
後を追うようにバイトに応募してきた春華は新浜を先輩と呼んで……。
タイムリープ青春ラブコメ、前世の社畜力大爆発のバイト編!


いや、これだけイチャイチャしていてまだ付き合ってないって無理があろうだろう!? と、言いたいところなんだけれど、わりと無理やもどかしさ焦れったさを感じさせない形で友達関係継続させてるのが心一郎と春華の不思議な関係なんですよねえ。
お互い名前呼びしながら、学校では注目されるのを避けるために今まで通りに名字で呼び合いつつ、時々思わず名前で呼んじゃってキュンキュンする、なんていう甘酸っぱいやり取りしてる時点でご馳走様以外のなにものでもないんですが。
実際、家族友達みんなからまだ付き合ってなかったの? と驚かれる状態ですからねえ。
にも関わらず自然と今の状態を「友達」と言ってしまえるのは、それを春華が完全に信じているからなのでしょう。信じているというのはちょっと語弊があるか。
春華にとって、心一郎は特別な人でそれこそ生涯ずっと一緒に居たいくらいは思ってるわけで、好感度はカンストどころか天井突破している状態なんですね。
ところが、春華はその心一郎への有り余るほどの膨大な好意を、まったく恋という感情に繋げて考えていないのである。これだけ好きなのに、心一郎に恋しているという自覚が全く無いんですな。
あまりにも箱入りすぎた育ち方をしてきた彼女にとって、恋なんてものは知識では知っているもののそれを自分の身に照らしあわえて捉える事が出来ない状態。認識できないと言ってもイイかもしれない。
自分と心一郎の関係はもうどう言い繕っても恋する男女にも関わらず、春華はそれを恋だとわかっていない。
まあ春華の方は無知と初心さが織りなす奇跡のような状態と言っていいかもしれませんが、一方の心一郎は違います。もうこいつは思いっきり春華に恋して夢中になってるんですからね。
ところが、こいつはこいつで今の状態に対して焦りやもどかしさを感じていない。いや、感じていないと言ったら嘘になるかもしれませんけれど、そう感じていたとしても下手に動いてこの関係性を変えようとはしていないんですよね。
泰然自若、というのもまたちょっと違うか。今の関係が心地良いからと現状維持に逃げているわけじゃありません。この男、家族や友人関係など外堀はガンガン埋めに行ってますし、春華との関係もこれだけ好感度あがっているにも関わらず手を休めず常に積極的にアプローチを仕掛けにいってる。油断せず傲慢にならず、前世の在り方を悔やみ反省しながら常に謙虚にしかし精力的に、自分の好意を捧げる行いを怠らない。
それでいながら、春華の意識を強引に変えようという彼女に何かを強いる行動は一切してないんですよね。自分が何かをしたから、代わりにこれだけの事をしてほしい、というような報いを求めることは一切していないのである。ただただ注ぎ捧げ与えて、待っている。
この待ちの姿勢を維持できている事こそ、新浜心一郎という青年の最も歳不相応の大人な部分なんじゃないだろうか。まあ、そんな懐の広さ深さ余裕を持っている大人がどれだけいるのか、って話もあるんだけれど。
春華は自分が溜め込みに溜め込んで大山脈のように大きく膨れ上がっている彼への好意が、「恋」と呼ばれるものだと気づいたとき。知ったとき。接続されてしまったとき。
果たしてどれだけ激烈、激甚の化学変化が発生してしまうのだろうか。このクソデカな好意の塊が一気に一瞬にして「恋」となって燃え上がっちゃうんですよ? 想像しただけで見渡す限り焼け野原になって消し飛びそうじゃないですか?

いやマジで新浜くんさ、春華の気持ち抜けどころ無く溜まっていく一方なの見てわかるだろうに、さらに躊躇なく遠慮なくどんどん注入していくのほんとヤバイよ? いや、心一郎本人はわかってないのか。自己評価は決して高い方じゃないですからね。不安もあって、注ぐことはやめたりしないでしょう。
まあもう心一郎の側からあれこれなにかしなくても、春華が勝手に彼の後を追ってその背中、その言動から勝手に全部ガンガン吸い込んでいっちゃって、自分でガンガン膨らませ続けてるわけですからもう押し留めようもないのかもしれませんけれど。

今回はさらに、心一郎の本領発揮とも言うべき実際に働く現場に立ってしまいましたからね。
彼の颯爽と働く姿にただ惹かれるだけじゃない。自分が大人になったときどんな風に生きていくのか。漠然としたまま大概の人が通り過ぎていくだろうそんな不安や心もとなさを、彼女は彼の背中を追って同じカフェで働くようになって、心一郎たちに助けられながら一つ一つ積み重ねていき、ちゃんと自分の中で確かな形として構築していくんですね。
思えば、1巻ごとにこの紫条院春華という娘は大きく成長していってるんだよなあ。それだけ、この娘が追いかけている心一郎という少年がとびっきりはっきりとした芯があって、それを追いかけているだけで自然と曖昧模糊としていたものが形状を形成していくのかもしれないなあ。

うん、やっぱり心一郎って単に前世社会人だった経験がある、ってレベルの人間じゃない。毎巻ごとに繰り返し言ってるかもしれませんけどね。
よりにもよって春華の実家が運営する書店のカフェにバイトに行く辺り、こいつめ、って感じですけれど。学校のイベントなんかでも、前世の社畜の経験を生かして学生離れした立ち回りを見せていた心一郎ですけれど、やはりその本領が発揮されるのはお客様や取引先を相手に金銭を得る実際に仕事現場。この男、絶対単なる、ブラック企業で使い潰された社畜じゃないですよねえ。心一郎が語る体験談聞いてたら、普通なら考えることを止めてただ言われるがままに働き続けるすり減る一方の歯車みたいな社畜が出来そうなものなんだけれど。実際、この書店カフェの現場でも時々心一郎、ブラック社畜の闇を垣間見せて、店長代理の三島さんに悲鳴混じりのツッコミ受けてるんですよね。
洗脳じみた刷り込みを受けている形跡は色濃いにも関わらず、一方で彼は常に状況を改善するための思考を止めていなくて、幾つも実践して改善にも成功している実績がある。まあ上司をぶん殴る、はあれだけれど、上層部根こそぎ引きずり落とすみたいな根治療法にまで発想がいかなかったあたりが社畜根性と自嘲するところなんだろうけれど。何より、辞めるという発想に至らないあたりが完全に洗脳されてるよね、って感じだったのですけれど。
ともあれ、この書店カフェで働き始めてあっという間に店長代理の三島さんはじめ、彼よりも年上のスタッフ含めてみんなから頼りにされる、どころじゃないちょっと異様なくらいの辣腕な働きっぷりは、なんか心一郎活き活きしていて面白かったなあ。
心一郎本人は、前世で経験したブラック企業とはまるで違う普通のホワイト企業の勤務環境の心地よさと充実っぷりに感動しっぱなしで、テンションあがりまくってたみたいだけれど。
この新キャラの三島店長代理もイイキャラでした。書店本社のかなり力入った新企画である所のカフェ事業。それが責任者の店長が早々にプレイベートのトラブルで消えてしまい、カフェの経験とかもないのにいきなり店長代理押し付けられてしまった中で、バイトが大量退職するという人手不足の状況が被り、地獄の撤退戦の殿になりそうな有様をヒーヒー泣きながら捌いてたアラサー女性。
この人も新浜と同じくあんまり自己評価高くないし、実は勤労意欲とかあんまりないし、責任とか負いたくないタイプにも関わらず、多大な責任と仕事量を覆い被せられて可哀想なことこの上なかったんですが、間違いなく有能ではあったんですよね。おまけに常識人で、度々垣間見せる心一郎の前職の闇にそれはアウト!!ダメでしょう! と毎回ちゃんとツッコミ入れてくれるせいで心一郎が素晴らしい上司として敬愛しはじめちゃって。良かれ悪しかれ年齢不相応とも言える心一郎の振る舞いに色んな意味で振り回され心労が回復したりダメージ追ったり、さらに社長の娘である春華まで気づかずに雇ってしまい、非常にアップダウンの激しい日々にヘロヘロになっていく三島さん。
これ見てると、ホワイト企業だからって管理職はわりと死ぬよね、とわかりますね、うん。
まあ心一郎の経験から言わせると、天国みたいなものなんでしょうけれど。

ついには最大の壁とも言えた春華の父である社長の時宗さんにも認められ……いや、娘との交際は一切認めてないんですけど、この往生際の悪いパパさん。この人も面白すぎる人だよなあ。春華があれだけ箱入りに育ってしまった戦犯でもあるわけですけれど。
娘に彼氏が出来るとかもう絶対に認めたくないにも関わらず、心一郎が娘の婿としてはあまりにもありえないくらい能力的にも見識的にも人格的にも人間的にも義理の息子としても良い物件過ぎて若干バグってしまってるんですけど。
それでもどうしても認めたくなくてジタバタしている姿がもう可愛く思えてきました。なんか既に心一郎、このお義父さんの扱い慣れ始めてきてるぞw

実質、このお義父さんも陥落させたようなものなだけに、心一郎と春華の間に立ちふさがる壁はすべて取り除かれ、堀は全部埋められて、敵となりそうな相手は全部寝返らえるか味方につけるか取り敢えず無駄な抵抗しても無視できる程度の扱いにするかして、あとはもう春華が自分の想いに覚醒するばかり。いや、さすがにこれだけ完全完膚なきまでに周り埋めきって環境を整え将来への筋道まで立ててヒロイン当人の好感度マックスオーバーの状態にしてある状態に至ってから、友達から恋人へという関係の進展に至ろうという展開はちょっと初めてみるかもしれませんw

次が最終巻ということですが、ここまでされると然もあらん、と言わざるを得ませんな!!