【悪役令嬢に転生した私と悪役王子に転生した俺】 秋作/やこたこす ドラゴンノベルス

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悪役に転生した「私」と「俺」、バッドエンド回避のために婚約します!?

小説の悪役令嬢と悪役王子に転生してしまった「私(クラリス)」と「俺(エディアルド)」。
原作の二人は、主役の勇者と聖女に嫉妬し、闇堕ちする運命だった!
破滅を回避し、ラスボスに対抗するため、原作とは違う道を歩み始めた二人。
お互いに転生者とは知らずに婚約し、やがて心通わせるようになり……
「私(俺)はこの人を悪役王子(令嬢)になんかさせない!」
恋に落ちた二人の運命の輪は捻じれて回り出す――!


原作の物語の悪役二人が、二人共転生者であり、しかもお互いの正体に気づいていないまま惹かれ合っていく、という展開は意外と見ない設定で面白いですね。
一応、二人が現代で不慮の事故で亡くなるまでもちょろっと描かれているのですけれど、二人とも社会人だったんですね。しかも、女性の方は付き合っていた結婚間際の彼氏に浮気されて三下り半つきつけて別れた直後に事故で亡くなってしまうという、転生してなかったら悲惨以外のなにものでもない結末である。
それはそれとして、この付き合っていた彼氏が相当のダメンズなんですが、この女性もうお母さんかというくらい手取り足取りお世話していたみたいで、家のことプライベートの事のみならず仕事まで企画書とか作ってあげたりと手伝ってたみたいなんですよね。いや、男の方もヒドイけれどそこまでお世話しちゃう女性の方もこれダメンズウォーカーなんじゃないの? 何気にダメ男にハマってしまうタイプなんじゃないの? 転生してもこれだとむしろダメ王子とかそっちに惹かれてしまうんじゃないの、自分が面倒見てあげないととかなっちゃんんじゃないの大丈夫?と心配になってたんですが、さすがに元彼のときが特殊だったのかさすがに懲りたのか、その手の男にふらふら意識を向けてしまう事もなく安心しました。
お相手となるエディアルド王子の中の人は相当にしっかりキッチリした男性なので、ダメンズとは真逆だっただけに、ね。
物語では悪堕ちしてしまい、魔族の側について主人公サイドと戦うことになる悪役令嬢クラリスと悪役王子のエディアルドですけれど、こうして転生者二人が中の人になって自分たちの置かれた状況を鑑みると……いやこれ、めちゃめちゃ不遇な扱い受けてるんですよね。仮にも大貴族の継嗣と第一王子ですよ? にも関わらず、クラリスの方は継母と義妹と実父にイビられてシンデレラ並みかそれ以上に虐げられている状態。エディアルドも第二王子の母の策略によりマトモな教育を受けさせて貰えず使用人も第二王子派閥の者ばかりで普段の生活から放置状態。
こりゃ、幼い頃からこんな劣悪な生活環境の中で育ったら、二人とも性根歪んでしまいますわ。
そんな二人の中に入った中の人がそれぞれなんでも自分で出来る自立した大人だったおかげで、両者とも自力で自分の置かれている環境を改善していくんですね。もっとも、単にネグレクトされているのではなく露骨に虐げマトモになる事を邪魔してくる悪意ある人達がいるわけですから、大人であり権力者でもある彼らと敵対しないといけないわけで、孤立無援の子供だったらこれちょっとどころじゃなくキツいよなあ。
しかしクラリスはとっとと実家に見切りをつけて魔術の才を利用して、家の外に亡き母の親友を頼って居場所を作り、学校に進学した際には家を出て寮に入ることで実家の人間と距離を置き。
またエディアルドの方は第二妃に良いように利用されている頭お花畑な実母の王妃を自身も利用して、第一王子という権力もうまく使って自分の周囲の邪魔な人間をキレイに掃除した上で、本当に信頼できる心許せる味方を見出し、着々と自分の立場を確立していく。
かくの如く、クラリスもエディアルドも各々自分で自分の置かれた環境を改善していってるんですよね。誰かに救われたり助けて貰ったりするのを待つのではなく。
これは両者が転生者で、中身が普通よりも相当にしっかりした大人だから、というのが大きいんだろうなあ。
でも、それぞれ勝手に自立していってるからと言って両者に縁がないわけではなく、むしろ自分は何もしていないし何も関わっていないのに、原作と全然違う立派な生き方を示している相手に、なんか原作で描かれている様子と全然違うんですけど、と面食らいながらもそんな相手の颯爽とした姿にガンガン惹かれていくのである。貴族と王族という立場での婚約者同士、という関係だけではなく、クラリスが普段薬学を学んでいるヴィネという女性の家で一緒に過ごしたり、と立場関係ないプライベートで過ごす時間も増えましたしねえ。
二人とも努力家であり、周囲に対しても自分に対しても公平で誠実であり続けることで、元々彼らにまとわりついていた悪評も徐々に払拭し、好感を勝ち取っていく様子もまたこう頑張っている姿を見せてもらっているからこそ、シンプルに嬉しくなりますねえ。
面白いのが本作って、けっこうサブキャラ同士のカップルも多いんですよ。どうも主人公サイドと敵対する側の人間たちがどいつもこいつも度が過ぎたアホばっかりなんですけれど、余計にそれでこいつらどうかしてるぞ、とマトモな常識を持った人たちはそういった自己中心的なキャラたちを避けて主人公サイドと距離感縮めてきてくれるんですけれど、丁度クラリスの方には女性キャラが…エディアルドの方には男性キャラが、と集まってくるのですが本来のゲームだとヒロインの女の子に惹かれて悲恋を歩んだり、また攻略キャラじゃないばかりに詳しく描かれなかったり、といった人たちが新たな恋とであったり、幼馴染同士で意識し合ったり、とカップルがじゃがぽこと誕生しだすんですよね。
主人公カップルのみならず、サブキャラ同士のカップルとかたくさん出来るの好きな人はなかなか美味しいですよ、これ。あっちこっちで甘酸っぱい空気が立ち込めてて、たまらん!