【これが魔法使いの切り札 １.黎明の剣士】 羊太郎／三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫
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強さじゃない。“楽しく生きる”ために魔法使いになるんだ
剣士リクスは戦い以外の人生を求め魔法学園へ入学するも、魔術師の適正皆無と判定される。それでもリクスは持ち前の戦闘能力ゴリ押しで学園生活をこなし、新たな生き方を掴むべく自分なりの“魔法”に挑んでいき?
代表作である【ロクでなし魔術講師と禁忌教典】の完結と同時に新たに始まった新シリーズ。絵師も同じ三嶋くろねさんを起用して、という所に本作に対しての本気度を感じる。
最初から長期シリーズを見込んだ上での第一巻というのは、それだけ掴みが大事でもあるんですよね。舞台となる世界にその上で踊る役者といえるキャラクターたち。大まかな世界観、歴史や社会情勢、魔法や学校など様々な設定を詳らかにしていかなくてはならない。説明ばかりになってしまうと物語の動きが固まってしまうので、メインの登場人物たちを溌剌と動かしながらも彼らの魅力を引き出し惹きつけていかなくてはならない。
どうしても登場人物や世界観の紹介でしたね、で収まってしまう第一巻ってのは少なくないんですよ。
これを十全こなれた形で仕上げてみせるのが、辣腕の作家の腕の見せ所。そういう意味で羊先生はさすがとしか言いようがない。しかもロクでなしと同じ魔法学園モノというカテゴリーにも関わらず、明確に読み味変えて来てるんですよね。物語の立脚点をかなり違う位置に据えてるんだろうなあ。
特徴的なのがやはり主人公であるリクスとメインヒロインであるだろうシノの二人でしょう。二人して学園に特別に招聘された奨学生という時点で他の生徒とは違う特別性を有しているのですけれど、それは能力もそうなんだけれど、それ以上に精神性や抱えているものが最初から普通の生徒とは違うんですよね。
切実なまでの希うものがある。
そして、それは普通の学園生活でしか得られないものだ。この魔法学園を普通と言えるのかは定かではないけれど。でも、まだ入学した段階では魔法を使えていない生徒も多く入学させているところを見ても、決して特殊なエリートだけを集めた学校じゃないんですよね。
前作のグレン先生が挫折した大人だったのと比べると、この主人公のリクスはまだ子供だ。何も手に入れていない、というには既に強大な力を有しているけれど、彼にとってその力は武器ではあるけれど夢でも希望でもなく、むしろ自分を望まぬ在り方に規定するものでもある。まあ嫌悪とか拒絶していなくて自分の力としてちゃんと割り切って使っているのは、彼の虚無性から来るのかそれとも使えるものは何でも使うという元傭兵らしい割り切りから来るのか。
しかし、冒頭でとっととリスクが逃げ出していた傭兵団、腰掛けなのかと思ったらリスクって団長には随分と恩があるんじゃないですか、あれ。言ってしまえば人間にして貰った、と言っていいくらいの。
まあそのあと、随分と扱き使ったみたいだから、変に自意識持たせてしまったから待遇に不満を覚える自意識まで持ってしまって逃げられた、ということなのか。自業自得？
とはいえこれ、決して軽い関係ではないと思われるので後々重要な役割で登場してきそうだなあ。次回早速傭兵団絡みのキャラが登場してくるみたいだし。
ともあれ、人間のふりをしてみろ、と言われたみたいだけれど振りでリスクもここまで人間らしく出来ないよねえ。演じているわけじゃなくて、ちゃんと感情が乗っている。人形が願いを抱くものかよ。人間になりたいと思った時点でそれはもう人形じゃないんですよ。どうもリスク自身は人間によって作り出された兵器としての自分。意志を持たない人形としての自分こそが本体であると思っているみたいだけれど、シノがすでに解析しているようにリスクが全力を振るう状態というのは異常をきたした状態であって、スフィアの使い方を学べば解消され事前に入力した命令ではなく自分の意志で振るえるようになる路線は既に見出されてるんですよね。あとは、彼がどうやってそれを実感し、自分を人間として完成させていくか。それには多分に他人の存在が、友人や仲間、恋人、大事な人といった人たちが必要になってくるだろうから、これは周りのサブキャラクターたちもどんどん重要性を増してきますよ。
その筆頭となるだろうメインヒロインのシノは、これはこれで物語の根幹を担う存在であり、現状の大きな敵組織と思われる「祈祷派」に狙われている、というわかりやすくヒロインしている存在であると同時に、かつて強大な悪であった存在であり、罪悪感に苛まれ自分の存在を否定したくてたまらないと同時に魔法を愛し今世では普通の幸せを掴みたいという相反する軋む心を抱えている、まあ難しい女の子だ。
これ、本作は「ロクでなし」とはだいぶ読み味違う作品になっているとは申しましたけれど、キャラに注目してみるとシノはグレン先生に。リクスはリィエルといろいろと重なる部分があるんですよね。もちろん、個々を比べてみると全然違うんですけれど、コンセプトとしては似たものがありつつアプローチの方向性が違う、というべきか。
まだまだスタート地点に立ったばかり。これからどういうキャラクターとして描かれていくのか興味が募るばかりです。
これ、彼らにとって自分の願いにしがみつこうと思える執心の対象ともなった友人たち、ランディにアニー、セレフィナの三人も現状ではまだ良い友人ではあってもそれぞれどういう背景を、心境を抱えているのか描写されていませんけれど、ガンガン深掘りされて味のあるキャラクターになっていきそうだなあ。
ともあれ、最初の掴みはOK。面白かったー、続き読みたい！ と前のめりで宣えるスタート回でありました。
最初から長期シリーズを見込んだ上での第一巻というのは、それだけ掴みが大事でもあるんですよね。舞台となる世界にその上で踊る役者といえるキャラクターたち。大まかな世界観、歴史や社会情勢、魔法や学校など様々な設定を詳らかにしていかなくてはならない。説明ばかりになってしまうと物語の動きが固まってしまうので、メインの登場人物たちを溌剌と動かしながらも彼らの魅力を引き出し惹きつけていかなくてはならない。
どうしても登場人物や世界観の紹介でしたね、で収まってしまう第一巻ってのは少なくないんですよ。
これを十全こなれた形で仕上げてみせるのが、辣腕の作家の腕の見せ所。そういう意味で羊先生はさすがとしか言いようがない。しかもロクでなしと同じ魔法学園モノというカテゴリーにも関わらず、明確に読み味変えて来てるんですよね。物語の立脚点をかなり違う位置に据えてるんだろうなあ。
特徴的なのがやはり主人公であるリクスとメインヒロインであるだろうシノの二人でしょう。二人して学園に特別に招聘された奨学生という時点で他の生徒とは違う特別性を有しているのですけれど、それは能力もそうなんだけれど、それ以上に精神性や抱えているものが最初から普通の生徒とは違うんですよね。
切実なまでの希うものがある。
そして、それは普通の学園生活でしか得られないものだ。この魔法学園を普通と言えるのかは定かではないけれど。でも、まだ入学した段階では魔法を使えていない生徒も多く入学させているところを見ても、決して特殊なエリートだけを集めた学校じゃないんですよね。
前作のグレン先生が挫折した大人だったのと比べると、この主人公のリクスはまだ子供だ。何も手に入れていない、というには既に強大な力を有しているけれど、彼にとってその力は武器ではあるけれど夢でも希望でもなく、むしろ自分を望まぬ在り方に規定するものでもある。まあ嫌悪とか拒絶していなくて自分の力としてちゃんと割り切って使っているのは、彼の虚無性から来るのかそれとも使えるものは何でも使うという元傭兵らしい割り切りから来るのか。
しかし、冒頭でとっととリスクが逃げ出していた傭兵団、腰掛けなのかと思ったらリスクって団長には随分と恩があるんじゃないですか、あれ。言ってしまえば人間にして貰った、と言っていいくらいの。
まあそのあと、随分と扱き使ったみたいだから、変に自意識持たせてしまったから待遇に不満を覚える自意識まで持ってしまって逃げられた、ということなのか。自業自得？
とはいえこれ、決して軽い関係ではないと思われるので後々重要な役割で登場してきそうだなあ。次回早速傭兵団絡みのキャラが登場してくるみたいだし。
ともあれ、人間のふりをしてみろ、と言われたみたいだけれど振りでリスクもここまで人間らしく出来ないよねえ。演じているわけじゃなくて、ちゃんと感情が乗っている。人形が願いを抱くものかよ。人間になりたいと思った時点でそれはもう人形じゃないんですよ。どうもリスク自身は人間によって作り出された兵器としての自分。意志を持たない人形としての自分こそが本体であると思っているみたいだけれど、シノがすでに解析しているようにリスクが全力を振るう状態というのは異常をきたした状態であって、スフィアの使い方を学べば解消され事前に入力した命令ではなく自分の意志で振るえるようになる路線は既に見出されてるんですよね。あとは、彼がどうやってそれを実感し、自分を人間として完成させていくか。それには多分に他人の存在が、友人や仲間、恋人、大事な人といった人たちが必要になってくるだろうから、これは周りのサブキャラクターたちもどんどん重要性を増してきますよ。
その筆頭となるだろうメインヒロインのシノは、これはこれで物語の根幹を担う存在であり、現状の大きな敵組織と思われる「祈祷派」に狙われている、というわかりやすくヒロインしている存在であると同時に、かつて強大な悪であった存在であり、罪悪感に苛まれ自分の存在を否定したくてたまらないと同時に魔法を愛し今世では普通の幸せを掴みたいという相反する軋む心を抱えている、まあ難しい女の子だ。
これ、本作は「ロクでなし」とはだいぶ読み味違う作品になっているとは申しましたけれど、キャラに注目してみるとシノはグレン先生に。リクスはリィエルといろいろと重なる部分があるんですよね。もちろん、個々を比べてみると全然違うんですけれど、コンセプトとしては似たものがありつつアプローチの方向性が違う、というべきか。
まだまだスタート地点に立ったばかり。これからどういうキャラクターとして描かれていくのか興味が募るばかりです。
これ、彼らにとって自分の願いにしがみつこうと思える執心の対象ともなった友人たち、ランディにアニー、セレフィナの三人も現状ではまだ良い友人ではあってもそれぞれどういう背景を、心境を抱えているのか描写されていませんけれど、ガンガン深掘りされて味のあるキャラクターになっていきそうだなあ。
ともあれ、最初の掴みはOK。面白かったー、続き読みたい！ と前のめりで宣えるスタート回でありました。
しました
二人とも大きなものを抱えてましたね
人形が人の真似事してると自認してるリクス、大きな罪を抱えたシノ。二人が心の奥底から、本当に自分の人生を肯定して笑える時がきたらいいなあと思います
あと、傭兵団の掟が某国民的人気漫画の頂点の一人のビッグBBAの流儀かよと思いました
最後に出た『彼女』が、追い返されるのか逆に学園へと引き摺り込まれるのかすごく気になるところです
八岐
が
しました