【バスタード・ソードマン 2】  ジェームズ・リッチマン/マツセダイチ エンターブレイン

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春だ! 祭りだ! タダ酒だ!

厳しい冬が終わり、春が近づく頃。レゴールの街はにわかに活気づいていた。その理由はもちろん、春の風物詩である『精霊祭』の開催が目前に迫っているから。精霊祭は街中がスライムで飾り付けられ、他の街から観光客や行商人もわんさかやってくる一大イベントだ。レゴールで平穏に暮らすモングレルも精霊祭には毎年欠かさず参加している。なぜなら、街の領主が気前よくタダ酒を振る舞ってくれるのだ! そんなわけでタダ酒とクラゲ料理を楽しみにしていたモングレルはある日ライナから「私も祭り、一緒に回っていースか?」と誘われて――!?



でたー、ついに始まったバスタード・ソードマン名物の猥談バトル!
暇をあかして呑んだくれた男たちが酒場で繰り広げるシモネタ勝負。いやもうバカバカしいことこの上ないし、女性キャラたちはみんな白い目で見ている男たちの本当に本当にくだらない遊びなんだけれど、これが盛り上がるんだわ。
これ面白いのが、情報社会に住まう現代人と違ってネットもないしエッチな本なんてのもまともに流通していない文明レベルの人間にとって、性的な情報って自分の体験かこんな男同士の猥談くらいしかないんですよね。だから、バリバリに上手い生ハムとか新たに発明されたウイスキー、なんて勝者に与えられる賞品が本気にならざるを得ないものだったとしても、男どもが一対一の勝負でどっちがエッチなネタを炸裂させられるか、なんて猥談バトルで持ち出すネタはどこぞの娼婦のサービス情報だったり、或いは中学生かというような……今どきのネット時代の子供なら中学生でもそんな拙いシモネタ持ち出さないか、というくらいの素朴なネタをぶつけ合って、本気で勝負してるんですよね。
バカだなあ、と思うんですけれど、ほんとバカばっかりだなあ、と思うんですけれどいっそ幼稚かと思えるシモネタ勝負猥談バトルはいっそ微笑ましいくらいなんですよ。
そこに、現代情報社会でエッチな情報の氾濫するネットに首までどっぷり浸かった記憶のある男モングレルさんが殴り込むわけですよ。
これが! 現代知識! 無双!!
なんでこんなことでしか現代知識無双しないんだ、モングレルさんw
でも面白いことに、この猥談バトル……モングレルさんに触発されたのか段々と回を重ねるごとに内容のレベルが徐々にあがってくるんですよね。あのチャンピオン・モングレル打倒のために、向上心を発揮して様々なえっちな知識を発掘開発収集しはじめる男ども……あほである。でも楽しいw
そしてこの猥談バトルで一番の存在感を放っているのが、レゴールの街でもトップの一角を成す大手パーティー「収穫の剣」団長のディックバルトさんでありますよ。巌のような峻厳な佇まいで実際真面目で堅物と言っていいくらいの厳格な雰囲気を醸し出す偉丈夫なのですが、その佇まいのまま稼いだ金と暇な時間の殆どを娼館につぎ込んでいるという男の中の漢! あらゆる性的な知識に精通し、あらゆる性癖にも通じている漢の中の漢! この人が猥談バトルの審判役を努めているのですが、その判定はまさに公平にしてどんなネタであっても判断できる知識の豊富さに圧倒されるのです。モングレルの繰り出す現代最新のエロネタにすら、全部精通しているってどれだけエッチなことに詳しいんだこの人はw

殆ど猥談バトルにしか登場しない人ながら、この人レゴール最強の一角なんだよなあw
いやでもほんとこの人面白いw そして気持ち悪いw


さて、作中の季節はギルドマンたちには殆ど大した仕事のない冬の時期からはじまり、農村から飛び出してきた新人ギルドマンや他の街から移ってくる者たちであふれかえる騒がしい春の季節、そしてレゴールの街全体が賑わうお祭りの時期まで、様々な顔を見せる季節の中をモングレルさんが遊んだりちまちま働いたり、料理したり変な発明品作ったり、ぶらぶら街やら森やらを散策したり、ライナたちと遊んだり遊んだり、変な武器とか衝動買いして無駄遣いして金欠になったり、変な道具見つけて衝動買いして金欠になったり、弓や魔法覚えようかと思い立ってすぐに飽きたり、ともう自由気ままに過ごす日々がつらつらと描かれています。
ほんとこれこそがスローライフだよなあ。大冒険とか血で血を洗うバトルなども殆どなく、いや今回に関しては全然なかったか? 強盗に落ちた犯罪者に襲われて返り討ちにしたくらいかしら。魔物も殆ど活動していない冬の時期からはじまったせいで、魔物の討伐なんかもあんまりしてませんでしたし。街の清掃とか氷室づくりとか倉庫から荷物移動させる仕事だったり、肉体労働が大半だったよなあ。でもモングレルさん、そういう仕事いやいやするんじゃなくて、自分から楽しんでやってるんですよね。そりゃそればっかり体酷使して働いていたら体よりも心のほうが疲れちゃいますけれど、モングレルさんの場合は気が向いた時の短期バイトみたいな感じでやってますしねえ。
にしても、犯罪奴隷がやるような仕事も偶には体験しようとやってるあたりもの好きとしか言いようがないのですけれど。スキルの影響もあって体力おばけというのもあるんですけどね。
実際、彼の実力というのは隠しているものも含めて本気になれば最強と言ってもいいんでしょうけれど、この作品彼のそういう実力を発揮させる場面、ほんとないんですよね。モングレルさん流石、みたいなモングレルを持ち上げる展開は無いんだよなあ。でも、モングレルのいいところは強い所じゃなくて、言動がぜんぶ面白いことなのです。普通に毎日ぶらぶらしてるのを見てるだけでももうやたら面白い。意外と交友関係広くて、会う人会う人と駄弁っているのも遊ぶのも酒飲むのも楽しそうなんだよなあ。今回はお祭りなんかもあって、ライナと二人で繰り出すわけですけれどデートみたいな雰囲気にならずに、ひたすら食い倒れ、そして変な出物に首突っ込んで遊んでるという風情で、色っぽい雰囲気には全然ならないんだけれど、それがモングレルとライナらしいというかなんというか。ライナ、けっこうおしゃれしてたんですけどね。この娘もわりと酒豪、というよりもう酒好きモンスターみたいなところがあって、色気より食い気と酒でしたからね。まあ仕方ないんじゃないかと。
ディックバルトさんのみならず、若木の枝という王都に籍を移していた昔なじみのパーティーが戻ってきたり、と新キャラも増えて賑やかさもさらにマシマシ。楽しさもさらにマシマシ、といった感じで、1巻よりもさらにスローライフ味とわいわいとした賑やかさが増えていて、ほんと楽しかった。