【ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。】  ミサキナギ/米白粕 電撃文庫

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目が覚めたら、ツンデレ聖女の杖だった!? 俺、異世界転生で大勝利!!

世界一のツンデレ愛好家を自負する俺は、気がつけば異世界の暗い森に埋まっていた。助けてくれた銀髪ツリ目美少女にお礼を言うと――
「べ、別に、あんたのために助けたわけじゃないわ!」
これは……ツンデレ構文! っていうか、俺の身体が杖になってる!? 至高のツンデレぶりを見せる彼女・ステラは聖女学園の生徒で、この聖法の杖(俺)の持ち主らしい。もう一生推すしかない!
まずは人間に戻らなきゃ、と、この異世界を司る女神様のもとを訪ねたんだが――邪悪な魔女ステラを殺すのです――願いを叶えるためには推しを殺せって……?? 素直になれない“推し”か、異世界の平和か。そんなの答えは決まってるだろ?
ツンデレ少女とその杖(俺)の出会いが異世界の命運を左右する、禁断の学園ファンタジー開幕!


これはまた、もう古典と言っていいぐらい原点原初に近いツンデレヒロインなんじゃないだろうか。
それも毅然と強気でいるのとは違って、本心とは裏腹の憎まれ口や罵倒を投げつけてしまいあとでうじうじと後悔してしまう、実はメンタル弱々系ツンデレ。
照れたり恥ずかしがってもついついキツい言葉を吐いてしまうという典型的ツンデレ。
とはいえ、そういうツンデレな娘にツンデレツンデレと言いつのって勝手にその心情や無意識の心の動きを声高に指摘するのは、かなりデリカシーに欠けると思うんですけど!?
こういう頑なにツンツンしている娘はヘタに近づこうとしても拒絶が強いので、なかなか傍に寄れないんだけれど、そういう場合は強制的あるいは必要性がどうしようもなく高い状態で一緒に居ないといけない状態であるほうがいいんですよね。【ゼロの使い魔】でルイズがサイトを使い魔として召喚してしまい、とにかくずっと一緒に居なくてはならなくなったように。
今回の場合は、主人公が転生して杖となってしまったことで、聖法と呼ばれる力を使えないヒロイン・ステラにとって唯一力を発動できる主人公の杖は離し難いものになってしまったんですね。正直、かなり変態入ってる上に思ってること全部ぶちまけるこの主人公は人間だったら速攻ボコられて追放されてたんじゃないだろうか。まあ物語の展開上どういうケースでも主人公がヒロインから引き離されて物語終了、とはならないんだけれどもw

まあこの杖、前世の人間時代から相当に変態だったか変人だったか、ツンデレ属性の極みだったらしく、ツンデレ好き好き大好きを広言して憚らず、典型的ツンデレであるステラにも出会って早々発狂せんばかりにテンションあがって、ステラのためなら杖になろうと全力で推していくぜ、と鼻息荒く荒ぶっていらっしゃるのですけれど、こいつがなかなかどうして。自分の属性に対して真摯でもあるんですよね。人間に戻りたい、何より元の世界に戻りたいという当然の思いを抱きながらも、最優先スべきはツンデレ・ステラであると決め込んでこれがブレない。
ステラがツンデレらしいツンデレであるという好みどストライク云々である以上に、その表層としての属性だけを見ずに彼女のツンデレを形成している優しさ、健気さ、意地っ張りな所。そして弱い心と儚さ、彼女が背負った運命などを目の当たりにしていくことで、ツンデレだからじゃなくてステラだからこの娘を守り助けたい、とちゃんとこの娘個人を見て、自分の存在を賭けていくわけですよ。
推しを推すことに報いを求めない、ツンデレオタクとしての矜持がまた男前なんですわ。

そんな彼に対して、ステラは魔女だからお前が殺せ。ステラを殺したら自分が元の身体に戻してあげる、と取引を持ちかける女神がまたなんか卑しいんですよ、やり方といい素振りといい。胡散臭いという以上にどこか品性が卑しい。
これまで聖女を育てる学校に通いながらも、聖女として必要な聖法を使えず、精霊に嫌われてしまうことから周囲から拒絶され否定され続けていたステラ。まあこれ、性格的な問題もあるんでしょうけれど。ともあれ、これまでずっと周りから孤立して否定サれ続けていたステラにとって、多少変態であってもとにかくステラのことを全肯定してくれる。ちゃんと自分のことを見て、自分の努力をわかってくれて、自分の苦しみに共感してくれて、その上で好きだと言ってくれる、自分自身のことを後回しにしても自分を助けてくれようとしてくれる「杖」の存在はこの上ない救いだったのでしょう。
着実にデレるステラのこれはチョロさと言ってしまうのは少々野暮ってもんでしょう。
それに、苦しむ自分を後回しにして自分を異世界の人間だと主張する「杖」をもとに戻してあげようとしたり、杖以外でも自分より他人を優先しようとしたり、と優しいイイ娘なのは間違いないんですよね。敬虔な女神の信徒でもあり、自分が本当は世界の敵とされる魔女である事を知らず、女神が自分を殺そうとしている事も知らないまま、自分の不遇を呪わず無能を恨まず自分にだけ力を貸してくれない精霊を憎まず、真摯に女神に祈りを捧げるこのヒロイン、もうなんかツンデレ属性以上に薄幸属性マシマシに乗っけてんじゃないかって感じなんですよねえ。
なので、イケイケドンドンの「杖」ががっつりとこの子の味方をして、誘惑を囁いてくる女神を痛快なほど袖にして啖呵きるシーンは気持ちのよいものでした。

しかし、精霊から嫌われている魔女、と言われながら「杖」がツンデレの良さを伝えて味方してあげて、と呼びかけるとひょいひょい力貸してくれるあたり、単純にステラが精霊に嫌われてるというのとは少し違う気がするんだよなあ。まだまだ女神についても世界についても明かされてない秘密がありそう。