【Dジェネシス ダンジョンが出来て３年 ０８】 之 貫紀／ttl エンターブレイン
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神聖な木を守り 森を支配する偉大な王 VS ダンジョン初心者な研究員!
代々木ダンジョンの21層で不思議なオレンジを手に入れたDパワーズ。
研究者・佐山は、その調査のためにDパワーズに同行を依頼する。
再び訪れた21層で、森の奥にあった特別な木の枝を折ってしまった佐山は、図らずもエリアボスの標的となってしまう!
佐山を助けるべく芳村と三好が考えた方法とは――
今回、つくばの農研機構の研究員である佐山さんが一番可哀想なことになってません！？ あらすじでは彼の依頼みたいになってますけれど、実際は一研究員である彼が上役の命令でダンジョンにも潜るはめになっただけでホントに彼の責任どこにもないですもんね。
それなのに、ダンジョンボスのイベントターゲットにされて死にかけるわ、ダンジョンから持ち出した果実の枝のおかげで「みかんハザード」が起こってしまうわ。
少なくとも命令指示によって佐山さんが行ったことで、彼が責任を感じることはないけれど、下手しなくても日本の柑橘農業が壊滅しかねない事態だったからなあ。よっぽど無責任な人間じゃなかったら知らんぷりなんか出来ませんよね。
これまでもダンジョン攻略そのものよりも、ダンジョンという存在がもたらすものが世界に及ぼす影響により多くスポットを当てて描いてきた本作ですけれど、今回は世界の食料事情にもろに影響を及ぼしそうなダンジョン産の農作物、或いは水産物なんかの話がDパワーズが手掛けていた小麦のリポップ生産のみならず、ダンジョンに生えていた果実の樹木の発見によってさらに掘り下げられ、また斉藤さんがアーチェリー部門で異常な記録を出して急遽五輪選手に選ばれた件が彼女にとどまらず、Dパワーズがプロデュースしたダンジョントレーニング・ブートキャンプによって他のアスリートたちにも数日でえげつないレベルの能力の向上が幾つかの大会で証明されてしまい、またスポーツ部門だけじゃなく音楽などの芸術関係にもダンジョンによって向上した能力（器用さ）などが人外レベルで発揮されてしまう事が徐々に明らかになってきたことによる、スポーツ界や各芸術界隈への津波のような影響が波及しだし、とまあついに徐々に押し寄せてくる津波の水位が上がってきた、って感じなんですよね。
日本の各競技連盟の混乱と、毎度の会議会議で色々と手遅れになっていく様子がまたなんともはや。
ここに限らず、食糧問題に関しても今回起こりかけたみかんハザードに関しても所管が定まっていないせいか日本の組織が動き出しが本当に鈍いのに比べて、やっぱり海外の組織はとにかく動きが早いなあ、という印象が強い。果断さが段違いなんですよね。ネイサン博士はあれは例外、と思いたいけれどこういう変人かつ行動力モンスターが主任研究員とか偉い人やってるあたりが国際機関の怖いところ。
いや、日本だってダンジョン庁のDパワーズ担当って言って良い斎賀課長なんか、もうDパワーズがひっきりなしに放り投げてくる世界がぶっ壊れかねないトラブルの数々に対処するために、果断と行動力の化け物みたいになってますけど。半ば投げやりになってる気もしますけれど、いちいち気にしてたらやってられないもんなあ。
世界の食糧問題にしても、無限に大量に短期に生産できてしまうダンジョンさんの生産物は、世界の食糧事情を解決してくれるかもしれないけれど、同時に食糧生産に関わる生産者や経済を壊滅的に破滅させてしまう。今回、もろに「みかん」という主食ではない、でも身近な嗜好品の側にあるだろう果実の生産がダンジョンより持ち出された枝によって崩壊しかけた一件は、かなり危機感を実感させてくれたんじゃなかろうか。
しかしダンジョンのマイニング、鉱物発掘こそノウハウ公開してそれを再現できる余地が他に出来ましたけれど、ダンジョンでの農産物の生産とかブートキャンプのノウハウはまだDパワーズを介さないと効果が起きない段階でもあるんですよね。強奪やキャンプの模倣による後追いの動きが出はじめていますけれど、まだよほどDパワーズと親しい相手しか彼らの起こす事に再現性がない、というより再現性はあるはずなんだけれどそのノウハウがないと再現できない、という事に殆どの勢力が気づいていないところが余計に混乱と混迷を助長しそうで、しっちゃかめっちゃかになりそうなのほんと面白い。いや、果実の枝みたいにコントロール下にさえなければ効果を起こせてしまう、という可能性も多大にあるのか。それはそれでさらにヤバいよなあ。だからこそ、Dパワーズが持っているダンジョンと観測による現実の固定化という概念のノウハウは要でもあるのでしょう。
そういう意味では、アメリカのサイモンが提案してアメリカ大統領が実行に移した、まずDパワーズの二人と友達になろう、という方法はこの場合大正解なんですよねえ。三好アズサも芳村も親しくさえなっちゃえばガバガバなくらい便宜図ってくれちゃいますもんね。直接足運んで顔合わせて談笑したら、それでガンガン手伝っちゃう。守秘義務で縛ってたとはいえ、佐山さんにもネイサン博士にも親切この上なかったもんなあ。
にしても、ビンテージワインであっさり釣られちゃうアズサはちょっと笑えてしまうくらいチョロいんですが。大丈夫か、こいつｗ
ところでもうアルスルズ、ほとんど隠さなくなってきたなｗ
