徒然雑記 : ソード・オブ・スタリオン２種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる　★★★★

【ソード・オブ・スタリオン２種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる】　三雲岳斗／マニャ子電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

腹黒皇女 vs 悪役王女! 策謀に満ちた恋愛と外交の行方は!?

シュラムランド同盟会議の開催が迫る中、皇太子アリオールに扮したフィアールカは、ラスとともにシャルギア王国を訪れる。
二人の目的は、皇国の暗殺者に狙われているシャルギア王女ティシナの保護。
しかし、未来の記憶を持つというティシナは不可解な行動を続けてラスたちを翻弄する。
そんな中、同盟会議に反発するレギスタン帝国の放った工作員は、王都で不穏な動きを始めていた……
魔獣の棲む惑星で国家の存亡をかけた政略結婚に挑む騎士と皇女の、異世界戦記ファンタジー、第二弾!

１巻読んだ段階での悪役王女ティシナの登場シーンはわずかだけだったのですけれど、その僅かなシーンだけで強烈な存在感を刻んでいきました。このときの振る舞いで、このティアナ王女ってフィアールカを上回る指し手。自国と他国の情勢を盤上に乗せて自身の才覚と策謀をもって国際情勢を動かし国の命運を担っていくプレイヤーだと感じたんですよね。だから、この娘はフィアールカの天敵になるんじゃないか、と思ったんですけれど。
いや、確かにティアナってこれフィアールカの天敵は天敵なんですけれど、フィアールカが一方的に手球を取られるタイプの上位互換とはまた全然違ったわ。それどころか、こと政治や謀略に関してはフィアールカの方が圧倒的に上。実際に対面して駆け引きを行うとなると、フィアールカの方が主導権を握ったまま離さず、おおむね筋書きを書いてタクトを揮ったのはフィアールカであり、ティアナはそれに乗ることしかできなかったんですね。
フィアールカって謀略家の才能はあるし、その才能だけでやるべきことをやれてるんだけれど、実際その手のプレイヤーとかフィクサーの能力があったのは亡くなった兄の方で、フィアールカは本当は向いてないんだよね、という話は１巻でしたと思うんだけれど。
ティアナに関してはフィアールカ以上に向いてないし、まずそういう指し手の才能はあんまりないと言っていいかもしれない。性格的にこの子ってどちらかというと愚直な方に思えるんですよね。その上で自分から情勢をコントロールして動かしていく積極性に欠けてるんですよね。基本、一度死に戻って未来の情報を持っているにも関わらず、対処療法に終始している。主体的に動き回って自分の思う通りの盤面を作り出すことができていないし、それができないからこそ出来るフィアールカを引きずり込み、ラスを頼ったという事なのだろう。
彼女にあるのはただただ壮絶な覚悟。悪名を被ることも、自分の命を捧げる事も厭わないどころか率先して燃料として焚べて、贄となったわけだ。なるほど、悪役王女と呼ばれるにふさわしい。
一方で女性としては自信あって、この点に関してはフィアールカに対してもマウント取ってフィアールカの情緒をぶち壊していくんですよね。けっこうそっち方面に関してはイイ性格してますよね、ティアナ王女。
ラスにティアナを寝取ってこい、と命じておいていざとなるとティアナの方が堂々とラスを寝取ってやるぞ、と言わんばかりの挑発をしてくるもんだから、フィアールカってば完全に好きな人を盗られかけてグヌヌと悔しがり焦りちょっと負け犬気分にさせられているところとか、なんかポンコツかわいいのよねえｗ
その分別の方面からティアナに圧力掛けて半泣きにさせているあたりは、プレイヤーとして大人げないというべきなのか、女として頑張って対抗しなさいよ、と苦笑しないでもないｗ
ただこれ、お陰で案外とティアナとフィアールカって天秤が取れているというか、攻防のバランスが取れていて対等な関係になってるんですよね。
二人がバチバチと火花散らしながらも、なんだか楽しそうに「友達」という関係に収束していくのはなんだか面白かった。そしてこの友達関係って、公式には二人は皇太子と王女として婚約者となりそのまま将来的には偽装夫婦となる共犯者でもあるわけですけれど、この共犯関係って詰まる所ラスを囲うという意味においての同盟関係でもあるんですよね。
なにしろ、ライバルが多い男である。将来的にこの女同士の偽装夫婦の子供はラスから種貰って作らないといけないわけで、そういう意味でも二人でこの男を確保しておかないといけないんですよね。他に奪われないようにしながら。そんな同盟関係にして共犯関係なフィアールカとティアナが喧嘩しながらも妙に意気投合して本音でもの言い合える親友同士になっていきそうなの、なんとも妙味がありますわー。
特にラスの師匠関係はフィアールカたちの身分とか関係なくラスの事奪い去っていきかねない危険人物ですからね。フィアールカとティアナがしっかりとタッグ組んでおかないとこれ対抗するの難しそうだぞ、というのを巻末の番外編。黒の剣聖フォンとフィアールカを殺されたと思い込み暴走状態で暴れ回っていた昔のラスとの初めての出会い編での、フォンのあの狂気的な執着を見せられてしまうとねえ。
ラスボスって敵対しかけてる帝国の連中じゃなくて、師匠なんじゃないのと思っちゃいますよね。バトル的にもラブコメ的にも。

しかし、フィアールカの側近にして護衛騎士のカナレイカさん。この人、ガチで強かったのか。黒の剣聖関連で無茶苦茶な強化されてしまってるラスを除けば、この女性ほぼ王国最強クラスなのね。コノカナレイカさんの真面目で素直で腹芸が出来ないところ、なんかもう純粋無垢とすら言えそうな捻くれた所とか汚れたところがないポンコツな所けっこう好きなんですよね。フィアールカが色んな意味で捻くれまくって性格悪くて面倒くさいのが、カナレイカがそばにいるせいで余計に浮き彫りになっとるｗ
他にもティアナ王女のメイドさんとかまたぞろ女性キャラ増えてるんだけれど、北侯家のヴァルデマールくんとか、チャラいけどくせ者で有能で使い勝手が良いという色んな意味で濃い男キャラとしてこれからレギュラーに入ってきそうで、何気に存在感強かったんだよなあ。
いや、こういうお兄さん好きなんですよね、キャラ的にも。