【なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 7.禍の使徒】  細音 啓/neco MF文庫J

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真の世界への「本当の戦い」が始まる――ファンタジー超大作、第7弾!

大始祖の陰謀により四種族が封印され、五種族大戦は人類の勝利という予想もしない形で終戦を迎えた。シドから大始祖の企みを聞いていたカイは、ジャンヌと花琳に戦いの継続を直訴するが、人類の平穏という悲願を達成した彼女たちの反応は薄かった。カイは新たなコードホルダーを手に、一人、リンネの復活と仲間たちの解放を目指し、大始祖への抗戦を決意する。その頃、石化していたために墓所への封印を免れた四英雄の一人アルフレイヤをバルムンクが発見したとの報がもたらされ――世界から忘れられた少年の『世界に拒絶された少女』を救う戦いが始まる!


本作もアニメ化決定かー。【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦】も二期制作が決まり、【神は遊戯に飢えている。】の方もと細音さんが今シリーズ展開している作品、一気に全部アニメ化されるんですねえ……どうせなら【黄昏色の詠使い】から全部一通りアニメになってくれませんかね!?
さて、前巻で4種族封印という今まで地上を制圧し人類がほそぼそと抵抗組織を構築して抗うだけだった敵性種族が一掃されるという急展開。ただ、カイとリンネが出会ったのをきっかけにして、ただ戦って倒すだけじゃない。大戦を続けていた他種族と少しずつ理解が進み、お互いに歩み寄りが出来ようかという和解が進みつつあった所での急展開。しかも人類がなにかしたわけじゃなくて、預言神なる存在が一方的にもたらした勝利である。
しかし、これまで他種族の脅威にほそぼそと生存圏の中で生きるばかりだった人類にとって平和は平和。そんな人類を導いて抵抗組織を率いていたジャンヌやファリンにはこの平和を偽りのものとして蹴り飛ばす決断をいきなりは出来ないのも無理はないだろう。それまでずっと、人類の勝利のために戦い続けてきたわけですしね。
たとえリンネやレーレーンといった友人になった子たちも一緒に封印されてしまったのだとしても。
そういう意味ではカイは立場も責任も持たなくて、自身の正義と信念にのみ従えば良いだけの気楽な立場とも言えるんだよなあ。とはいえ、そういう気軽な立場だからこそ、ジャンヌたちを動かせるだけのこのもたらされた平和のいびつさ、これをもたらした者の怪しさと企みを暴こうと動くためのフットワークの軽さを持てたとも言えるのだけれど。
でもカイだけじゃ、どれだけ声高に預言神の怪しさを言い募ってもあまり説得力は生まれなかったかもしれない。カイってわりとおかしい状況をそうとは感じていない人に納得させる説明力みたいなものが足りてないところがあるんですよね。それはシリーズ冒頭の世界輪廻で一人記憶を取り残されたときもそうで、自分にとって自明の理である事が必ずしも他人にとっても当然のことではない、というのはもちろんわかってはいても、そのすり合わせのための論理的な積み重ねを発言に乗せる事があんまり上手くないんですよね。自分にとっての現実を一生懸命言い募ることがどうしてもメインになってしまっている。説得とか弁論が下手くそで考え方や受け止め方が違う相手の意志をなかなか変える影響力が持てない。バルムンク隊長なんか、元々無意識に鏡光を奪われて預言神なんか信じられるか、というカイと同じ心情を抱えていたからすぐに同調してくれたけれど。
だから、アルフレイヤが居てくれたのはかなり大きい出来事だったんじゃないだろうか。種族英雄としてアルフレイヤだけ一人なんか初っ端洗脳された状態で現れるわ、ずっと石像と化したままで放置されていたりと扱いけっこうヒドイなあ、と薄っすらと思っていたんだけれど、まさかここで出番が待っていたとは。
ってか出番どころか最重要人物じゃないですか。この完全に行き詰まった状況を打開する鬼札。そして人物的にも、あの洗脳状態の傲慢で増長していて狂乱狂騒状態だった敵対時のそれとは全然違い、冷静で理性的で全然威圧的じゃなくて穏やかながらも威厳があって、という何この頼もしすぎる人は!?
いやマジで別人じゃん!? そりゃ、レーレーンたちがあのアルフレイヤ相手にパニック状態にもなるわなあ。正直、あの洗脳状態の悪印象は相当に強くこびりついていて今更アルフレイヤが登場してどうなるの? と顰め面になりそうなところだったのだけれど、復活したアルフレイヤの余りにも頼もしくて頼りになって、他の癖のある英雄たちと比べると圧倒的に話が通じて、というか何気にナチュラルに偉そうなレーレーンよりも普通に対等な感じで会話してくれますよね、アルフレイヤさま。そのうえでもうゴリゴリとその叡智で状況を切り開いていってくれるので、思わず自分もアルフレイヤ様ッと呼びたくなる始末。いやだって、マジで頼もしいんですもん。
これはレーレーンたち蛮神族が英雄だ王だと崇める以上に彼のことを慕っていたのもよくわかりますわー。
そして、ある意味カイ以上に積極的に預言神がもたらしたこの平和に対して意義を唱えるバルムンク隊長。シドから真実を伝えられ、預言神の正体が大始祖と呼ばれる存在だと知っているが故にこの平和を不信どころか間違っている、と断言できるカイと違って、バルムンク隊長の方はそこまでの寄って立つ真実の情報もなかったのにね。
その上で、鏡光が入っていたロケットを後生大事に身に着けていたあたりに、この大男の無意識の心情が透けてみえてくるわけで。いやいやいや、バルムンク隊長めっちゃ鏡光のこと好きやん! あんだけ構ってまとわりついてくる鏡光にツンツンしてたくせに、翻弄されて怒ってたくせに、やっぱりまんざらじゃなかったんじゃないっ。このツンデレがっ。
むふふ、こういう厳つい大男のツンデレって実はけっこう好き。
でも、鏡光が封印されている間に、なんかバルムンク隊長ってば妖精にまで気に入られてまとわりつかれ出してるんですが、このピュアライオン丸ってばイタズラっ子系特攻でも持ってるんだろうか。ある意味カイ並みに人外にモテモテの因子持ちなんじゃないか、バルムンク。

さて、肝心の大戦終結をもたらした預言神だけれど、もうあんまり人類側の救世主みたいな仮面を被るつもりもなく、そもそも隠すつもりもあまりなかったのかあっさりと真実を探るカイたちに攻撃を開始。一方でどうやら三体いる大始祖が意思統一されているわけではなく、さらにアスラソルカが暗躍していたことが発覚し。ってか、世界輪廻って大始祖たちの企みじゃなかったのか。
まさにシリーズのターニングポイントと言って良い幾つもの謎と真実が明らかになる巻でありました。
あと、さり気なくいつもカイにベタベタしていたリンネが居ない間に、ジャンヌがこの世界ではないことになっていた幼馴染属性を発揮しだしたぞ。攻め時を間違えないあたりなかなか抜け目のないヒロインであるw