【ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います 2 〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜】 諏訪ぺこ/ 海原ゆた TOブックス

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“モブ王女”ルティアが火災事件に裁きを下して数日。三兄妹同じ離宮での共同生活がスタートした。素直になった元“ポンコツ王太子”ライルを巻き込み、畑仕事に精を出す中……ついにポーション作りに成功! これで“悪役令嬢”アリシアに教えてもらった、疫病の流行を止められるはず! と胸をなでおろしていたら、ラステア王国へそれをお披露目に行くよう告げられてしまった。初旅行での思わぬハプニングで、“聖なる乙女”の力を使ってしまい──?「どんな厄災も、私が退けてみせるわ!」小さな王女が異国の運命をも変えていく、本格内政ファンタジー第二弾!



ライル王子、ほんとイイ子になったなあ。まだまだ7歳8歳っていったら子供以前の幼児と言っていいくらいの年齢ですからね。侍女や従僕など身の回りの世話をする一番身近な人間たちが、まともに話を聞いてくれないというある種のネグレクトを受けていたような状態だった、と考えるならライルのわがまま放題な言動も癇癪も寂しさや孤独感から周りの関心を引くためだったのが誰にも掣肘されず、むしろ意図的に助長されていたために余計に悪化していたのですから、環境が変わって愛情をもって接しちゃんと親身になって話を聞いてあげて、いけない事をすれば叱ってくれる人たちに囲まれれば歪みももとに戻る柔らかい時期だったんでしょう。悪いことを悪いと教えてあげれば、自分の言動をちゃんと省みて反省し後悔できるだけの聡明さがある子だったわけですから。

というわけで、離宮にて兄弟一緒に暮らすことになったルティアたち。素直になったライルがまた可愛いんですよ。今まで自分がどうしようもないクソガキだったとちゃんと自覚してるから、シュンとなっている姿が初々しいし、ちゃんと色んなことを教えてもらい、訪ねてもしっかり答えてくれることに目を輝かせ、新しい体験にほんとに子供らしい溌剌とした様子を見せてくれるのが、なんか嬉しくなってきます。
ルティアも結構ちゃんとお姉ちゃんらしく、色んな方面に無知なライルに丁寧に教えてあげてる姿がまた微笑ましくてねえ。
まあやってることの大半が畑仕事、というのは奇妙な話なんですけれど、これが国際情勢も左右する重要な産業の立ち上げに大きな意味を持つとなったら決して子供の土遊びではないんですよねえ。
仕事ほっぽらかして見学にくるロックウェル魔術師団長の方が相当に子供っぽいぞ。これで攻略キャラの一人となる男の子シャンテくんのお母さんなんですから、旦那さんとお子さん大変だわ。ってか、まだ10歳にもなるかならないかのシャンテくんが、お母さんの奇行に溜息付きながら宥めてる姿に普段の家庭での様子も見えてきて、微妙に哀愁が……。でも、逆に言うとそれだけ仲良い家族なんですよねえ。

こうしてみると、1巻でライルの置かれた環境を叩き潰したことで彼と実母のリージュ王妃とのすれ違いも解消されて、何気に主だった登場人物の子供達の家庭環境ってみんな何だかんだと良好なことに気付かされるんですよね。みんな親子仲、色々と言葉足らずなどで行き違ってるケースもありましたけれどお互い愛情たっぷりの関係だったんですよ。
その上で親世代を見ると、魔術師団長に宰相に騎士団長、司法長官か。国の政権中枢を担っている面々であると同時に彼らってリージュ王妃含めて同世代の幼馴染同士、親友同士で同志でもあり非常に絆が堅い関係だったんですよね。
1巻の段階ではルティア視点からだとそういうのまだ見えてきていなかったのですけれど、明らかになってくるとこの親世代って学園ファンタジーで一本書けるような濃い青春時代送ってたんじゃないかな、と思えるくらいの仲の良さなんですよね。
でも一方で、そんな強固な関係の人間たちが政権中枢を担っているにも関わらず、国政の実権を握りきれているか怪しい状態なわけですよ。既にストーリーはじまった段階で、リージュ王妃と結婚するはずだった現国王、ルティアとロイのパパの兄が不慮の死を遂げ、リージュを支えて国全体を動かすほどのパワフルさを発揮していたルティアたちの母まで謎の病で急逝してしまう。
国の屋台骨であり人間関係の柱ともなろう人物が二人、的確に謀殺されてしまってたんですね。お陰で物語スタート時点で親世代の結束は揺るがないものの、子供達まで目が届かない事で内情はかなりガタガタになってしまってた。
挙げ句に、国王陛下の暗殺事件ですからね。あの一件で本来なら国王に側妃のマリアベルとそのお腹にいた赤ん坊。そしてリーンくんの父である騎士団長が亡くなっていたわけで、まさに彼らの死はこれまで辛うじて拮抗していた派閥争いを瓦解させていた致命的な一件だったんじゃないでしょうか。
それが、この世界のシナリオを前世の記憶として持っていた悪役令嬢のアリシアのもたらしてくれた情報によって、ルティアが身をもって防いだことで死ぬ運命だった人たちが救われると同時に、明らかに背後で国の要となる人物を謀殺する動きがあることが決定的になり、これまで不慮の死とされてきた人たちの死も疑念で留まっていたのが確信となり、はっきりとフィルタード侯爵家が敵と見えてきたことで対抗する動きもしやすくなったんですよね。
その御蔭で、子供達との意思疎通を阻害していた敵陣営の影響力を排除して子供らを手元に戻すことが出来た。ロイ兄さんのあの叡智も、目標が定まったことで高速回転しだしてますし。
全部、いい方に回りだしたことを考えると、ほんとあの暗殺事件を防いだ一件は一番大きかったんでしょうなあ。
そして、その原動力となったのがルティアのあのほとばしるような行動力である。亡くなった、或いは毒殺されたというルティアとロイの母であるカロティナ妃って、もうルティアそっくりだったみたいで。いや話聞いている限り、まだルティアの方が大人しいというか常識的と言うか。活発を通り越して野生児というか活力の塊みたいな人だったみたいなんですよね。まさに、太陽みたいな人だったんだろうなあ。それだけに、その太陽が落ちたことがどれほど彼女に魅せられていた人にとってダメージだったのか。だからこそ、そんなカロティナそっくりのルティアの輝きは、同世代の子供達だけじゃなくて親世代の大人たちにも元気をもたらしてくれたんでしょうね。
しかし、同時にルティアが密かに発言させていた聖属性の力はあまりに大きな威力の爆弾でありすぎたわけだ。使い方によっては必殺の切り札にもなり得るし、逆に利用されることでルティアの身までどうなるかわからない代物なんですよね。パパ王がロイ兄様にすら伏せているあたり、本当に慎重に吟味していることが伝わってきます。まあ、ロイ兄様はその自分にすら伏せているルティアの秘密がある、と知った時点である程度想定しているみたいですけれど。
そして、ルティアもまたただ言われるがままその力を、聖女としての力を隠しているわけがなく。無分別に使ってしまうんじゃなくて、父親との約束の内容を考慮した上で同行していたカーバニル先生にちゃんと意見聞いて使用しているあたり、考え無しじゃなくてその年齢でとても聡明であり、情深いよなあと感心するばかりでありましたけれど。ちゃっかり、自分たちの勢力の味方を増やすのに利用しているあたり、このオネエ先生やり手ですよねえ。重たい役職担ってるために簡単に動けない他の大人たちの代わりに現場出回るフットワークの軽さと、政治的な判断やルティアの助言者としてだけじゃなく、あれこれと仕掛けたりしてるのを見ると、かなり重要な人物なんじゃないだろうか、この人。

さて、幼いながらも王女として外遊で訪れることになったはじめての外国で、ルティアは様々な出会いを経験するのだけれど……あれ? これまでルティアのお相手らしい人そう言えばいなかったけれど、この陽気な外国の王族のお兄ちゃんが相手役なのかもしかして!? この女王弟であるコンラッドさま、もうちゃんとした大人なんだけれど……おい、こっちの方はルティアにガチなのか!? 年の差! 年の差! 事案ですよ!?

今回、肝心の悪役令嬢なアリシアの出番があんまりなかったけれど、この娘の今の宙ぶらりんな立場はどうなるんだろう。今のところ、ライルの婚約者という線は白紙になったけれどライルがあれだけイイ子になると将来わからないですもんね。一方でロイ兄様というルートもあり得るわけで。ただ、現状ではまだ全然どっちもそんな雰囲気になる感じはないんだよなあ。